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大学生必見!!大学院の研究室選び方講座(中編、いいラボの選定編)

こんにちは、海外で現役ポスドク(生命科学系)をしておりますポス山毒太郎と申します。このnoteはあくまで毒太郎の体験を元に、偏見に基づいた感想を語っていく場です。ですのでほとんど統計値などは出てきませんので悪しからず。



前置き

さて前回は恥を偲んで筆者の経験談を明らかにしました。我ながら身を引き締めて、身バレ防止に努めたいと思います。

今記事では、筆者が考える”いいラボ”について語っていきたいと思います。ただし大学院に入るといってもさまざまな目的があると思うので、一緒くたに”いいラボ”と定義するのが難しいです。
またいつも筆者は言っていますが、はっきり言って運ゲーです。いいラボだったとしても、波はあります。いいラボのいい時期に入れれば、いい経験となるし、いいラボだったとしても、あまり良くない時期に入れば、トラウマになる可能性もあります。また当然相性もあります。

なので、最悪在籍している先輩が可愛い、イケメンであるとか、そんな理由でもいいと思います笑。前記事にあります筆者の研究室を選んだ理由を見てみてください。人生はそんなもんだと筆者は考えています。
 
まず筆者の言えることは、『興味のある分野』を考えてください。

前の筆者の記事でも言いましたが、無理矢理捻り出しても構いません。それを考えないと、流石に候補となる研究室の数が多すぎます。「今、この分野が熱いってニュースで言っていた」とかそんなノリでもいいと思います。
 
もちろんその研究には最初興味がなかったとしてもやっていくうちに楽しくなっていくこともあります。逆にある研究プロジェクトに興味があってその研究室に入ったとしても、それがすぐに失敗して別のプロジェクトをやらされることなんてザラです。が、まずは興味のある分野から選ぶことをお勧めします。
 
たまに研究内容に興味ないけど、いい学術雑誌に論文を出しているからその研究室に入る、もしくは就活に強いからその研究室に入るという方もいます。

それも正解です。繰り返しになりますが、最初は興味がなかった研究でも、例えば結果が出たりすれば興味も湧くし、楽しくなっていくと思います。
 
次にあなたの大学院に入る目的を考えてみてください。
 
アカデミアで研究者を目指すためでしょうか?
企業就職のためでしょうか?
もうちょっと大学生活を満喫したいとかでしょうか?
それとも親が望んでいるなどでしょうか?
など色々あると思います。
 
しかし残念ながら上記のような目的を、全てを叶える研究室はありません。

ですので今記事では“いいラボ”の定義として、“博士号を取りやすい研究室”と設定します。アカデミア研究者を目指す場合はまた少し違うので、下の条件その1にて補足しています。
筆者の経験から言うと、博士号を目指している学生が適度にいるラボが“研究と教育のバランス”が良く、いいラボであるとと考えるからです。

例えば修士課程の後で就職を目指している人でも、仮に博士に興味が出てきた場合、そのまま博士課程に進学することも、この”いいラボ”では可能です。逆に博士を目指している人が、修士の途中で就職したくなる場合もままありますが、ラボに余裕がある場合は、あまりボスとの関係性も悪くならないでしょう。なので博士課程を目指そうとしたときに論文を出せる余力があるラボを”いいラボ”と規定します。
 

*注意点

今記事での”いいラボ”の基準だと、例えば独立したての新進気鋭の研究室は外れてしまいます。勿論、そのような研究室を否定するつもりはありません。そのような研究室では、みっちりトレーニングしてもらえたり、そこで一発あてることが出来れば、その新進気鋭研究者の右腕になれるチャンスがあったりと、大きなメリットがあります。ここら辺は留学先の研究室選び方講座記事の時にまとめたいと思います。というか例外を言い出したらキリがないので、ご留意ください。

筆者の研究室選びにおける基本スタンスは”運ゲー”です。
もちろんX上でのコメントはお待ちしております。
では存分に保険をかけたところで、どうぞ!!

