【精神病理】愛着障害について

アメリカ精神医学会が発行しているDSM-5の中だけでも精神疾患はたくさんの種類があるのね。

もちろん社会的に有名で皆が知っているようなうつ病や不安障害、統合失調症から、そんなに知られていない『溜め込み症 (hoarding disorder)』や『抜毛癖 (trichotillomania)』みたいなものまで挙げるとキリがないのね。

なんだけど、そんな精神疾患の中でも、それらの根幹にあるなって思ってるものが愛着障害なのね。

愛着障害っていうのは、めちゃくちゃ簡単にいうと、愛着が正常に形成されないことによってうつ病や不安障害、発達障害、依存症などの障害を発症させたり、家庭の崩壊や虐待、犯罪などの社会的な問題行動を引き起こすことを言うんだ。

そして、DSM-5では『反応性愛着障害』と『脱抑制性対人交流障害』の二つが取り上げられているんだ。

『反応性愛着障害』は引きこもった行動が特徴的で交流を最小限にしようとする障害で、逆に『脱抑制性対人交流障害』は過剰に見知らぬ人に交流を求める障害のことなんだ。

で、この二つもソウだし、他のもそうなんだけど、ざっくりした定義だけ聞くと、『え、それが障害なん?』って思っちゃうものが多いんだよ、精神疾患って。

だけど、それが過剰になりすぎて生活や人間関係に支障が出てきたら、それは『異常』だとして対処しなきゃいけないってなっちゃうのね。

愛着障害もその一つなんだ。

そして、愛着障害は、人間の心には必ず必要な『愛着』という絆や信頼関係のようなものがないことによって引き起こされるわけで、さらにそれだけではなく、うつ病や発達障害、薬物依存、非行などの社会的な問題も愛着と関わっているんだ。

そういう意味で、僕は精神病理の根幹には『愛着』の問題が潜んでいると思っているんだ。

しかし、厄介なことに、愛着が十分に形成されていない人の方が多いように思う。

愛着の形には4つのパターンがあって、それを大きく二つに分けると『安定型』と『不安定型』に分けられるのね。

そして、統計上、『安定型』が60%を占めていると言われているんだけど、多分そんなことないと思うんだよね。

もっと『不安定型』の方が多いんじゃないかなと思う。

もし安定型だったとしても、完全に綺麗な形にはなかなかならないだろう。

どこか欠けていたり歪んでいたりするものだと思うんだよね。

僕も多分安定型ではない。そもそも3歳から父子家庭で、それまでも母親は理不尽にかなり厳しかったみたいだから、僕はその時の記憶はほとんどないんだけど、母親に対しての恐怖心だけは今になっても取れないんだ。

もちろん僕よりももっと悲惨な親子関係や家庭環境の中で育ってきた人はいるだろう。

例えば、虐待やネグレクト、最近で言うと、毒親という言葉がかなり流行している。

さらには『ヤングケアラー』も増えているみたいで、この前、塾で高校生の英語の過去問を解説していたら『ヤングケアラー』がテーマの長文が出てきて驚いたんだ。

入試の長文のテーマにまでなってるんだってね。

ちなみにヤングケアラーってのは、母親が仕事で忙しかったりネグレクトだったりするせいで、子供が親の代わりに兄弟の世話をしたり祖父母の介護をしなくちゃいけない状態のことね。

そのせいで、子供らしい関わりができなかったり、甘えることができなくなったり、それだけでなく友達と遊ぶ時間や勉強をする時間も奪われてしまうとして、かなり問題視されているんだ。

そして、もちろんそのような環境は子供達の心もだんだんと蝕んでいく。

『不安定型』の愛着を形成した人の特徴としては、感情のコントロールができなかったり、嫌われることを過度に恐れて自分を殺して周りに合わせてしまったり、白黒思考が強くなったりとさまざまなんだ。

一応、愛着障害の症状の一例を列挙しておくね。

ちょっとしたことで傷つきやすい
怒ると建設的な話し合いができない
過去の失敗や恐怖をいつまでも引きずる
「好き」か「嫌い」か、「ある」か「ない」かの2択しかない
折り合いをつけることができない
養育者との関係が悪い
人との適切な距離感がわからない
恋人や配偶者、自分の子どもの愛し方がわからない
自分の存在価値がわからなくなる etc.

大人の愛着障害とは?症状や特徴、原因、治療法(BRAIN CLINIC)

身に覚えのある人もたくさんいるはずなんだけど、まさかそれが子供の頃の母親との関係によるものだと考える人は少ないと思うんだ。

ただ、自分の性格の問題だと考える人も多いんだけど、実は違うのかもしれない。

そして、逆に愛着が安定して形成されるとどんなメリットがあるのかというと、まず一つ目は『人を信頼できるようになる』と言うことである。

『それがメリットなの?』と思う人もいるかもしれないが、意外と他人を信頼できない人は多いし、僕もその一人なんだ。

二つ目は、コミュニケーション能力が高まることだ。

親から十分な愛情を受けずに育つと、『親から愛されないんだから誰からも愛されない』と信じ込んで人と関わるのが怖くなってしまう。

すると、上手なコミュニケーションなんて取れないんだ。

そして3つ目が『心理的安全性』だ。最近はビジネスの現場でも人気の概念だから聞いたことがある人もいるかもしれないけれど、一番最初子供が心理的安全性を構築するのは母親との関係においてなんだ。

そして、心に安全性を構築することによってさまざまなことに挑戦したり、自分をオープンにして社会に挑むことができるようになるんだ。

つまり、愛着は人間の精神的な成長の根幹にあって、ほぼ全ての精神病理の基盤になるものなんじゃないかと考えているんだ。

愛着障害について。


最後まで読んでいただきありがとうございました。


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