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日本の歴史をよみなおす(全)

"開かれた市場は、日常の世界とはちがい、聖なる世界、神の世界につながる場であると考えられていました。そこにはいると、モノも人も世俗の縁から切れてしまう。"1991年、1996年の続編を併せて一冊とした本書は、日本を『正確に知ること』が義務だとする信念を持つ著者による渾身の一冊。


個人的には読書を通じて、必然として何度もそれぞれの作中舞台となる【日本の歴史】を振り返ってきたものの、発売からロングセラーとなっている本書を読む機会がこれまでなかったのですが。この度、ある議員が本書に触れて活動を紹介していたことをキッカケにようやく手にとりました。

さて、本書では歴史学者である著者が、収録のうち前半となる『日本の歴史をよみなおす』では、これだけで充分に刺激的な【カタカナやひらがなから考える文字の話】から始まり、貨幣の流通過程と価値の変遷、天皇直属人の【神人、寄人、供御人】聖なる職能人から世俗、差別への流れや、女性をめぐる職能や性、室町・戦国時代以降における地位の低下、最後には天皇という称号の持つ【2つの顔】についてと様々に話題が展開していくわけですが。

確かに室町時代から始まる禅や茶といったものを【日本の伝統文化】としてありがたく扱う本が多い中【室町以前について】著者の様に考察、紹介している本は手にとったことがなかった事から、かなり刺激的でした。

また同じく後半となる『続・日本の歴史をよみなおす』では【百姓という言葉を土地に結び付けられた農民と誤ってイメージしてしまった】事が、日本史の正確な理解を妨げてきたのでは?と疑問を呈した上で、各地の文献から、荘園や公領、悪党についての考察を繰り広げつつ、日本列島という形としてではなく、大陸も含めた【海洋ネットワーク国家】としての日本について展開しているのですが。

都道府県という【細かく誰かに線をひかれた土地】に縛られ、地域のご当地魅力を発信しあっている現在と比べ、ダイナミックかつ躍動的に溢れていて、こちらもわかりやすく魅力的でした。

室町以前、教科書にのらない歴史を考察したい誰か。あるいは土地や農業に縛られない海洋ネットワーク国家としての日本史をイメージしたい誰かにもオススメ。

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