いいラボの条件その1 業績がコンスタントに出ている

はい出ました!月並みの意見ですね。こういう記事であるあるだと思います。これは特に博士課程まで考えている方向けですが、博士号を取得するには一般的に国際誌に論文を発表しないといけません。ですので業績がコンスタントに出ていると言うことは所属する学生が首尾よく卒業できていることを指します。
 
ただし発表論文が極端にいい場合(CNSや姉妹紙ばかり)は注意が必要です。“研究と教育のバランス“で言うと完全に”研究“に振り切った研究室の可能性があります。勿論こういった研究室が”教育“に重きを置いてないとは言いませんが、学生の一部しか博士号を取れていない可能性もあります。

そもそも”論文がいい”という意味がわからない方はこちらもご覧ください。

簡単にいうと漫画雑誌と同じで、論文を発表する雑誌もたくさんあります。なのでその中でも”格”が存在します。CNSは生命系のジャンプ、サンデー、マガジンにあたるCell, Nature, Scienceの略称です。

話は戻りますが学生の学位より、いい学術雑誌に論文を載せることを第一のミッションにしている研究室も特にSラン大ではあります。この研究室で成功すれば、アカデミアでの道が一気に開けるでしょう。ですのでアカデミア研究者を目指している場合であったり、一流のラボを体験したい方は、門を叩いてみるのをお勧めします。前々回の筆者のエッセイもご一読ください。

ただし、ただ何となく博士課程を取りたいのような方は、こういった研究室を避けた方がいいと思います。また修士課程後に就職を目指している方は、戦力外として研究室側から断られる可能性もあります。
 

いいラボの条件その2 ラボのホームページがよく更新されている

これは眉唾ですが、それなりの理由があると考えられます。業績がコンスタントに出ているラボはどうなるでしょうか?

一般的に教授は業績を出していることを外にアピールしがちです。ですのでラボのホームページがよく更新される可能性が高いです。またそのような場合は、教授が大学院生を求めている可能性が高いです。

かと言って、ラボのホームページがよく更新されていなくとも、業績をコンスタントに出しているラボはあります。その場合は教授の名前をScorpusで検索してみましょう。
Scorpusの使い方は下の記事で紹介していますので、詳細はこちらをどうぞ。

すると教授の論文一覧が出てきますので、それでコンスタント(毎年か少なくとも2年に一回程度)に論文を出しているか確認してください。大事なのは、教授が論文の著書欄の最後(責任著者、ラストオーサー)にいるかどうかが重要です。最後でない場合は、共同研究で名前が載っているだけの可能性もあります。その論文の筆頭著者は、その研究室に所属していない可能性が高いので、その場合その研究室の学生の卒業の要件を満たす論文にならない可能性があります(卒業の根拠論文問題)
オーサーシップに関してはこちらの記事もどうぞ。


いいラボの条件その3 ポスドクがいる

質はピンからキリまでありますが、研究室からしたらポスドクは贅沢品です。筆者のようなポスドク側の意見としては「年収は低い」の一言に尽きますが、ラボからしたら維持費は毎年500万-600万円程度かかると思われます。しかもポスドクを雇ったところで、そのポスドクが結果を出すか出さないかわからないので、かなり高額なガチャガチャです。
またポスドクは、学生に比べてアカデミアでの経験が長いのでラボを見る目があります。ですのでポスドクがいるということは、ある程度いいのラボであると言っていいと思います。
 
ポスドクと言っても、大学院を卒業してそのまま同じ研究室でポスドクとして残っているパターンと、別の研究室で博士号を取得してポスドクとしてわざわざ移動して来ているパターンがあります。
特に後者のポスドクがいる場合は、わざわざ外からポスドクが入ってきているので”業績が出やすい、いいラボ”の可能性が高いです。

そんなことどうやって調べるかって?
ラボメンバーのポスドクの業績をScorpusで調べてください。もしくはその人の名前をGoogleで検索してください。その際、大学、大学院卒業時、どこの大学の所属だったかわかることが多いです。

ただしそこまで調べる必要はないような気もします。初見のポスドクに「ーさんの出身大学はー大学なんですよね?」と言ったら気持ち悪がられるでしょう笑。

研究者の戦闘力を見る”スカウターScorpus”の使い方はこちら


いいラボの条件その4 大学院生が多い

これはいいラボというかある程度成熟したラボという意味を持ちます。それなりの学生がいて、それなりのポスドクがいて、教員がいるのは学生として入る分にはいいラボだと思います。
ただしここで注意点があります。学生が多すぎる場合は、あんまり世話をしてもらえない可能性があります。修士だけでて就職する分には問題ありませんし、むしろ楽しい修士生活を送ることができるでしょう。

