掌編小説「花と散る」(200字)
君とは、あまりにも身分が違う。己は士族の長男として育った。しかしながら君だけが、己の草花にのみ愛を注ぐことを知っているのである。
幾度も、道に咲く花々の名を君に問うた。わからぬものがあれば、己が教えてくれようと。
だが君は名どころか、花たち各々の美や趣についても自慢げに語るのである。
負けじと己も父上に隠れては書に学んだが、ついぞ君には敵わなかった。ただ、この墓の前に並ぶ花たちの名を呼ぶことは出来よう。
眠りの中で、また君の訪れを待つ。
君ではない者と結ぶ前に命を散らせたこと、そこに悔いはないのである。
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