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航海と数字(アルキメデス大戦)

相方のKちゃんは、数字が好きな人でもある。
数字が好きって、変な言い方なのだけど、初めて誕生日やら電話番号やらを訊かれて答えた時、「へえ~。綺麗な数字だな~。」と言われて「???」となった。
綺麗な数字という意味が分からないからだ。

”容疑者Xの献身”とか、数学者が出てくるドラマや映画をよく絶賛している。私にはあまり意味が分からないが、彼女にとってはツボらしい。

そのお話の中に、何種類かの方程式で答えが導き出せる問題が出てくるのだけど、容疑者が言う。「それでも良い。でも、そのやり方は美しくない。」というシーンだったと思う。うろ覚えだけど。
そのあたりのシーンでも「分かる。めっちゃ分かる!」と感動していた。
私にはやっぱりよく分からない。

そんなわけで、先日「アルキメデス大戦」を観た時に、ほんの少しKちゃんの気持ちが分かった気がして、自分も面白かったし感動したのでお薦めしてみた次第。

すると、最初から最後まで食い入るように観ていた。まさにツボだったらしい。
彼女も「美しさは数字に表れる」という人だから。

同映画の中で、船の設計図を眺めながら主人公が、とある一部分に注目する。そこを指でなぞるようにして言う。「どうも、ここが美しくない。」と。
多分その辺りを測量してみると、そこに船の欠点、沈没する原因となる要因が隠れているのだろう。

やがてドラマの終盤であらゆる欠点を修正した完璧な船が出来上がるシーンがあるのだが、もはや、それは完璧すぎて恐ろしいシロモノとなる。

もしかしたら人間にも共通する部分があるのかも知れない。美しさは数字で表せるものなのかも知れない。それはそれで面白いことだろう。

しかし人は完璧ではないから、どこまでも美しさに憧れる。

同時に美しい状態というのは、ある意味自然であるということでもある。

何か違和感を感じたり、何か古いものに固執して維持しようとすると余計な力を使う。それは日増しに大きな歪みに変わっていく。

そして、それは、途方もなく疲れることなのだろう。

Kちゃんが言う数字の美しさというのはよく分からないけれど、進まない理由は船ばかりに原因があるとも限らないだろう。例えば漕ぎ出す港が狭すぎたり、大きなゴミがあって障壁となっていたりと、色々あることだろう。

とりあえず彼女の言う美醜が理解できなくとも、自由でありたい。どんな船でも、船は船。船は進むべきものだから。

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