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青春の思い出は色あせない。3


私たちは夜の10時頃から山を下り始めた。

みんな少し迷ったけど、
一緒にコンビニ探しに行くことにしたのだ。

バスで登って来た道を下って行けば、
コンビニの1軒ぐらいあるだろう、
と私たちは簡単に考えていた。

私たちは夜の静かなアスファルトのまっすぐな道を意気揚々と歩きだした。
等間隔に光る街灯の明かりが異様に白く光っていた、
すぐにコンビニの淡い看板の光が見えるだろうと予測していたけど、
緩やかな下り坂をいくら下ってもコンビニの光は見えて来なかった。

まっすぐな道の先は静かな闇が広がっているだけで、
どこにもコンビニの光は見えなかった。

みんなで道の真ん中を歩いた、
道の端を歩くと森の中なら出てくる何かに、
捕まってしまうかもしれないという恐怖があったからだ。

異様な光景だった、
いつもは車に引かれないように道の端を歩くのが当たり前なのに、
その時は映画の主人公にでもなったように、
みんなで横1列にならんで道を闊歩した。

歩いているので温かいけど、
身体に当たる風は冷たく、
森の中の闇はさらに深くなったような気がしていた。

私たちはひたすら歩いた、
みんなで他愛の無い話しをして、
緩やかなカーブを幾度か曲がり、
ひたすら歩いた。

時計を見るともう11時近かった。

「もう1時間位歩いてるよね・・・
 コンビニ無いんじゃない?もう帰ろう!」

女子の一人の言葉でみんな立ち止まった。

森に囲まれた道の真ん中で輪になり、
このまま進んでもコンビニは無いと言う人と、
ここまで来たらコンビニまで行かないと気がすまないという意見で別れ、
私たちは少し揉めていた。

そこで話しに参加していない男子の一人がフラフラと、
森の中を覗いていて、急に森の中に入って行った。

そして森から出て来ると、汚い自転車を引きずっていた!

「それどうしたの?」

「そこに落ちてた!」

「それ乗れるの?」

自転車のサドルの汚れを手ではたき乗って見ると、
カクカク言うけど自転車は動いた。

「俺が少し先までこれに乗って見てくるよ。」

そう言って彼は一人カクカクしながら道を下り、
少し先にある緩やかなカーブを曲がって消えて行った。

あっと言う間の出来事でみんなは、
何も言わないでただ彼を見送った。

一人の男子が道の真ん中で座りこんだ、
するとみんなもその場で座りこんだ、
歩いている時は感じなかったが、
歩みを止めたら一気に疲れが押し寄せて来た。

アスファルトは少し温かかった。
きっと私の身体が冷たくなっていたのでそう感じたのだ。

夜の森、
秘密の外出、
異性との交流、
私の中に色々な感情が浮かんで来た。

私は少しハイになっていたのだと思う。

まもなくしてカクカク自転車の彼が帰って来た。

「だいぶ先まで何も無かったよ!」

みんな落胆して重い身体をゆっくり起こして、
立ち上がり、
「さて、帰るか!」

そう言ってみんなで今まで下って来た道を上り始めた。

つづく

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