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台湾のCOVID対策から学ぶデジタル・ソーシャルイノベーション(オードリー・タンさんの動画翻訳)

今、世界を震撼させているCOVID-19。中でも、台湾は早期に対策を取ったことからウィルスの感染を抑えられており注目が集まっています。

そんな中、台湾政府のデジタル大使、オードリー・タン(唐鳳)さんが台湾の取ってきたCOVID対策を5分で説明した動画がとっても勉強になったので翻訳します。

英語のわかる方はこちらの動画をそのままどうぞ。

Fast. スピーディに、誰もが参加できるソーシャルイノベーション

台湾では、誰もが社会の役に立つために参加できるソーシャルイノベーションが、集団的知性を用いた対策システムの基盤となっています。しかも、これがかなりのスピードで進みます。

各国がコロナウィルス対策を今年に入ってから始めたのに対し、台湾は去年から始めていました。李文亮医師が新型コロナウィルスのケースが多数出ていると内部告発したのが昨年12月。李医師が中国警察から質疑を受け罰せられている間、台湾におけるReddit、PTT掲示板で、あるユーザーが李医師の内部告発情報を投稿しました。台湾ではこの投稿者は処罰を受けず、投稿を見た疾病予防管理センターが翌日の1月1日に、武漢から台湾への渡航者に検査を義務付けました

ここからわかることが、ふたつあります。

ひとつは、市民が公共フォーラムに新型SARSの発生の可能性について投稿できるほど政府を信頼していること。もうひとつは、政府も市民の発言を信頼し、2003年から準備を続けてきたあのSARSがまた到来するのではないかと真剣に捉え対策できたということです。

CIVICS Monitorの調査で台湾がアジアでもっともオープンな社会だという結果が出たのも、この信頼関係のおかげです。台湾では、他の民主主義国家と同じように表現の自由や報道の自由を持ちながら、社会から生まれる新しい画期的なアイデアに対してもオープンでいることに重きを置いています。この信頼関係とすばやい対応のおかげで、私たちの学校やビジネスもいまだに閉鎖せず運営できています。

他にも、台湾の疾病予防管理センターCECCは毎日、記者会見を生中継で行います。CECCはジャーナリストからの質問すべてに答え、その回答もすべてライブストリーミングされます。何か新しい問題提起や提案がある場合、市民の誰もが「1922」に電話してCECCに伝えることができます。

4月に、ある男の子が「同級生にピンクのマスクを笑われるのが嫌だから学校に行きたくない」と言う出来事がありました。その翌日には、CECCの記者会見に出たスタッフ全員がピンクのマスクを着用し、誰もがジェンダーメインストリーミングについて学べる機会をつくりました。これもまた、ソーシャルイノベーションです。こういったすばやい対応が政府と市民社会の信頼を築き上げるのです。

Fair. 公平なマスクの配布

次の焦点は、公平性です。マスクの生産を強化し、みんなが国民健康保険を使って近くの薬局から受け取れるようにした時にも、公平性を指針としました。

各薬局の在庫量をただ公開するだけでなく、3分ごとに更新するようにしました。このおかげで、g0v(オープン・ガバメントを追求する台湾のシビックテックコミュニティ)とその参加者が、地図で薬局の場所を確認できるツールや、盲目の人向けに音声補助を使ったツール、チャットボットを使ったライブプラットフォームなど、みんながそれぞれ必要なかたちでインクルーシブに、近くの薬局のマスク在庫情報にアクセスできるよう、130以上ものツールを開発することができたのです。

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台湾では99.9%以上の人が健康保険を持っているため、症状の出てきた人はまずマスクを受け取り、金銭的な心配をせず公平に治療してもらえると安心した上で病院に行くことができます。

この情報更新の速さは、マスクの在庫ダッシュボードのデザイン開発をも可能にしました。

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ダッシュボードでは、マスクの供給が増加しておりマスクを受け取られること(大人は二週間に9枚、子どもは10枚)や、台湾のどこで供給過多や供給不足があるかが確認できます。また、薬局からの生のフィードバックをもとに更新することで、マスクの配布と発注システムも社会全体とともに共創していったのです。

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この分析をもとに、新たな取り組みも始めました。この写真で行政院長が嬉しそうに笑っているのは、健康保険カードを使って24時間マスクを受け取れるよう、コンビニとの提携が成立したからです。これは、薬局の運営時間よりも労働時間の長い人々がたくさんいるからです。薬局でのみ配布していた時は、働く時間が遅いために受け取れない人たちがいることが懸念されていました。

Fun. デマよりもユーモアを

最後に、ストレスの多い時期だからこそ、人々が不安になりやすくなっていることを強調します。この不安から、世界中であらゆるパニック買いや陰謀論が起きています。台湾では、「デマよりもユーモアを(humor over rumor)」というモットーでカウンター戦略を練りました。

ティッシュペーパーのパニック買いが起きた時、「ティッシュはマスクと同じ原料でできている」という噂が背景にありました。そこで、先ほどの写真で笑顔を見せていた行政院長がお尻を向け「お尻はみんな一つずつしかありません(=ため込む必要はありません)」と呼びかける大きなポスターをつくりました。ポスターには「マスクは台湾産の原料、ティッシュは南米産の原料でつくっています」というシンプルでわかりやすい表を掲載しました。

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この画像がバイラルに広がり、ティッシュのパニック買いは1〜2日で収まりました。そして、最初にパニック買いのデマを流し始めたのは、ティッシュの転売屋だったことが判明しました。

ソーシャルメディアの活用はこれだけではありません。CECCによる記者会見は毎度、厚生省の代表犬である”Doge CEO"のかわいいドッグ・ミームに書き換えられます。ソーシャルディスタンスを保ちましょう、手の消毒をしっかりしましょう、マスクの事前オーダーの支払いを忘れないで、といった風にです。このユーモアを使った画像が拡散力を持つため、デマや噂よりも正しい情報が早く広まり、パンデミックの最中でも台湾の人々が落ち着いていられるようにできるのです。

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今回は5分しか時間がなかったのでここで終わりますが、興味を持たれた方はぜひ、TaiwanCanHelp.usにある情報を読んでみてください。

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