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在宅ワークでかえってストレスがたまる人々

在宅ワークは本当に楽なのか?ーー

最近、「通勤&出社に時間と労力を奪われなくなり、楽になった」と、歓迎する人が少なくない在宅ワーク。

でもその一方で、在宅ワークが導入されてからむしろ労働時間が長くなり、ストレスも増えたという声もちらほら聞こえてくる。

どうやらみんなが在宅ワーク化によって恩恵を受けているわけではなく、なかにはかえって不都合を感じている人も多いらしい。

「会社勤めのストレスって、実は満員電車での通勤が大部分を占めていたんじゃないか」

このように、在宅ワーク歓迎派には通勤にともなうストレスが激減した点を挙げる人が多い。

あるいは、

「上司と顔を合わせなくてよくなった」

「会社の人たちと1日中ずっと同じ空間で過ごすのが嫌だった」

など、人間関係のストレスから解放されたことを挙げる人も。


たしかに、満員電車通勤で感じるストレスは臨戦態勢に入った戦闘機のパイロットよりも強いという調査がある。

転職市場が流動的ではなく職場の人間関係が固定化しがちな日本の勤め人にとっては、在宅ワークは主なストレス要因から解放してくれた福音となっているのかもしれない。

しかしその一方で、

「いちいちチャットやメールを打つ手間、その返事を待つ時間、けっきょく電話やビデオ通話をするけど毎回というわけにもいかずで、なにかとロスが積み重なってしまい長時間労働化している」

「在宅ワーク化で業務とプライベートのメリハリがなくなったため、家が安らげる場所ではなくなった」

など、在宅ワーク化したことで以前よりもストレスが増した人もいる。

“あうんの呼吸”という言葉があるけれど、そこまでいかなくても、やはりコミュニケーションというのは実際に顔を合わせて行うことでこそスムーズに行くことは多い。

最近はテレビの情報番組などでもソーシャルディスタンスを意識して、出演者が別室から中継で出演するケースが見られるようになったけど、やはりやり取りにぎこちなさがある。

いま在宅ワーク化した人たちも、出社して対面でコミュニケーションを交わしていたときはなかったタイムロスが生じ、それが蓄積して本来だったら終わっているはずの仕事が終わらないというストレスがあるという。

また、業務が完全オンライン化されたことで、時間帯に関係なくメールやチャットが飛び交うのも、気になって心が休まらないという事態を招いているらしい。

ただでさえウイルス感染防止のため外出できずストレスがたまる一方の状況なのに、心と体を休めるための自宅がもはやリラックスの場ではなくなってしまえば、ストレスはますます蓄積する一方だ。

もしウイルスによる体の健康被害よりも、ストレスによる心の健康被害のほうが差し迫ってしまうとしたら、なんという皮肉だろうか。

日本でなかなか導入が進まなかったのに、コロナ問題のために急に浸透が進んだ在宅ワーク/リモートワーク。

導入されたにもかかわらずこうして新たなストレスを生んでいるということは、これはもう、他の部分も含めてアップデートが必要だということなのかもしれない。

つまり、そもそも日本の会社のシステムや組織のあり方だったりがアップデートされていかないと、改善できない問題がきっとあるということだ。

戦後、高度成長のころには有効に機能してきた体制やシステムはすでに制度疲労を起こしていて、それをいよいよ本気で刷新していかなければならないのだろう。

もしこの未曾有の危機に無理やりポジティブな意味を見出すとしたら、それを真剣に考えることを迫られているという点ではないだろうか。

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