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読書日記 『100万分の1回のねこ』

『100万回生きたねこ』のトリビュート短編集、『100万分の1回のねこ』。
13人の作家さんが1編ずつ書いた、13のお話が収録されている本だ。
「トリビュート」とは、“賞賛・感謝のあかしとしてささげるもの”である。

小さい頃に読んだきりであった、『100万回生きたねこ』。
この本に影響されて、猫が生きかえらなくなった訳に気づいてしまった。
だれも好きにならなければ生き返るなんて、なんて寂しいのだろう。

13人の13編ということで様々なお話があり、様々な人や猫が登場する。
その命の中には、やはり、次の生を望みながら死んでいく者がいくつか見受けられた。

もしも、誰も好きにならなければもう一度、生を得られるのならば、
私が、愛する人に“新たな生を得ないこと”を望むべきなのか、望まないべきなのか。

どちらが正解なのだろうか。
私を愛してほしいという気持ちはもちろんあるが、新たな人生を楽しんでほしいという気持ちもあるし、誰も愛さないで生を終えてほしくないという想いもある。

また、各作家さんは『100万回生きたねこ』を読んで作品を書いている。
作家と読者の関係だけでなく、互いに絵本の読者であるという関係が面白く感じる。
短編小説の前には、少しだけ作家さんの絵本についての想いらしきものが綴られている。
よく、読ませていただいているあの方は、こういうふうに絵本を感じていたのかと、思うこともできた。表現が私には難しく、理解できない部分もあったけれど。

この本を読み終えて、私はものすごく久しぶりに『100万回生きたねこ』を読んだ。
絵本の中の100万回生きたネコは、最期の生で白いネコを好きになって、永遠の眠りについた。
白いネコは永遠の眠りについたのだろうか。それとも、新しい生を授かったのだろうか。
私は、白いネコにどちらの結果を望むべきなのだろうか。

〈内容〉

1977年に刊行された佐野洋子の名作絵本『100万回生きたねこ』に捧げる短編集。人気作家13人による短編小説や詩のアンソロジー。
著者は、江國香織、岩瀬成子、くどうなおこ、井上荒野、角田光代、町田康、今江祥智、唯野未歩子、山田詠美、綿矢りさ、川上弘美、広瀬弦、谷川俊太郎。
(講談社BOOK倶楽部 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000189343 より)

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