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絵の具のゆめ

最近才能探しに忙しいのですが、いまだにひとつも見つかっていないのです。
ペン習字から始まり歌とかキーボードとかもトライしてみましたが、ピカッと光る才能がなかった。


それで次は何かしら、絵かな、と思ってとりあえずの絵の具暖色12色入りとボード?を買いました。あとそれをささえるちょうどいい感じの台。
まあ、才能探しにはこんなもん。
そしてペタリペタリと塗りつけていきます。部屋のなかがくさい!洗濯物干したばっかりだから換気扇回さないとくさすぎる。
環境を整えてもう一度。

ペタリペタリ、色を変えてペタリ、ペタリペタリ。
あか色は、きもちいいね。

あっこれに合わせて歌えばまだマシ?もしくは、
これに合わせた曲を奏でたらマシ?はたまた
これに文字を加えて1つの作品にするのは?
あり、かもしれない。

そう思ってペンを探し出した。もちろん向いてないとわかったあと物たちはひどい扱いを受けるから箱の底から出てきたんだけど。

ペンを持って絵を見て驚いた。
書いた絵の具の1ペタリずつが独立してたっている。流石油絵、流石素人だなあと思った。
油絵の具の自立心の強さにおののく。
あー私は油絵の具にも負けているぞ。頑張らないとと思いその絵を見つめた。

「○○さんの所の娘の爪の垢を煎じて飲ませてやりたい」

大昔、私が多分幼稚園くらいの時にすごい形相で言われたことを思いだす。あのときあの子の爪かあ…すぐ鼻くそほじるから嫌だなあと思って泣いていたわたし。

超今、 私はもうあの言葉の意味も込められた感情も全てわかるわたしになった。結論は、のまなくてよかった、だ。

飲まなくてよかった。
飲まなくてよかったのに、今私は、
油絵の具の鱗を1つ剥いだ。
やっぱりまだ接着面は柔らかく、生きていたこととも取れる。こんなに大きい鱗、どんなに大きい魚なのかな?と思いながら固い端っこの方を噛んだ。
咬みちぎってやるッ!とおもって噛んだ私がバカみたいなくらいカリッといった。

苦かった。
良薬口に苦しとはまさにこのことか。
とおもって残りのカケラも全部口に含んで味わっては大きく口を開けて下を向いた。
唾液の命綱にぶら下がりゆっくり降りる欠片。
いつか着地するのかなと思ってるだろうところで私は急ぐ。

だって!自立心の強い私がここに今生まれたんだから!走らずにはいられない!

今までの道具全部投げて置いて落としてなでて、何個か持って制服のまま走り出した。

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