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キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(2023)

ディカプリオとデ・ニーロが恐るべき犯罪者に
アメリカの闇に迫るスコセッシ監督の意欲作

『カジノ』(’95年)、『ディパーテッド』(’06年)など、数々の犯罪映画を手がけてきたハリウッドの巨匠マーティン・スコセッシ監督が、本作では、アメリカの恥ずべき血塗られた歴史をつまびらかに描き出しました。

それは、20世紀初頭、傲慢な白人たちがネイティブ・アメリカンであるオセージ族に犯した人種差別極悪非道な犯罪の数々です。

スコセッシ監督にとっては、初の西部劇ともなる本作は、主演にレオナルド・ディカプリオ、共演にはロバート・デ・ニーロというキャストの顔ぶれにも期待が高まる作品です。

【ストーリー】
1920年代、退役軍人のアーネスト(レオナルド・ディカプリオ)が地元の有力者である叔父ウィリアム・“キング”・ヘイル(ロバート・デ・ニーロ)を頼り、オクラホマ州に移り住みます。そこでは、石油発掘による鉱業権を得て裕福になったオセージ族のオイルマネーを狙い、白人の投機家たちによる恐怖支配がおこなわれていました。不正な後見人制度や結婚でオセージ族の財産を得ようとする白人たちがいるなか、オセージ族の人々の不可解な死が相次いで起こります。
そんななか、アーネストはオセージ族のモリー(リリー・グラッドストーン)と恋に落ちます。すると、結婚の意思を固めたアーネストに対し、ウィリアムはモリー一族の財産を得るチャンスと捉え、恐ろしい計画を企てます。

言葉巧みなウィリアムに翻弄され、アーネストがオセージ族連続殺人に巻き込まれていく過程が描かれます。

モリーの母や3人の姉妹たち、そしてモリーまで……。他にも、邪魔な者たちが次々に排除されていきます。アーネストは実行犯ではなく、殺し屋との交渉をしているだけの“使いっぱしり”。そんな単純で自堕落で日和見的なアーネストを、ディカプリオがいやらしさ全開で演じている。

原作は2017年に刊行されたジャーナリスト、ディヴィッド・グランの犯罪ノンフィクション『花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生』。グランが調査した細かい事実を積み重ね、膨大な長編となった原作を丁寧に再現しようたため、映画も長尺になりましたが、実は映画には大胆な脚色が加えられていています。

原作の主人公はオセージ連続殺人の調査に乗り出すFBIの特別捜査官トム・ホワイトで、タイトルにもある通り、FBI発足時の舞台裏を主軸にしたものでした。企画当初は“ヒロイック”なFBIの刑事ドラマとして、ディカプリオがトム・ホワイトを演じる予定だったそうです。

しかし、スコセッシ監督は、この忌まわしい歴史の闇を伝えるために、実際に逮捕されたアーネストを主人公に据え、欲にまみえた白人たちの愚行と裏切りのドラマを見事なまでに描き出しました。ディカプリオも自らアーネストを演じることを申し出たといいます。

トム・ホワイト(ジェシー・プレモンス)率いるFBIが捜査に乗り出した映画後半では、FBI、アーネスト、そしてウィリアムら3つ巴のスリリングな心理戦が繰り広げられています。

そこでは、やはり不気味なウィリアムを生み出したデ・ニーロの圧倒的な存在感にうならされます。

上映時間は3時間26分。全編、殺戮が繰り返される激しい物語ですが、徹底的に悪者を描き、悪者へ転じることへの恐怖をまざまざと見せつけるのは、人が悪の道へそれないための戒めにもなるはずです。

映画を通して、正義を追求するスコセッシ監督の渾身の一作といえるでしょう。

第74回ベルリン国際映画祭では、スコセッシ監督が金熊賞名誉賞を受賞。3月10日に発表される米アカデミー賞では、作品賞のほか全10部門にノミネートされています。
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【『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』がノミネート凱旋上映】
3月1日(金) ~3月14日(木)まで、全国10館(2D字幕版)で公開されます。

TOHOシネマズ すすきの、TOHOシネマズ 日比谷、TOHOシネマズ 日本橋、TOHOシネマズ 六本木ヒルズ、TOHOシネマズ 新宿、グランドシネマサンシャイン 池袋、ミッドランドスクエア シネマ、TOHOシネマズ 梅田、TOHOシネマズ なんば、ユナイテッド・シネマキャナルシティ13

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