見出し画像

先生、テニスがしたいです

私はテニスというスポーツが好きだ。

狙い通りの場所にボールを打てた時の気持ちよさ、パコンという心地よい打音。サービスやスマッシュが決まった時のかっこよさ。何よりテニスという言葉から連想される爽やかなイメージ。
日頃スポーツ観戦をしない私もテニスの試合なら観ていられる。

趣味はなんですか?と聞かれた時に「週末に家族や友人とテニスを楽しんでいます」と答えれば、それだけで信頼され好感を持たれて、友達も増えそうではないか。
テニスをすれば今の私に足りないものがすべて手に入る。


今はテニスをしていない。
しかしテニスとは知らない仲ではない。いやむしろ強い絆で結ばれていると言っても良いと思う。

30年以上前の話になるが、私が小学生の時に両親が毎週末のように友人とテニスをしていた時期があり、その隣のコートでちょっとしたテニスレッスンを受けさせてもらったのがテニスとの出会いだった。

コーチはアメリカ人のマイケル先生。錦織圭のコーチを務めたこともある元プロテニスプレイヤーのマイケル・チャンと同じ名前だ。
これが小説ならこの出会いによって幼少からテニスボールと友だちになり、メキメキと頭角を現して後々プロテニスプレイヤーになりそうな流れである。

このレッスンは数年後に父の仕事の都合で引っ越すまで続いた。
思えばこの頃が一番テニスを楽しめていた時期だった気がする。


次にテニスと再会したのはおよそ5年後、中学校のテニス部だった。
またテニスができると喜び勇んですぐに入部した。
部員は全部で30人くらい。そのほとんどが中学で初めてラケットを握った者たちである。マイケル先生に鍛えられた私とは勝負になるまい。

そんな自信を密かに満々にしながら臨んだのだけど…すぐに打ち砕かれた。

そもそもラケットがまともに振れないのでボールに当たらない。ラケットってこんなに重たかったっけ?マイケル先生に習っていた時はもっとこう自分の手足のように扱えていたはず。テニスをやめてファミコンに夢中になっているうちに筋力が衰えてしまったようだ。

これではまわりの初心者1年生と何ら変わらない。いやむしろ彼らの方がボールをちゃんと返せている。俺はテニス経験者だ、とか偉そうに口に出してなくて良かった。

その後中学卒業まで3年間続けたが、ほとんど上達しなかった。3年の時に1年生が打った球を打ち返そうとしたら自分のラケットの方が弾き飛ばされた、と聞けばどれくらい下手だったかが伝わるだろうか。
我ながらそんな実力でよく続けられたな、と思う。

高校になってからはテニスを離れて別の部活に入った。中学3年間でテニス欲が満たされた…と言うよりは高校のテニス部の練習がかなり厳しいと聞いてビビったというのが本当のところである。

結局テニスラケットを握ったのは中学のテニス部が最後だった。


出だしのマイケル先生との出会いは良かったのだけど、後半は「お前本当にテニスが好きなのか?」と疑われるような内容になってしまった。私もかれこれ30年間1回もテニスをしていないことを改めて突きつけられ、好きと言ってよいのかちょっと分からなくなってきた。

もしテニスを続けていれば腕前も上達し、週末は仲間たちとテニスで汗を流す爽やかな時間を過ごし、ぽっこりお腹にもならず、シュッとしたイケオジになれていたにちがいない。高校の時にラケットを置いてしまったことが今になって悔やまれる。


それはさておき、30年の時を経て再び「テニスがしたい」という気持ちがが湧いてきたのだ。この気持ちを大事にしたい。

テニスをするにはいくつか準備すべきものがある。
ラケットやボールはまあレンタルなり購入なりすれば良い。
テニスコートも近所にいくつかあるのを確認済みである。

難しいのが一緒にプレイしてくれる仲間だ。そう、テニスは一人ではプレイできない。少なくともあと1人は必要で、できれば3人くらい集めて4人で交代しながらプレイしたりダブルスしたりしたい。

そういえば我が家はちょうど4人家族だった。

マイケル先生が私に教えてくれたように妻と娘たちにラケットの持ち方やテニスのルールを教えよう。3人とも最初はラケットをボールに当てるのも一苦労だったのが、だんだん上達していく。みんなテニスに夢中になり、娘の友達やその両親も加わってちょっとしたテニスサークルのようになる。週末はみんなでテニスを楽しむのが恒例になるのだ。わあ楽しそう!

そんな妄想を胸に夕食の席で妻娘を誘ってみたら、秒で「興味ない」と断られた。カケラも興味が湧かなかったらしい。

家族がダメなら友達…はいないのでこの時点で私の既存の人間関係は使えないということが分かった。つまり新しい人間関係を作らなければならないということだ。わあ難しそう!


自らテニスサークルを作るのが難しければ、既にあるテニスサークルに加えてもらうしかない。

サークルをどうやって探して参加するものなのか分かっていないのだが、その辺のテニスコートでプレイしている方々に「あの、私もまぜてもらえませんか?」と声を掛けるのだろうか。難易度高いな!

テニスサークルはそれぞれ同じようなレベルの人が集まって活動しているものらしい。そのサークルに合うレベルかどうか入会テストのようなものがあるかもしれない。

「こいつがこのサークルの最弱プレイヤーだ。こいつを倒せば入会を許してやろう。ただし負けた方は追放だ。」

「そ、それはひどいですよ部長…。くそ、お前が来たせいで!ぶちのめしてやる!」

なんて展開になったらボコボコにされて負けそうだし、勝てたら勝てたでそんないつ追放されるか分からないガチサークルでやっていける自信がない。

サークルの平均年齢層も考慮が必要だ。
20代が中心のサークルに40代の最弱おじさんが加わるだなんて…いやそれはそれで新たな扉が開けそうな気がしなくもないがテニスを純粋に楽しめなさそうなのでやめた方がよいだろう。
程々に近い年齢、近い実力の人たちがいるサークルを見つけなくてはならない。


ちょうどよいテニスサークルを見つけるのはなかなか大変そうだ。
それに考えてみたら、たとえサークルに入れたとしても私自身が下手すぎたら試合にならず、楽しめないのではないだろうか。私のテニスレベルは中学の1年生にラケットを弾き飛ばされるレベルから変わっていない、いやさらに弱くなっているはずだ。小学生にも勝てない自信がある。

そう考えるとまずはテニススクールに通うべきなのではないか。
スクールに通って実力を高めつつ同じクラスの人とお友達になり、スクール外でもテニスができる関係になれば将来的にサークル化も期待できる。
テニススクールなら入会テストでボコボコにされることもない。代わりに入会金を払うだけだ。

というわけでまずは近所のテニススクールの体験教室に行ってみようと思う。うまくいけば来年の今ぐらいには「週末に家族や友人とテニスを楽しんでいます」と答えられるようになっているはずだ。
楽しみである。



この記事が参加している募集

私のスポーツ遍歴

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?