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ザ・ホエール(2022)

苦悩を超えて、演技派として復活した
ブレンダン・フレイザーの熱演は必見

アクションアドベンチャー映画『ハムナプトラ』('99~’08年)シリーズのブレンダン・フレイザーが体重272kgの中年男性チャーリーに扮し、2023年に米アカデミー賞主演男優賞に輝いた作品です。

自らの過ちで愛する人々を失った孤独な主人公が、自らの命を削って見つけた、生きる上で大切なこととは? 壮絶な人間ドラマが幕を開けます。

【ストーリー】
病的肥満で、体重272kgのチャーリー(ブレンダン・フレイザー)はオンラインで英語教師をしていますが、その驚くべき外見を隠すため、いつもカメラはオフにしています。
身体中のぜい肉が幾重にもたるみ、もはや一人では立ち上げることもできず、日がなソファの上に寝そべるチャーリーの姿はまさに陸に打ち上げられた瀕死の“クジラ”のようです。
醜い姿へと変わり果て、血圧は異常なレベルになり、いつ命を落としてもおかしくない状態にもかかわらず、チャーリーは異常なほどの過食を続けます。やがて、そうせざるを得ないほど、辛く、哀しいチャーリーの過去が徐々に明らかになります。

チャーリーを含め、主な登場人物はわずか5人。チャーリーの身体を心配し、世話をする看護師のリズ(ホン・チャウ)、布教活動のためにチャーリーの家を訪れたニューライフ教会の若い宣教師トーマス(タイ・シンプキンス)、8年前に離婚したチャーリーの元妻メアリー(サマンサ・モートン)、そして、離婚以来、疎遠になった高校生の娘エリー(セイディー・シンク)。誰もが愛する人へのわだかまりを心に抱え、苦悩しています。

チャーリーの悲惨な生活が中心となる展開は、全編、暗く、やるせない雰囲気に包まれますが、描かれるのは崇高な愛と赦しの物語です。

人をひたむきに信じ、愛することの難しさと尊さをチャーリーが無様な姿をさらして伝えるクライマックスシーンは圧倒的な迫力を持って、胸に迫ります。

特殊メイクやファットスーツ、デジタル技術などを駆使して、驚異の超肥満体となったフレイザーは、自らを罰するかのような行為に至るチャーリーの複雑な心情を見事に表現。物理的に不自由な身体をものともせず、全身全霊を注いだかのような渾身の演技は心を揺さぶり、高い評価もうなずけます。

ハリウッドでの理不尽な扱いから心身の不調をきたし、長らく表舞台から遠ざかっていたフレイザーが、最高の形で復帰できたのは本当に喜ばしいです。

監督は『レスラー』(‘08年)でヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を受賞したダーレン・アロノフスキー。『レスラー』でのミッキー・ローク、『ブラック・スワン』(’10年)でのナタリー・ポートマンに続き、主演俳優の力を大いに引き出した演出手腕にうならされます。

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【米アカデミー賞のことなら、こちら👇をどうぞ】

今年は3月11日(日本時間)午前中より発表!
日本映画は3作品ノミネートされています。

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【ブレンダン・フレイザーの出演作なら、こちら👇もどうぞ】

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