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番外編⑧:「地頭を鍛えるフェルミ推定ノート」を読んで、大切そうなことをまとめてみた

今回は、地頭を鍛えるフェルミ推定ノート(東大ケーススタディ研究会)を読んだので、自分にとって大切そうなことをメモしてみました。

この本は、何年か前に「市場規模の見積もり」を考えるときにはじめて読み、とても面白いなと思った記憶があります。今回、改めて読んでみて、自分にとって大切そうなことをメモしてみました。
もし、自分のまとめ(メモ)をみて「この本を読んでみようかな」と思ってくれる人がいたら嬉しいです。
※ このnoteのまとめ(メモ)には、自分の解釈が多分に含まれております。


フェルミ推定の基本体系

フェルミ推定の考え方は、下図のように分類できる。

フェルミ推定の基本体系

ストックとフロー

  • ストック
    あるモノの一時点における存在量のこと。例えば、「日本における自動車の数」はストックの推定に該当する。

  • フロー
    あるモノの一定期間における変化量のこと。例えば、「日本における自動車の市場規模(年間)」はフローの推定に該当する。

所有アプローチと存在アプローチ

  • 所有アプローチ
    「誰が持っているのか?」という問いから思考がはじまる。
    「誰が」という点に関しては「個人」「世帯」「法人」などの切り口がある。

  • 存在アプローチ
    「どこにあるのか?」という問いから思考がはじまる。
    「どこ」という点に関しては「面積」「ユニット(都道府県など)」
     などの切り口がある。

マクロ売上推定とミクロ売上推定

  • マクロ売上推定
    市場規模推定のこと。
    需要サイド(買う側)から推定するとよい。

  • ミクロ売上推定
    1店舗ないし複数店舗の売上推定のこと。
    供給サイド(売る側)から推定するとよい。

フェルミ推定の基本5ステップ

フェルミ推定は、基本的には下記5ステップでおこなう。
この5ステップについて、ここでは「日本にカバンはいくつあるか?」という問題を例に考えてみる

  1. 前提確認
    このステップでは、カバンをどのように定義するのか、どのようなカバンを数えるのかという「範囲の限定」をおこなう。

  2. アプローチ設定
    このステップでは、基本的な計算式を設定する。
    例えば、日本におけるカバンの数 = 日本の人口 x カバンの平均保有数
    のようなイメージ。

  3. モデル化
    このステップでは、2で作った大まかな計算式のパラメータを細分化する。
    例えば、上式の「日本の人口」を世代・性別で分けて、各セグメントでのカバンの平均保有数を見積もっていく(仮定していく)イメージ。

  4. 計算実行
    このステップでは、3でモデル化した式を計算実行する。

  5. 現実性検証
    フェルミ推定で算出した結果が、参考情報(一般的な感覚値や類似情報など)と比較して、的外れではないことを確認する。

なお、フェルミ推定で大切なことは「それなりに納得感あるロジックで、大まかな数値を瞬時に見積もること」である。
例えば、市場規模にはTAM、SAM、SOMがあるが、これらの数値を大まかに把握する際に、フェルミ推定は役に立つ。

以下、書籍内容からは脱線しますが、参考情報として記載
・TAM(Total Addressable Market)
 トップダウンで市場規模から推計することが多い。最終的な企業価値の目安
 として考え、エクイティ・ストーリーを描く際などに使う。
・SAM(Serviceable Available Market)
 ボトムアップでフェルミ推定によって見積もることが多い。
 TAMに占める割合としても妥当な数値であるか確認する。
・SOM(Serviceable Obtainable Market)
 SAM x 目標シェアで見積もることが多い。
 売上目標としても妥当な数値であるか確認する。

練習問題を解いてみる

上記の5ステップを使って、フェルミ推定の練習問題をいくつか解いてみます。

日本に自動車は何台あるのか?

前提確認
自動車には「家庭用(世帯所有)」と「業務用(法人所有)」がある。
ここでは、「家庭用(世帯所有)」に限定して考える。

アプローチ設定
日本における自動車の数は、下記式で推定できる。
世帯数 x 世帯における自動車平均所有率 x 1世帯あたりの平均所有台数

モデル化
全世帯をセグメントに分けて考えてみる。
まず、公共交通機関の整備度合いによって車の必要性は変わってきそうなので、「都会/田舎」という切り口が良さそうである。また、車は安いものではないので、所有率、所有台数は「世帯年収」に依存すると考える。さらに、「世帯年収は、世帯主の年齢に依存する」と考えてみる。

都会・田舎の自動車保有状況(仮定)

日本の人口は人口ピラミッド(下図)で捉え、都会と田舎の人口比は1:1とする。

日本の人口ピラミッド

世帯人数は田舎の方が多いと考え、都会の平均世帯人数を2.5人、田舎の平均世帯人数を3.5人と仮定して、都会・田舎の世帯数を求める。

都会:6000万人 ÷ 2.5 = 2400万世帯
田舎:6000万人 ÷ 3.5 = 1700万世帯

そして、都会の方が若年世帯数が多いと仮定して、年齢別の世帯割合を下記のように仮定する。

世帯主年齢の分布(仮定)

計算実行
上記の仮定をもとに計算実行すると、下記のようになる。

  • 都会:約2100万台

  • 田舎:約3500万台

  • 合計:約5600万台

現実性検証
自動車検査登録情報協会(財)によると、令和5年の登録自家用車台数は約8000万台であった。推定結果が実際の数字よりも小さくなってしまった(都会の所有率の仮定が低すぎたかもしれない)

日本に郵便ポストはいくつあるのか?

前提確認
日本の各地に設けられている郵便ポスト数を推定する。

アプローチ設定
日本の郵便ポスト数は、下記式で推定できる。
日本の面積 ÷ ポスト一つあたりの面積

モデル化
日本の面積約38万㎢のうち、3/4を山地、1/4を平地と仮定する。
さらに、山地のうち無人地域が1/3、有人地域が2/3と仮定する。

また、山地(有人地域)では4㎢にポストが1つ、平地では1㎢にポストが1つあると仮定する。

モデル化の仮定

計算実行
上記の仮定をもとに計算実行すると、日本の郵便ポスト数は14万本となる。

現実性検証
総務省のHPによると、日本の郵便ポスト数は約18万本であった。
今回の推定結果は、悪くない数値であると考える。

以上です。




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