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『カラマーゾフの兄弟』続編を空想する

"『カラマーゾフの兄弟』は未完の小説である(中略)作者が『著者より』と題する序文で、アレクセイ・カラマーゾフの『一代記』は『ふたつの部分』からなると宣言している以上、続編の存在そのものを疑ったり、否定したりするわけにはいかない"2007年発刊の本書は、文学ミステリー的に楽しめる。


個人的には、2017年に『日本ドストエフスキー協会』を設立、初代会長に就任したり、また好きが高じて?2015年に自分で『新カラマーゾフの兄弟』を執筆したりしている(賛否はあるようですが)著者の熱量に関しては敬意を感じている事から、カラマーゾフの兄弟の読書会をきっかけに本書を手にとりました。


さて、本書はタイトルそのままに。当時まさに『カラマーゾフの兄弟』第4部の翻訳に取り組んでいた著者が"謎にみちたディテールの存在"に気づいたことをきっかけにして、完成からわずか3ヶ月足らずして他界したドストエフスキーが存命なら【どんな続編を書いたのか?】について。当時の関係者の発言、出版当時の時代背景説明も含めて【訳者として空想している】わけですが。絶対とは本人以外、結局は誰にもわからないものの、かなり丁寧に調べていることが伝わってくることから【ひょっとして?そうかも?】と文学ミステリーよろしく想像させてくれました。

また、空想された続編自体に関して置いとくとしても。単純に『カラマーゾフの兄弟』の訳者が、本編を翻訳しながら【どういった箇所】に作業をしながら気になっていたか、あるいは全体に関してどのような印象を受けていたかについて、補足してくれている楽しみもできて、これはこれで【一緒に読書会をしている】感覚があって楽しかったです。

『カラマーゾフの兄弟』を読み終えた誰かに、また読み終えてなくてもドストエフスキー好きな誰かにオススメ。

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