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庭を草むらに | アイルランドと私 #1

ゼルダの伝説の世界に憧れてアイルランドに住み始めてしまった人の、旅の記録です。植物を調査するお仕事をしています。自己紹介はこちらです。

"No Mow May"、Mowとは刈り取るという意味で、5月は芝刈りを控えよう!というキャンペーン&キャッチフレーズです。イギリスで始まり、アイルランドでも、行政や自治体がこのフレーズを使って、農業や安全管理以外、5月の芝刈りは控えるよう呼び掛ける看板や広報の発信をしています。


何で5月は控えた方が良いの?

5月末、管理放棄されたプレイグラウンドが花畑に

アイルランドでは多くの植物が5月末-7月に花を咲かせますが、芝刈りの最盛期は5月。すると、芝地の植物は、花をつける機会を失っていることになります。それは、結果としてその花の花粉を餌にしているポリネーター(チョウやハチなどの花粉媒介者)、ひいては生態系全体に影響が出ていきます。

Wild Teasel (Dipsacus fullonum)の蜜を吸うマルハナバチ

そこで、No Mow May。みんなでお家の庭も、道路や農地の縁にある草むらも、5月はぐっとこらえて、花が咲くまで見守ろう。この運動で花が増えたら、それをベースに色々な生き物も増えるよね。そんな感じの考え方が、キャッチフレーズの語呂の良さも相まって、じわじわアイルランドで広まってきているようです。

その成果やいかに

トリニティーカレッジダブリンでも、大学構内の芝地でアオスズラン(Epipactis helleborine)が見つかり、今年、その場所の芝刈りを5‐6月の間控えたところ、ランやその他30種類以上の花が次々に顔を見せたと報告しています。

私も、通勤で通る環状交差点の中央島に、タンポポやハルガヤと共にたくさんのPyramidal Orchidが鮮やかに咲いているのを見かけました。

6月、中央島に咲くPyramidal Orchid (Anacamptis pyramidalis) が鮮やか。名前は、ピラミッド状の花を付けることから
Bee Orchid (Ophrys apifera)。
ハチに擬態している茶色の花弁に注目。
ここは背丈の高い草が伸びっぱなしの草原。遊歩道があり、地域の人が散歩や虫取をして楽しんでいる

「庭が草むらになったよ!ランもあった!」
7月、チームメイト達が嬉しそうに報告し合っていました。例年通り芝刈り機に乗ろうとするお父さん達をなんとか説得して、花の最盛期、実家での植物観察をほくほくと楽しんでいました。

身近な自然を少しずつ、大切にしてみよう、愛でてみよう、楽しんでみよう、そんな人達のお家から、アイルランド全土に広がることが期待できる、素敵なキャンペーン、No Mow Mayについての備忘録でした。

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