掌編小説「涙橋」(300字)
江戸にまで噂の届く、大工泣かせの涙川。常識外れのその急流、幾人の名工が挑んで橋の一つも架からねぇと来た。くやし涙を飲み込んで、川の流れはさらに勢い増すばかり。
白羽の矢が立ったのは、江戸の若い大工、清太郎。清太郎には弟があった。元々体の弱かった弟は、流行り病で虫の息。
金が欲しい。弟に薬を買ってやるための金が。
そんな清太郎に、親方が話を持ってくる。
涙川に橋を架けろ、清太郎。前金の二十両は今お前にくれてやる。これで弟に薬を買ってやれ。
泣いて喜ぶ清太郎、しかし一向