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だから 僕らは ココにいる。

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どんな想いを胸に抱いて、ココから物語は始まっていったのでしょうか? そしてどんな理由があって、ココで物語りは終わっていったのでしょうか? 日常の中で起きている、ささいな出来事の… もっと読む
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「相方。」

「相方。」

友達数人と飲みながら、朝方までスズオの思い出話で盛り上がっては、しんみりしていた。

「ホント、信じられねぇーよな・・・」

そう誰もが口にしては、目に涙を浮かべていた。

突然の事故・・・。

スズオの死・・・。

果たせなかった夢・・・。

残された俺・・・。

言葉に出しても全然実感のわかないこの現実を、俺は一向に受け止めることができずにいた。

スズオとは小学校から一緒で、高校の時に漫才の

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「死がふたりを分かったとしても…。」

幼馴染のタロウがわざわざ離婚報告にやってきたのは、春先のことだった。

そして、季節は流れて夏の終り・・・。

また、タロウがやってきた。

「先生!俺、難病を抱えているんです!」

午前中の診察が終わるのを待合室で待っていたタロウは、最後の患者さんが帰ったのを見計らって診察室に入ってくるなり、開口一番そう私に言った。

「どんな病気なんですか?」

診察の後片付けをしながら、私は素っ気無

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「はじめてのチュー。」

仕事で使用する写真を撮影するため冬間近の山奥に軽装で出かけた僕は、案の定遭難した。

丸2日間行方不明者となり、3日目の昼頃、僕は奇跡的に捜索隊のおじさんに発見された。でも、発見されて病院に運ばれたその後も、1週間ほど生死の境を彷徨い、どうにかこうにか一命はとりとめることができた。

で、今は全快して元気で暮らしています。

僕の遭難事件から3ヵ月経った頃、親しい友人たちが僕の為に快気祝いをして

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「ホーム。」

この店で飲み始めてから、もうどのくらい時間が流れたのだろう。

カウンター席の一番奥に陣取って、俺は1人酒をくらっては、ずっと自問自答していた。

自分ひとりであれこれ悩んでいても、簡単に答なんて見つかるわけがないとわかってる。

だけど俺はいつも、嫌なことや苦しいことがあると、こうやってまずは自分自身と、とことん語り合うことにしているのだ。

そして、自分と語り合いを終わらせる時には、いつも最

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「憂鬱な金曜日。」

「憂鬱な金曜日。」

オフィスの一番奥に隔離されたように存在しているのが、オトコのワークスペースだ。

くの字型に置かれた大きな2つの机には、それぞれパソコンのディスプレイが2台ずつと、仕事で使う本や資料が山積みに置かれている。

オトコは怪訝そうにディスプレイを見つめたまま、さっき火をつけたばかりのタバコが灰皿に置かれているのを忘れて、また新しいタバコに火をつけた。

「・・・ったく・・・。何時間かかってんだよ、この

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「2101年・夏のある日。」

「2101年・夏のある日。」

今年も夏が終わっていく・・・。

この星もだいぶ住み難くなったと、彼は言う。

「俺がガキだった頃は、こんなヘンテコな空の色にはならないぜ・・・」

「ヘンテコって・・・。結構キレイだと思うけどな、この風景・・・」

「そうか・・・?」

彼はそう言って、赤ワインのような色に染められた景色を見つめたまま、黙ってしまった。

彼は、過去から来た科学者で、何でもタイムマシーンの試運転をしてい

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『遠くて近い君へ。』

『遠くて近い君へ。』

あの橋を渡ったところに、君の住む家がある・・・。

もうどのくらい君と会っていないんだろう。

最近は時間に余裕があるんだけど、僕は君に会いに行くことをしない。

本当はとても君に会いたくて会いたくてしかたないのに、でも気持ちは君から離れていることを望んでいる。

これって一体どういうことなんだろう・・・?

自分の夢を叶えるために、僕は君をあの町に残して、ひとり都会の暮らしに挑んだ。

だけどそ

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『明日に続く光。』

『明日に続く光。』

「明日に続く光」に包まれて、僕はココから・・・。

  「この写真がいいよ。コレが一番素敵だよ・・・。」

3年前、キミにそう言われて、僕はコンクールにこの写真を出展した。

そしてめでたく一番をとった・・・。

プロのカメラマンになって、2年。

最近では、僕の撮る写真じゃないとイヤだ・・・といってくれる出版社の人もいたりする。

始めての個展の準備も、順調に進んでいる。

でも・・・。

でも

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『考える場所。』

『考える場所。』

ココは僕のお気に入りの「考える場所」。

子供の時からずっと、僕はいつもココで何かを考え続けてきた。

川の流れは、見ていて疲れない。

ずっとただ流れて行くから、変わらないんだよね、時間が・・・。

だから僕は時間を気にせず、ずっと考えていたいとき、この場所に来る。

はじめから答えなんて出ないんだって分かっていても、必ずココに来て、僕は考える。

階段に腰掛けて、ずっと川の流れを見つめていると

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「コワレル。」

「コワレル。」

コ ワ レ ル 。

ていうコトバに、憧れていた時期があった・・・。

あの時何かに「ゼツボウ」して、この看板が目の前に見える歩道橋の上から、僕は飛び降りて死のうと思った。

だけど、飛び降りることはしなかった・・・。

何かさ、しばらくこのコーラの看板見てたら、無性に

「コーラ飲みてぇ・・・」

て、思えてきたんだ。

そんで気がついたら、コーラ買いに歩道橋下のコンビニに向かって歩き出してるん

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