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「レコメンド」がすべて機械に置き換わったりしない理由

「リッチマン・プアウーマン」というドラマをご存知でしょうか?

スタートアップ界隈にいる30代であれば知らない人はいないのではないかと思うくらい、月9の恋愛ドラマであるにも関わらず男性人気の高い作品でした。

億万長者のベンチャー社長・日向徹の言動がいちいちかっこよく、このドラマを見てベンチャーに入ったり起業を目指した人も一定数いるのではないかと思います。

仕事に向き合う姿勢や哲学などの名言が多い「リッチマン・プアウーマン」ですが、私が最近よく思い出すのはNYスペシャルで主人公の真琴が放ったセリフです。

「誰かに洋服を選んでもらうのって、すごい嬉しいの!それが、自分が思っていた以上に似合ってたらもっと嬉しいの。自分でも気付かなかった自分のいいところ、この人は分かっててくれてたんだって思うから。それで新しい自分を発見するから。」

このセリフは、真琴が日向とささいなことで喧嘩し、家から出ていくシーンでの一言です。

真琴が結婚式用の洋服を日向と買い物に行った時、こだわりの強い日向はどれも「ダメだ。全然似合わない。」と言って次々と真琴に試着させます。

だんだんと疲れてきた真琴が、自分では絶対に選ばないようなピンクのセットアップを渡されてしぶしぶ試着室から出てくると、はじめて日向の目の色が変わり
悪くない。それにしろ。
と不器用な日向らしい「OK」がでます。

「え〜、でも私普段こういうの着ないし…」と言いつつも嬉しそうな真琴の表情が、とても印象的なシーンでした。

このシーンを見た上で冒頭のセリフを聞いた時、私はここに「レコメンド」の本質が詰まっている、と思ったのです。

私たちはすでに購入履歴やアクセス履歴から機械によって自動的に商品やサービスをおすすめされています。

さらに今後はAIによってより精度の高いレコメンドが行われ、もしかしたら私たちは買い物のほとんどをレコメンドに頼るようになるのかもしれません。

しかし、レコメンドは単に効率よく自分に合うものを見つけることだけではなく、「コミュニケーション」の意味合いも強いのではないか、つまり購買に人が介在する価値は「誰からのレコメンドか」がより大きくなっていくのではないかと思うのです。

冒頭で紹介した買い物のシーンは特にわかりやすく、普段の生活の中でも身近な人に「どっちがいいかな?」と聞くことはよくあります。

多くの場合、これは色や形を科学的に分析して「正解」がほしいという意味ではなく、「あなたの目から見た私が知りたい」というコミュニケ−ションのための質問です。

つまり、どんな答えが返ってくるかよりも、誰が答えてくれるかの方がよっぽど大事なことなのです。

また、昔mixiにあった「紹介文(友人から他己紹介を書いてもらう仕組み)」やアメリカのメガネブランドWarby Parkerの「#warbyhometryon(4つの試着姿を「どれが似合う?」と投稿してもらう※参考記事)」のように、友人から自分がどう見えているかを知る機会は多くの人の関心を誘います。

さらに、SNSで診断モノをシェアするのも似た心理でしょう。

診断自体は機械で自動的に算出されますが、私たちはその結果をシェアすることで友人に「この診断、合ってるよね?」と問いかけ、自分がどう見えているかを確認しているのです。

私たちはいつだって自分の半径数メートルへの関心が一番強く、特に自分自身への評価を聞くのが大好きな生き物です。

だからこそ、今後モノを売る上で重要なのは、そういった近しい人からのレコメンドをどう買い物に生かすかなのではないでしょうか。

そう考えていくと、これから販売員という仕事に求められていくのは、プロとしての知識より「人として好かれること」なのかもしれません。

もちろん最低限の知識は必要ですが、似合うカラーや形を診断することも、お客様が好きなブランドを覚えておくことも、これまで「プロの仕事」と言われてきたことのほとんどは機械に勝てなくなっていきます。

であれば、無理に戦おうとするのではなく、機械をうまく活用して、人は人にしかできないことに注力すべきです。

「正解」は機械が教えてくれる時代、人が提供できるのは「楽しい時間」です。

つい話しに行きたくなる、応援したくなる、そんな合理性を超えた体験こそが、これからの接客に求められるものなのではないでしょうか。

私たちが買うものを選ぶとき、「似合うかどうか(=損得)」ではなく、ただ純粋に「好きかどうか」で動くこともあるということを、忘れてはいけないと思うのです。

そんなことを考えていたとき、以前書いた「『売れる販売員』のルールが変わるとき」という記事を思い出しました。

一緒にカウンターイベントをやったEVERY DENIMさんは、まさにたくさんの人の「好き」を集めているブランド。

モノのよさはもちろんですが、ただただ2人のことが好きで、応援したくて足を運んでくださる人が多かったのが、印象的だったことを覚えています。

そしてEVERY DENIMさんたちは、きっと自分たちが作ったデニム以外にも2人の目利きで選んだものであれば売る力があるはずで、それはつまり彼らがブランドであり、同時にメディアでもあるということだと思います。

ブランドとメディアの境目がなくなっていく時代に」という記事にも書いた通り、今後ブランドとメディアはどんどん区分けが曖昧になり、EVERY DENIMのようなブランドこそが成長していく時代だと思います。

これからはますます「何を買うか」より「誰から買うか」が大切になる時代だから。

私がプロデューサーを務めているcocoroneも、そんなメディアにして行きたいなと思いながら日々精進しています。

P.S.今日の表紙写真は、たまたまみんなのギャラリーで見つけたEVERY DENIMさんの写真。もりぞーさんのnoteにアップされていました。やはり愛されてるブランドはすごいなあ。

★noteの記事にする前のネタを、Twitterでつぶやいたりしています。


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