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Ocean

男は6カ国語を解した。にもかかわらず、女という存在を理解するのは彼にとっては難易度が非常に高かった。海のように知れば知るほど、海底が見えない深淵なる宇宙に感嘆していった。時に海は荒れ、時に凪となり、一瞬として同じ波は立たないが、男は恋人との航海を楽しんだ。

少しづつ、少しずつ、波のリズムを習得し、自然の織りなす奇跡と同化していった。ひげ鯨が早朝に大海原で飛沫をあげて海面から顔を出すとき、この世界の恋人たちは愛を語り合っていた。

恋愛とは大航海だ。作戦を練って、装備を整え、しっかりと航海術を準備する。海水の流れを読み、太陽の導に従い、強い意志を持って目的地を目指す。さすればきみはこの宇宙の神秘に祝福されるだろう。

深夜3時。海の話はこれまでにしよう。男は恋人が寝静まった様子を見て幸せな気分に浸った。彼女のおかげで今夜も少し、女という存在を少し理解した気がしたからだ。

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