plonger

"plonger" は、フランス語で「潜る」「潜水する」「浸す」と…

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"plonger" は、フランス語で「潜る」「潜水する」「浸す」といった意味があります。 ここでは私の読み物と写真を通して、無意識の奥深くへ潜る素晴らしい体験を共有してもらいたいことからこの言葉をつけました。 https://www.takahashitetsuo.com

最近の記事

Baleen Morning

孤独と自由は決して対極にあるのではなくて、お互いがお互いを内包する関係性にあることで、それぞれが同じ目線に立っているのかもしれない。 太平洋を大航海するヒゲ鯨を想像すると、僕はいつも孤独とともに大きな自由を感じることができる。そこには果てしない海原があり、美しい太陽を浴びる朝が来る。遠い遠いヒゲ鯨の朝を思うイマジネーションは、僕にどこか切ない、でもどこかとても優しい気持ちを届けてくれる。そうだ、孤独も自由も決して悪い状態ではない。もしかしたら、人間として目指すところは大海原

    • What we talk about the first sunrise of the year

      40年近く生きてきて、初日の出を見た記憶がほとんどない僕が(というよりも子供のころから、この種のイベントに興味を覚えなかった)、今年は妻にほぼ強制的にホテルのツアーに参加させられたのでした。 しかしながら期待をはるかに大きく越えて、元旦早朝の直島の広大な空と海は言葉に例えることができないくらいに美しい光景でした。日が昇り、雲の合間から光が溢れ出てきた瞬間、これまでに感じたことのない、何か神秘的な感動を心に感じました。初日の出とはこんなにも人を幸福に、そして希望をもたらすもの

      • Winter

        その日の夕方、空は静かに晴れ渡り、冬独特の淡いスモーキーな空気の色を帯びた東京の風景が、映画を観終わった僕らと無意識のうちに同化しました。僕らは街の一部となり、街は僕らの一部になりました。それはまるで、満月が冬の到来を優しく祝福しているかのように美しい空だったのです。 出会った当時、男は女に毎日ラブレターを書いていたことを思い出しました。愛する想いを伝えるばかりではなく、自分自身の心の浄化作用の役目も兼ねて。水滴を言葉に落とし、透明な言葉を毎晩彼女のために紡いでいったのです

        • Double espresso

          未来のことは誰にも分からない。明日死ぬかもしれないし、一年後にはフィンランド語を話せるようになっているかもしれない。砂漠に雪が降るかもしれないし、グリーンピースが食べれるようになっているかもしれない。 だから出来るだけ恋人と手を繋ごう。体温を感じ、指をそっと撫で、歩きながらダンスを踊ろう。確かなことなど一つもない。だからなるべく笑顔で、丁寧なステップを踏みながら、日々生きている喜びを愛する人と分かち合おう。精一杯にだ。なぜならば時として、生きるとはそういうことでもあるのだか

        Baleen Morning

          Jean Prouvé

          Ginza SixのThe Rowには、Jean Prouvéの作品が置いてあるのを知っているだろうか。スチールの丸い隙間からは太陽光が差すデザインになっている(店にあるのはインテリア用としてLEDが装着されてある)。以前、清澄白河の展示でこれに似たものを見た気がしないでもない。 Prouvéは自らをエンジニアだと自負していたからか、彼の手作りによる作品は観る者に工業デザインとはなんたるものかを示している。いつか彼がデザインした椅子が欲しいと思っている。 機能主義、問題解

          Resonance

          人と人との出会いはやっぱり、共鳴するかしないかじゃないかな。毎日この世界では無数の人とすれ違い、ふれあい、通り過ぎていく、その中でどれくらいの数の人と心が運命的に揺れ動くだろうか。トライアングルを棒で振るわせるように、ひとつひとつの特別な共鳴が、忘れ去った過去の記憶を呼び起こすことだってありうるのだ。 ぼくは耳を澄まし、遠くで響くその音を静かに感じるだろう。共鳴という人と人との関係性を、大切に胸の奥にしまうこと。きっとそれはぼくらの輪郭をカタチづける大切なスパイスなんじゃな

          Ocean

          男は6カ国語を解した。にもかかわらず、女という存在を理解するのは彼にとっては難易度が非常に高かった。海のように知れば知るほど、海底が見えない深淵なる宇宙に感嘆していった。時に海は荒れ、時に凪となり、一瞬として同じ波は立たないが、男は恋人との航海を楽しんだ。 少しづつ、少しずつ、波のリズムを習得し、自然の織りなす奇跡と同化していった。ひげ鯨が早朝に大海原で飛沫をあげて海面から顔を出すとき、この世界の恋人たちは愛を語り合っていた。 恋愛とは大航海だ。作戦を練って、装備を整え、

          Humanity

          代官山から中目黒に向かう途中、僕らは美しい夕陽を見た。 変わらないことのひとつ、それは僕らは不完全な生き物であるということだ。深海のシーラカンスの言うような完璧な心を僕らは保ち続けることはできない。過ちや絶望を繰り返し、時に憂鬱や孤独を抱えて生きている。もしかしたら色彩はまた喪失するかもしれない。時に灰色の心に陥るかもしれない。けれどもそれが人間だ。心の振り幅やグラデーションが大きければ大きいほど、僕らの人間性はより一層輝くのではないだろうか。色彩の喪失が意味するもの、それ

