見出し画像

ベンゾジアゼピンの減薬方法_15_0.1%や0.01%の減薬に意味なんてあるのか?!~体はごく少量のベンゾジアゼピン量の変化を感知できるが、減薬方法は単純に考えてOK~

(この記事の内容は私個人の知識・経験・得られた情報に基づく考察であり、減薬をされる方全員にとっての正解を示しているものではありません。お一人お一人にとって最善の方法を見つけるための参考としてご覧いただけましたら幸いです。)

一般論として、経口摂取したお薬の吸収は、その日その日の胃腸の状態や食事の種類などによって大きく影響を受けていて、毎日同じお薬を同じ量摂取していても、実際に体内に吸収されている薬剤の量は日によって変動があると考えられます。
さらに、お薬は錠剤ごとにわずかなバラつきがあり、毎日同じ錠剤を一錠内服したとしても、完全に同じ量の有効成分を摂取できているわけではありません。
また、私が内服していたような短時間型のベンゾジアゼピンの場合、内服ごとに血中濃度が0から100になり、100から0になるような大きな変動があります。

ベンゾジアゼピンを減量すると全身に様々な症状が出るということに私がはっきり気付いたのは、10%程度の減薬をして寝たきりのような状態になった時でした。
しかし、私にはたまたま上記のような知識が少しあったため、薬の内服量の1%や2%の違いに意味があるなどと考えたことも無く、10%ですら誤差の範囲内のように感じていて、少なくともそんなに大きな離脱症状の原因になるとは思っていませんでした。
このため、当初は、自分自身が実際に経験しているに事にも関わらず、その事実を頭では理解できず、受け入れるのに時間がかかりました。

その後、インターネットで調べてみると、たくさんの方が私と同じように少量の減薬で強い症状を経験されていることが分かり、そういう事もあるのかもしれないと思い始めました。
それでも、何人もの方が0.1%レベルで減薬する事について論じられているのを見た時、まだ頭が付いて行かず、そんな事に意味があるのか??という違和感や疑問を感じました。
そのため、水溶液タイトレーションなどの微量の減薬方法があると知ってからも、自分がそれを行うことに初めは抵抗があり、やってみようと思うまでにさらに時間がかかりました。

結局のところ、10%で寝たきりになったのに1日1%減らして大丈夫なわけが無いよなと考えはじめ・・1日0.1%の減薬を行うことにしたのですが、この1日0.1%の減薬で再び寝たきりになり・・1日0.01%の減薬とステイを組み合わせて、1日あたり0.003%から減薬を再開し断薬できたという経緯になります。

ベンゾジアゼピンの水溶液タイトレーションなどについて見聞きした時に、私のように、0.1%や0.01%の減薬なんて意味が無いんじゃないか?気のせいなんじゃないか?思い込みなんじゃないか?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
実際、私だけではなく、私の周囲にはそのような反応をする人がとても多かったです。
しかし、そう思っていた私自身が、10%や0.1%で強い離脱症状が出て、次もきっと激しい症状が出るに違いないと怯えまくって減らした0.01%ではそこまで強い症状が出ずに減薬・断薬できた事から、これは気のせいや思い込みでは無いと自分で証明してしまいました。
この私の経験から下記の二つのことが言えると思います。


1. 体にはごく少量のベンゾジアゼピンの量の変化を感知する仕組みがある

上記のように、減薬を始めた当初、私の体は、1日あたり約0.1%の薬の量の変化に激しく反応し、0.01%には大きな反応はしませんでした。この0.1%と0.01%の間に重篤な離脱症状が出現する閾値があったと思われます。(ちなみに、最終的には0.3%/日程度まで大丈夫になったので、この閾値は変動するものと思われますが、この点については、また機会があれば別に書きたいと思います。)
上記のように、そんな0.1%と0.01%のような、有るのか無いのか分からないような差に何の意味があるんだ!?と私は思ったわけですが、体にとっては実際に意味のある量だったわけです。

考えてみれば、体が微量の物質に大きな反応を起こす仕組みはすでに知られていて、例えばアレルギーという病気がありますが、これは免疫系が非常に微量な原因物質に反応し、時には命にかかわるような強い症状を起こす病気です。
食物アレルギーの場合、例えば、うどん(原料は小麦)をゆでる時に出た湯気を小麦アレルギーの人が吸い込んだだけで、救急車で搬送されるほどのアレルギー反応が出る場合があると聞きます。
こういった反応はとても個人差が大きく、そもそもアレルギーを発症していない人はどれだけ沢山その物質を食べても何の症状も起こらないわけですし、アレルギーを持っていても少量なら食べられるという人もいます。一方で、上記のように、食べてすらいないのに、吸い込んだだけで強いアレルギー反応が起きる人もいます。

