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【適材適所】(新釈ことわざ辞典…というより四字熟語)記事版

誰が見ても《私的な理由》以外に《理由》が説明できない人材配置について《理由》を問われた公的立場の人間が挙げる《理由》。

岸田文雄首相は10月5日の衆院本会議で、自身の長男、翔太郎氏を首相秘書官に起用したことについて、「政権発足から1年という節目をとらえ、適材適所の観点から総合的に判断をした」と語った。

新聞各社の報道より

実はこの記事は先週投稿する予定でした。でも、衆議院本会議での「適材適所」発言へのブーイングに懲りたのか、参議院本会議では具体的な任命理由を説明されたようなので、一旦、公開を保留ました。

首相は「政権発足から1年という節目をとらえ、適材適所の観点から総合的に判断した」と説明。8人いる首相秘書官のうち、翔太郎氏には各省庁などから上がってくる情報を24時間、迅速に取捨選択して報告する役割や、SNSでの情報発信の役目を期待しているとした。翔太郎氏は首相と共に首相公邸で寝起きしている。

新聞各社の報道より

うーん。
でも、なぜこの人にしたのか、という説明にはなっていませんね。報道で付け加えたらしい最後の一文、
《首相と共に首相公邸で寝起きしている》
というのが重要なようで、夜も近くにいるから、
「情報を24時間、……」
ということなのでしょう、想像するに。

古い友人に、ある国際企業の役員になった人がいました。
この人には3人秘書がいて、全世界かつ24時間情報を管理しており、必要に応じて深夜であろうとも伝えるシステムになっている、と話していました。
もちろん、この役員さんに3人子供がいて8時間ずつ担当しているわけではありません。

岸田首相の「説明」を聞いて、
「……それなら息子でないとね」
と納得した人もいたかもしれません。

でも、私が想ったのは、
「金勘定は家族でなければ」
と経理だけは社長の奥さんが担当し、「使用人」に任せない小さな町企業、
あるいは、呑み代を払おうとしたら、
「レジは私、さわれないの」
と従業員から女将おかみにバトンタッチする居酒屋でした。

国の中枢の情報管理が、
《家族経営の町工場(失礼!)や居酒屋(ごめん!)》
みたいじゃん!
そんなんで、ホントにいいの?
(言わずもがなですが、「失礼・ごめん」は、町工場と居酒屋の方々に謝っております)

……まあ、おそらく、《本当の理由》を説明していないのでしょうね。

なぜ《理由》を語らないのか? 語れないのか?

独裁国家のリーダーが自分の息子を跡継ぎに据えるのを見て、
「おバカな国だ」
と思ったりしたものですが……この国も劣化しているのでしょうか?
「いや、劣化してるのは政治家でしょ?」
……そうかな、それを見てなんとも思わない、いやむしろ「世襲政治家」に票を入れる有権者が劣化しているのでは?

《世襲政治家》というテーマでは、小説とエッセイで描いてきました。
この国を亡ぼすのは、他国からの侵略以上に、選挙区の《世襲》システムではないか、と深く憂慮しています。

国連総会ではことし4月、安保理の常任理事国が拒否権を行使した場合に《総会で説明を求める》決議が採択されました。
日本も共同提案国に名を連ねています。

公的な判断には、《説明責任》が求められます。
公的な人事にも《説明責任》が求められます。
上場企業が創業者の血縁者を取締役などに抜擢する場合でも、《適材適所》などではなく、《同じ屋根の下に住んでるから》でもなく、具体的な《理由》を述べなくてはなりません。

「いや、《世襲》だって、優秀な人ならいいじゃない」
という人がいます(私はそう思わないけど)。

百歩譲って、それならば、その人がいかに優秀であり、その職に相応しいのか、はっきり説明して欲しい。

……そんなこと、首相もわかっているのでしょう。
今回の人事は、その、
《いかに優秀か》
の「材料作り」に使われてる
んですよね、きっと。

《選挙区の世襲》を行う数年後に、
「首相秘書官として活躍した」
と《実績をアピール》するために。

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