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デザインは地域を変える ※ただし条件がある

昔に比べて世の中に良いデザインが増えてきました。

私がデザインに興味を持ち始めた30年前は都会とローカルのデザイン格差が激しく、その格差を埋めたいと課題意識をもってUターンし地元で起業したデザイナーさんも多かったのではないでしょうか?

それが今ではネットで多彩な事例を見れる事も理由の一つなのか、ローカルの隅々まで気の利いたデザインが増え、以前感じていた格差は全くありません。

又、フリーランスが増えた事も要因なのかなと思います。

独立コストも限りなく少なくて済む時代です。代理店や制作会社に頼むよりも身近に比較的安価で制作してくれるデザイナーが増えました。予算のあまりないローカルの小規模な事業者でもレベルの高いデザインを取り入れる事が容易になったのではないかなと思います。

更にクラウドソーシングも増え依頼する側はより手軽に、安価で、たくさんの選択肢からデザインを選ぶ事が可能になりました。しかしそれは価格競争も呼び経験の浅いフリーランスには厳しい環境も定着してしまったのですがそれは又別の話なので置いておきます。

世の中に良いデザインが増えてきた理由として、昔に比べて劇的にデザインの教育環境が変わった訳ではないだろうから大方そんな所だろうと思います。

さて地域にとって今の状況は望まれる理想の世界なのでしょうか?
この状況でデザインは地域をより良くしていけるのでしょうか?

身近にあれこれできるデザイナーは増えた


良いデザインって何?

さて先程の問い、結論から言うと答えは半分イエス、半分ノーです。

デザインが地域に貢献し、より良くしていくには「見た目に頼った良いデザイン」では限界があります。

そもそも「良いデザイン」とは何でしょうか?
スティーブ・ジョブズはデザインについて下記のように語っています。

人々はデザインをうわべの問題だと思っている。道具箱を手渡され、「見た目を良くしてくれ!」と頼まれるのがデザイナーだと。しかし、私たちの考えるデザインはそうではない。どう見えるか、どう感じられるかではなく、どう機能するかの問題なのだ。

HOW DESIGN MAKES THE WORLD / Scott Berkun著

デザインとはどう機能するかの問題、つまり意図した通りに機能させるための設計が重要で、それが実現していることが「良いデザイン」なのではないかと思います。デザイン自体が目的になるのではなく、課題解決のための手法であるべきなのです。

意図した通りに機能してるかな?


その設計に必要なこと

意図する方向に人々を動かす設計が実現できたもの=良いデザインであるとすると、その設計に必要なことは何でしょうか。

人を動かすにはその人を深く理解する必要がある。その人はどんな人でどんな生活をしていてどんな場所に住んでて何故そのデザインと接触する機会があるのか。そしてその中で何が問題で何を解決しなければいけないのか。

そして事業者側は求めるべき目的を明確に設定し、その目的が達成されるように市場を調べ、競合を調査し、自社の強みを強化して、適正な売場で人々へ届けなければいけない。

それらをアウトプットとして私たちデザイナーはデザインという手法を用いています。まぁ大変。スティーブ・ジョブズの言う通り、見た目の問題では無くなってきました。

さてここまで読んで勘のいい方は気がついてると思います。
そう、「良いデザイン」に必要なのは「マーケティング」なのです。

良いデザインにはマーケティング…?


デザインとマーケティング

マーケティングによってデザインの「機能の設計」が正しく行われている必要があります。そしてきちんと目的通り、届けたい人に正しく届けられ、意図する結果として機能すること、それが「良いデザイン」なのではと思います。マーケティングの定義は下記の通りです。

「顧客・クライアント・パートナー・社会にとって価値あるものを、創り伝え届け交換するための、様々な活動・プロセス・組織」

ウィキペディア(Wikipedia)

「商品やサービスが売れる仕組みをつくること」
と表現されることも多いです。売れる仕組み=機能の設計を行い、それが正しく機能するようにデザインできれば「良いデザイン」であると言えます。

売れる仕組みをつくるのだ


デザインとブランディング

更に長い視点で考えるとそのデザインはブランディングに寄与されるものでなくてはなりません。

売れるデザインが出来たとしても毎回その場しのぎで作られたデザインであるケースによく遭遇します。一つひとつは良いデザイン、でも全体を見るとバラバラでイメージが分散してしまっている。それではブランドとして定着しづらい状況です。全体をまとめるブランドコンセプトが必要でそのコンセプトに沿ってすべての事業活動を行うと一貫性が出てブレにくいものになり、ブランディングにつながっていきます(私はいつも「デザインはコンセプトの下僕であれ」と伝えています)。

ブランディングは単に世界観をつくるという話ではなく、価値を届けたい人に正しく伝える行為です。その「価値」を考えるのも、「届けたい人」を見定めるのも、戦況分析やマーケティングなくしては得られません。

価値は正しく届けられてるかな…


え…全部ひとりでやるの…?

デザイナーとして独立し地域の事業者さんのお役に立ちたい!と思うならこれら全て身につける必要があるし、何ならそれらを全て横断的に考え見ることができるディレクションも必要になってきます。

…いや、無理ですよね。
稀に全てをこなせるスーパーなデザイナーさんも存在します。独立するまでに相当な実績を積み重ね、いつのまにか全てのスキルを身につけたような人です。

でも世の中そんな人ばかりではない。
ではそんな時はどうするのか…?出来る人と組めばいいだけの話なんです。多少のマーケティングスキルは必要だとして、独立したから何でもやらなきゃと無理して得意でない分野に手を出して本来発揮しなければいけないクリエイティブがおろそかになってしまうのは本末転倒です(でも何でもやります!ってクリエイターさん、たまに見るので心配…。

地域で活動するマーケターも増えてきました。ディレクターはまだまだ少ないですがこれからきっと増えてくる。今まで1人でやるしかなかったこれら横断的な仕事は今後案件ごとのチームでこなしていくのが当たり前になっていく世の中になるはずです。そんなチームがローカルのあちこちで立ち上がり、小規模な事業者さんから地場企業まで、又は行政やまちづくり等に関わるプロジェクトをサポートできれば地域はもっともっと良くなると思いませんか?

チームでやれば怖くない!


最後に

デザインは地域を変えていく力があります。
ただし条件としては見た目のデザインの話ではなく、マーケティングやブランディングまで考えられたものであること、それが一人で叶わないなら出来る人とチームを組むことです。

今までチームで仕事したことのない地域のクリエイターさんはぜひ横の繋がりを増やしてほしいです。案外身近に素晴らしい仕事をしている方がいるもんですよ。

そんなチームを全国で増やして本当の意味で「良いデザイン」を地域に増やしていきましょう!


ブランディングって何するの?という方へ


ブランディングに取り組みたいけど具体的に何すればいいの?という方向けに資料作りました。よければご覧ください。

こんな私をサポートしてみようかなと思った心優しいあなた、よければその費用は能登地震の被災者の皆さまの為に使ってあげてください。