ベンゾジアゼピンに対する過敏性や離脱症状の出現は、おそらく免疫とは別の神経の仕組みが関わっていると思いますが、免疫と同様に神経もとても繊細で複雑な仕組みを持っていますので、神経系が微量の物質を感知し、それに対して鋭敏に反応する仕組みを備えていて、その反応に大きな個体差が存在していてもおかしくはないのだろうなと今は思います。

ここで疑問が残るのは、そのような小さな変化すら感知する仕組みがあるにも関わらず、短時間型のベンゾジアゼピン内服時に毎回起こる急激で大きな血中濃度の変化による離脱症状よりも、少量ずつの減薬による小さな変化で起きる離脱症状の方が劇的に大きくなるのは何故かという点です。

これについて私が思いつくのは、以下の二つのような可能性です。
一つは、短時間型のベンゾジアゼピンも体に蓄積するという考え方です。短時間型は血中半減期が短いことから、一般的に体内に蓄積しないとされています。しかし実際には、血中から組織中に薬剤が移行することによって血液中から消失しているだけで、組織中に蓄積して平衡を保っており、この組織中の平衡が減薬によって乱れ、その僅かな乱れを体が感知することが大きな離脱症状の原因になっているのかもしれません。
もう一つは、短時間型の薬剤を、実際には短時間で代謝できない人が一定数いるという考え方です。ベンゾジアゼピンを含め多くの薬剤は薬剤代謝酵素という体内の物質によって分解され排泄されます。別の記事にも書いたことがありますが、この酵素の働きには大きな個人差があります。短時間型のベンゾジアゼピンは、この酵素によって分解され体に作用しない形になって排泄されるまでの時間が比較的短いので短時間型と呼ばれています。しかし、ベンゾジアゼピンの代謝がゆっくりの人にとっては、短時間型と呼ばれる薬剤であっても長時間にわたって活性のある状態でとどまることになり、体内に蓄積し、飽和したような状態で平衡を保っていて、減薬によってその平衡状態が崩れる可能性があるのではないかと思います。
これらのような機序によって、減薬していない時に日常的に生じている離脱症状よりも強い離脱症状が減薬時に出現するのかもしれないと考えています。

2.ベンゾジアゼピンの減薬は単純に少量ずつ減らすことを考えれば良い


ベンゾジアゼピンに対する過敏性や減薬を考える際に朗報なのは、単純に考えることに意味があるという事です。
上述のように薬物動態や神経の仕組みは複雑です。しかし一方で、減薬は単純でよいのです。

初めに書いたように、ベンゾジアゼピンの薬物動態には様々な因子が関わっているはずです。しかし、私の経験に基づいて考えるならば、減薬方法について検討する際には、薬はこんなふうに作られて、吸収されて、こんなふうに作用するはずだという理屈に囚われる必要はありません。実際にそうなのかは別にしても、便宜上、ベンゾジアゼピンは全ての錠剤が同じ量の有効成分を含んでいて、内服したものが100%吸収されて100%同じ作用をするという前提で考えることが有効でした。
私は当初、胃腸の状態やら錠剤のバラつきやらでお薬の吸収や作用が変動するのに、0.1%の変化も許されないなんていったいどうすればいいんだ!と複雑に考えて悩みました。
しかし結果的には、もっとごく単純に、1%でダメなら0.1%、0.1%でダメなら、0.01%と、より少ない量ずつ減らそうとだけすれば大丈夫だったということです。

もちろんこれは私の場合そうだったということであって、この部分にも個人差があり、吸収や作用が変化すると考える必要のあるケースも否定できません。
また、100%吸収されて100%同じ作用をするというのは、減薬を考える際の便宜上の前提であって、本当に必ずお薬が100%吸収されて100%同じ作用をするということを保証しているわけではありません。
私自身、実際に、食べ物の影響をできる限り避けるため、食事からお薬の内服まで2時間以上あけていました。
また、多くの方が他の薬剤との相互作用を経験されているようでしたが、このことを考慮すると、他のお薬の影響がある場合にはベンゾジアゼピンの吸収・作用・分解などが変化する可能性は高いと思われます。
このため、ベンゾジアゼピンの内服中・減薬中・断薬後の、体内に薬剤が残っている期間のお薬の内服には注意が必要ですし、グレープフルーツなどお薬の代謝に影響を与える食べ物にも注意が必要です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?