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学校のクラス全員が勝利する唯一の道は「チーム」化だ(書評:THE TEAM/ザ・チーム)

フリーランスはフリーという言葉が強すぎて、「フリーランスだからチームとは無縁」と思ったことがある方もいらっしゃるかもしれません。そして、「フリーランスは上司がいないから叱られない」と思われるかもしれません。

そんな内容を Twitter でつぶやいたところ……

叱られました。

このツイートが飛んできたときに「いくら有名企業の偉い人が言っていることだからって本当なのかよ」って思いました。例えば、「講師業はチームじゃなくて個人プレーだろう」って。

この意見を覆したのが『THE TEAM(ザ・チーム) 5つの法則』という本です。「オレ、クラスをチームにしてたわ」と気づかされたのです。

この本のサブタイトルにある通り、本書では5つの法則(ABCDEの法則)が「法則」「具体的事例」「チェックリスト」「学術的背景」という構成で紹介されています。この5つの法則を使いこなすことで、チームを作り上げ、最大限の成果を出そうというのが本書の狙いです。

そこで、個人プレーと考えていた講師業をチーム化することができるのかという観点で読んでみました。そのキッカケは、講師がどれだけうまく教えても、生徒が動かなければ(勉強しなければ)、成果は出ないからです。これは講師業のみならず、部下や仲間とともに何かを成し遂げようとするときに同じことが言えるでしょう。本書の「はじめに」には、次のように書かれています。

人間が1人でできることは限られています。この世に存在するすべての人間が、他者と協働することで「自分1人ではできない何か」に取り組んでいます。

講師1人の力には限界がある生徒1人の力には限界がある。だからこそ、協働しようという考えに至るわけです。この note では5つの法則をご紹介しながら、講師としてクラス(チーム)全体で成果を出す方法を考えていきます。

ちなみに、ぼく自身はとある大学で TOEIC のクラスの講師をしています。講師歴が長いわけでもなく、教員免許も持っているわけでもありません。新卒で会社員になって、人前で話すのを苦手にしたまま、講師になりました。カリスマ講師でもなんでもありません。それでも、クラスとして成果が出せた理由を分析します。

Aim(目標設定)の法則

(要約)
チームをチームたらしめる必要条件は「共通の目的」であり、活動の成否を規定する、最も重要なものである。また、目標は「意義目標」「成果目標」「行動目標」という3分類に分かれるため、チームメンバーによって適切に目標を設定することが重要。

ぼくの担当する TOEIC のクラスでは目標スコアはありません。そのため、ぼくは、初回の授業で「○月に600点取得」という目標を立てるように呼びかけています。これだけだとぼやけているとわかっているため、ここから解像度を上げるべく、ブレイクダウンしていきます。

目標の3分類に当てはめてみると、意義目標は「クラス全体のスコアを上げる」こと。成果目標は「○月に600点取得する」こと。行動目標は「来週までに100語覚える」など、やるべきことをとにかく具体的に伝えるようにしています。

Boarding(人員選定)の法則

(要約)
「環境の変化度合い」という軸と「人材の連携度合い」という軸で分けると、チームは4タイプに分かれる。今の環境に合わせて、チームメンバーを選定したり、入れ替えたりすることが必要。「メンバーを固定すべきか」や「メンバーに多様性が必要か」はチームの状況に応じて変わる。

TOEIC のクラスの人員選定となると、生徒全員がメンバーになると考えるのが普通でしょう。しかし、ぼくの場合、授業を通じて、チームメンバーから降りてもらうよう勧めることもあります。どうしても生徒に応じて TOEIC に対するモチベーションや切迫度合いが異なりますので、「このチームにい続ける覚悟はあるか?」と個別に話すようにしています。そうすることによって、気持ちを入れ替える生徒もいれば、離脱する生徒も現れます。全ては意義目標である「クラス全体のスコアを上げる」ためです。

Communication(意思疎通)の法則

(要約)
コミュニケーションはあればあるほど良い気がするが、それではコミュニケーションコストがかかるため、「ルール作り」をすることによって、コミュニケーションを減らす方向に仕向けたほうがいい。とはいえ、ルールが多すぎると効率や効果が下がります。また、人は感情で動く生き物なので、相手のことをよく理解した前提で、コミュニケーションやルール作りをする必要がある。

ぼくがルールとして決めているのはこの辺りです。ルールを決めすぎると息苦しくなるため、臨機応変に対応するようにしています。

・気になることは即座に質問する
・問題は集中して解く
・音読は周りを気にせずやる
・飲み物も食べ物も自由に飲食しながら聞く

「TOEIC が嫌い」はもちろんのこと、「先生が嫌い」という感情にさせないことを最も心がけています。そして、相手の様子や性格を把握するためのコミュニケーションは必ず取り入れます。生徒は機械ではないので、そのためのコミュニケーションコストは惜しみません。

Decision(意思決定)の法則

(要約)
チームの意思決定には「独裁」「多数決」「合議」がある。どれが優れているかよりも、どの意思決定方法を採用するかを決めた上で、何かを決定しようとすることが大事。

講師としてがクラスを独裁することがほとんどです。クラス内でどんなことをするかは講師が決めたほうが効率的だからです。ぼくが TOEIC に関する情報を一番多く持っており、その情報が正確だからです。その際には、押し付けるのではなく、理由をセットにしてやるべきことを伝えるようにしています。

また、本書の中に「チームの意思決定の成否は、決断後のメンバーの実行度合いで決まる」とありますが、これはクラスでも当てはまります。ぼくは常々、「やるのは自分。やらないのも自分」と言い聞かせています。つまり、最終決定は生徒に委ねています。というか、委ねざるをえません。ですが、その決定が今後の人生をどれだけ左右するのかを伝えるようにもしています。

Engagement(共感創造)の法則

(要約)
Engagement とは「チームとメンバーの結びつき」のこと。気合いで人を動かそうとするのではなく、チームへのエンゲージメントを高めるためには Philosophy(理念・方針)、Profession(活動・成長)、People(人材・風土)、Privilege(待遇・特権)という4Pの魅力を高めることが大切。

クラスは10〜30人の規模なのですが、4Pのどれに魅力を感じるのかは人それぞれです。だからこそ、どの観点で刺さるのかをあの手この手を使って探ります。「全員で頑張って、早く TOEIC から卒業しよう」という方針で引っ張ることもあれば、「こういう考え方が面白いよね」「成長を楽しもう」という活動内容や成長に目を向けさせるときもあります。「クラスがいい雰囲気になってきた」と周りのメンバーや環境の良さを意識させたり、「いいスコアを取ったら、時間が増えるよ」と特権で釣ることもあります。

人は感情の生き物だからこそ、Engagement の法則で人を動かすかを考え抜く必要性を感じています。

人はチームと無縁のわきゃあないだろ!

以上、大学のクラスをチーム化することへの考察でした。一見、チームに見えないようなものも、「チームごと」としてとらえることによって、成果を高めることはできると感じています。

最後に、スゴい方のおっしゃることは正しかったことをここでお詫び申し上げます。

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渡邉 淳/porpor(英語学習コンシェルジュ)

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