筆者の近隣のラボでやたら大所帯だけど、ほとんどは修士課程で就職組で、残った博士もなかなか論文が出ないラボがありました。筆者からするとあんまり学生の管理ができてないと感じました。その研究室は教授が退官より少し前とかでしたので、最後に若者に囲まれてワイワイ過ごしたいだけなのでは?と感じていました。ラボのイベント事では楽しそうでしたが、真面目に博士号を目指していた学生は少し不憫でした。
 
また、繰り返しになりますが教授が独立したてで、ぜんぜん教員、ポスドクがいない成熟していない研究室に入るのは、ポスドクなら狙い目ですが、学生にとっては少しリスクが高いように思います。ハイリスクハイリターンを好んだり、他の人とは違う選択肢がいいぜというような方はこういったラボも断然アリです。まああれです。結局運ゲーです。というか第一に”やりたい分野”を考えて下さい。


いいラボの条件その5 学振DC採用者がいる

大学生の皆さんは”学振DC”という単語を知らないと思います。これは大学院生用に、国が準備している奨学金です。申請した大学院生の約20%が採用されます。これに採用されれば、月に20万円の返済不要なお金を、2-3年にわたってもらえるので大学院の生活に困ることはあまりありません。

データはありませんが、学振DCが全くいない研究室と、そこそこいる研究室には偏りがある印象があります。すなわち特定の研究室の学生が、毎年この奨学金を取得している場合がままあるということです。
ホームページ上のラボメンバーの大学院生の欄に”学振DC”など書いていたら、その研究室は学振DCを輩出している”学生にとってはいいラボ”だといえるでしょう。ただしわざわざ学振DC採用者がいてもそれにホームページ上で触れていない場合もいるのでご注意ください。
学振DCに関しては、こちらの記事もご覧ください。筆者の記事の中でも人気記事です。わざわざ筆者が上の太字で”学生にとっては”と言った理由もわかります。


いいラボの条件その6 留学生がいる

これも条件その3,4で述べたことと被りますが、留学生がいるということは何が考えられるでしょうか?その研究室は、当該分野において世界的に名が知られている可能性があります。
そうでないと今の日本にわざわざ海外から学生は来ませんよね。ですので論文も出やすいと考えられます。ただし留学生比率が多いと、研究室の統治が取れずに、日本人が研究室内の共用の仕事(共通試薬を作ったり)を多くやる可能性もあるので注意しましょう。あいつら(どの国とは言わない)、自分のことしか考えてないからな(実体験)!!


これ以外にも「KAKENで研究室の資金状況を調べろ」とかあるかもしれませんが、大学生はそこまでやらなくても良い気がします。興味がある方は調べてみましょう。

Bラン大を選ぶべきか、Sラン大を選ぶべきか問題

大学のランクですが、学歴ロンダ組の筆者からすると、Sラン大学をお勧めします。Bラン大学でもいい研究室はあります。ただしSラン大学の方が業績で考えると平均値が高いので、ハズレを引きにくいです。また置いている施設も優れています。またアカデミアで将来を考えている方は、将来の人脈を考えてもSラン大学がいいでしょう。また学生の質も一応高いので学ぶこともたくさんあります。ただし本当のSラン大学の大学院では、大学院生の大勢が筆者のような学歴ロンダ組で占められている可能性もあり、その場合はどこまで学べるかは謎です。
 
ただし、Bラン大学の博士課程をでて、そのまま同じ研究室で助教、講師とキャリアアップを目指す場合はキャリアがかなり安定するので、そのルートを目指すのであればそれはありです。Bラン大より下は、教員の流動性が少なく、筆者のポジショントーク的にそれはかなりの問題だと思っています(授業歴なし、指導歴なしNatureホルダーより、授業、実習の経験豊富なPNASホルダーの方がB級私立以下では評価高い説)が、それはまた別の記事で嘆きたいと思います。
ただしBラン大学の研究室によっては、博士号まで責任取れないと断られる可能性もありますのでご注意を。
 

いかがでしたでしょうか?これはあくまで”一般的ないいラボ”の条件だと思います。実際は繰り返しになりますが、自分が興味のある研究室の中から選んでみてください。志さえあれば、多少へんな研究室に入ってしまったとしても、生き残れると思います。

さて次回は後編として、実際にどのような手順で大学院を決めていくか語っていきたいと思います。

皆さんの”こんなラボがいいラボだ”というコメントもお待ちしております。また大変お手数をおかけいたしますが、note,Xともに”いいね”、”フォロー”していただきますと幸いです。

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