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ママとクリエーターの狭間で。

子どもが産まれてからというもの、外に出るといってもだいたいが会社と保育園とスーパーと家の往復で、なかなか新しい情報をインプットする場に身を置くのが難しい。

もちろん子育てにはこれまでとは違ったヨロコビがたくさんあるんだけど、仕事を趣味の延長でやってるような自分にとっては、トレンドを理解してそれを先行く提案をするのが本来の仕事なのに、まぁそれが実に歯がゆくて仕方ないのだ。馬車馬のような20代に蓄積した情報遺産と経験則でなんとか今はえらそうな顔してるけど、こんなに時代が急激に変化してるのについていけてない自分に常に焦燥感を感じている。

タピオカはコンビニのしか飲んだことがないし、クッションファンデは先週はじめてデビューした。パンケーキもカヌレもエスプーマもチーズティーにも全部乗り遅れた。いまだにチームラボも未経験。時代はコーヒーよりお茶らしいし、もはやピアスよりイヤリングの方が主流なんだって。へー、もうリアル浦島太郎だわ。

6年前の自分が今の自分に会ったらまずこう言うだろう。「え、知らないの!ヤバくない?」

 ヤバイよねぇ、マジで。

それまでは、新しい大型施設のオープン日には必ず視察に行ってたし、気になる新商品イベントや人気の飲食店には率先して足を運んでいたし、年に2回は海外格安旅行で異文化交流できたし、普段から本屋やギャラリー、美術館で新しいものいっぱい吸収できた。

ひとつの仕事を突き詰めて突き詰めて朝までかかっても自由、早く終わらせて朝までカラオケでオールするのも自由。ただ時間をめいっぱい自分のためだけに使えたころが、どれだけ贅沢で幸せなことか!

て、なんでこんな話を急にしてるかって、この前急に営業同行しなきゃいけない案件があって、自分という生き物の老朽化に驚愕したから。太ってジャケット閉まらないし、足もとスニーカーソックスだし、ノーアクセだし、髪アレンジするにもメイク直しするにも、なんも持ってない。もうだめだ、ビジネスにおいて人は見た目が9割。自分すらクリエイトできてないのに、なにがクリエーターなのかと。まずセルフプロデュースしろ、と。

とりあえずできることからと、何カ月かぶりに寝かしつけから復活し、せっせとネイルを塗ったら、乾く前に寝室から「おかあさーん!」とお呼び出し。手と足を微妙にベッドから浮かせた、さながら打ち上げられたアザラシのような格好でようやく寝かしつけ、何やってんだろなと悲しくなる。でもって夜には、餃子は手でこねたい派のため、わざわざ塗ったネイルを取る。いやホントなにやってんだ。アホなのか。それだけじゃない。久しぶりに出してきた入浴剤もマッサージオイルも子どもたちには「くさい!」と不評でお蔵入り。棚を掃除してたら出てきた昔の付けまつ毛のストックは、子どもたちのおもちゃにされ、見るも無残なゲジゲジのような姿で散乱している。もうつけることもないだろうから、いいんだけど。

あぁ、この業界にしがみついてがんばってる世の中のお母さんは、みんなこんなしがらみの中で生きてるんですか。朝のドタバタも昨日のモヤモヤも乗り越えて、何事もなかったかのように、がんばってるんですか。水面下で足だけ死にものぐるいで動かしているアヒルのように。

誰も見てないよ、どうでもいいやと投げそうになりながら、それでも今日もわたしは通勤電車の中でイヤリングをつける。子どもたちに引っ張られないように、片方だけなくさぬように。

だれかこの気持ち、共有出来る人はいるかなぁ。

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