それぞれ誉れ

ちょっとだけ波に触れたそのひとは、海の色を青だという。

仄暗さと息苦しさに包まれる水深200メートルの先は、水越しの太陽と、酸素のない世界を喜ぶひとがいた。

触れられないものを眺める、触れられないもののそばにいる、触れそうで触れられないものを追う。

知らぬ間に憶えた海の色は、きょうも心地よく、ここにいることを許されたぼくだけの色。


この世に絶望するくらいなら考えるのをやめて自分を愛せ