          Color of the wind

          風の話をしよう。 なぜだろう、風はとても孤独なのだ。緑や雪とは違って実体がなく、雲や空気の流れ、音によってでしか僕らはそれを認識することができない。誰も風の顔を見ることは出来ないし、誰もまたそれを掴むことができない。もしも神様がいるとすれば、きっと風に色を付けることを忘れてしまったのではないだろうか。もしも風に色があったのならば、僕らはその表情をいつまでも思い起こすことができただろう。風は世界中の愛のかたちを知っている。なぜならば僕らの肌に風が触れた時、それはきっとこの世の

          Color of the wind

          When we talk about dream

          夢の話をしよう。 今朝目が覚めて鏡を見たら、髪の毛が金髪に目の色がターコイズブルーになっていた。寝ぼけているのかと思って、洗面台でしばらく昨夜のことを思い返してみても、髪の毛と目の色について思い当たる節は何もなかった。恋人に電話をして尋ねてみようかと一瞬考えたが、思い留まることにした。仕方がないのでシャワーを浴びて、髭を剃り、着替えをしてもう一度鏡を見たが、髪の毛と目の色は変わらずそのままだった。 世界は一瞬にして変わるのだ。そこには驚きも絶望も喜びもなかった。時に、僕ら

          When we talk about dream

          Blueberry

          そうだな、うまくは言えないけど、大変な場面で重要なことは自分自身を失ったり、自分の翼を失ったりしないことなんじゃないかな。時に局面に立ち向かう勇気なくして回答は得られないんだ。 「私にも翼はあるのでしょうか?」 Mさんはまっすぐに僕を見つめて質問した。 「それは君自身が見つける旅に出なければいけないよ。困難な壁に何度もぶつかり、長い時間がかかるかもしれない。でも君ならきっと僕よりも簡単に色彩の回復を見つけられると思うんだ。大丈夫、僕はできるだけ君の側にいるから心配しない

          Silhouette

          気がつくと、黒い山高帽にオーバーコート、赤いネクタイをした背の高い中年男のシルエットは空間に切り取られ、空洞になったその体からは無数の鳩が飛び出して来た。男の姿はどこかへ消え、食べかけの青いりんごは地面にオブジェのように転がっていた。 夢から覚めた僕は、しばらく窓の外を眺めていた。青く澄み渡った上空は、色彩の回復へと向かう旅立ちに相応しく希望に満ち溢れていた。脳裏ではここ数か月の様々な思いや感情が織り交ざり、僕は目を閉じて軽く深呼吸をした。長い旅が始まる。いや、旅はもうしば

          Water city

          夢の中で、僕はどこか異国の水の街にいた。船に乗ってぼんやりと窓から外を眺めていた。船はどこへ向かっているか見当もつかないが、時間と空間はどこかへと繋がっているのは間違いないと思った。船は止まり僕は降りて街の見える方向へ歩き出した。大きな広場に出ると、一人の背の高い外国人の女が僕に挨拶をしてきた。その女はカラスのような漆黒の目をしていた。僕らは一度どこかで会っている。直感的にそう感じた。しかし僕は考えを巡らせるが、なかなか思い出すことができなかった。夢はそこで途切れ、目覚めた時

          Rain

          夕方から激しい雨が降った。今思えばここしばらく晴天がが続いていて、雨は全く降っていなかったことに気付いた。僕はコーヒーを淹れしばらく窓をぼんやりと眺めていた。雨粒はだいぶ大きいようで、何億個もの(実際にははるかに多いのかもしれないが)大地を打つその音は、まるで神様が空の上でダンスをしているかのように聞こえた。 雨粒の音のリズムに意識を集中していたら、急に睡魔が襲ってきたのでアトリエのソファで小一時間ほど仮眠を取ることにした。すとんと眠りに落ち、朧気ではあるが短い夢を見た。

          Lifestyle maestra

          那須黒磯のtamiser tableには、僕らが勝手に「生活の先生」と密かに呼んでいる店主がいる。器や生活雑貨を扱うそのお店には、彼女の素晴らしい目利きアイテムが揃っている。僕は栃木に帰省をするとだいたいいつも、愛車の水色のニュービートルをとばして那須へ訪れるのだ。 その目的のひとつには、tamiser tableがある。店主との器や食にまつわるエトセトラ、旅の話や彼女のエキサイティングな昔話。こんなにも暮らしと生活のカルチャーを掘り下げて、会話のキャッチボールをしてもらえ

          Lifestyle maestra

          Photography

          自分にとって写真を撮ることは、水を掬うことみたいなものである。 この世にはとめどなく流れる時間というものが存在し、その瞬間瞬間には様々な人々との美しい出会い、そして数えきれない必然的な発見に満ちている。その瞬間を記録し記憶することは、とめどなく流れる水を掬うことみたいなものではないかと思っている。 水は生き物にとって必要不可欠なものなのであり、渇きから解放されるために、生きていく上でなくてはならないものである。ネットフリックスやダイエットコーラよりもだ。一瞬でもあり、永遠

          Photography