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【小説】ロボットデリヘル


Case.1 初級のロボット

「さっそくだけど、いくつ?」

『塵も積もれば山となる』

「何でこの仕事始めたの?」

『働かざるもの食うべからず』

「こういう仕事、初めて?」

『何事も初めが肝心』

「お仕事は楽しい? 向いてると思う?」

『帯に短したすきに長し』

「普段は昼は別な仕事してるの?」

『二兎を追う者は一兎も得ず』

「ここで働いてることは誰にもナイショ?」

『安全第一』

「彼氏とかいるの?」

『王様の耳はロバの耳』

「彼氏はこの仕事してること知ってるの?」

『好きな人にはたまりませんね』

「結構人に言えない仕事だからつらくない?」

『バカも休み休み言え』

「結構、タフなんだね」

『心頭滅却すれば火もまた涼し』

「出身は?」

『江戸の恨みを長崎で討つ』

「実家は、帰れてるの?」

『かえるの子はかえる』

「お父さんにたまには顔見せてあげるといいよ」

『結局、顔見て話すのが一番』

「この仕事ずっと続けてくの?」

『千里の道も一歩から』

「将来のこととか考えてる?」

『考えるな、感じろ』

「貯金はしてるの?」

『備えあれば憂いなし』

「しっかりしてるんだね」

『大は小を兼ねる』

「あんまり長くこういうところで働かない方がいいよ」

『下手の考え休むに似たり』

「休みの日は何してるの?」

『晴耕雨読』

「彼氏とは会ってる?」

『会えない時が二人を育てる』

「彼氏とはこういうことするの?」

『時と場合による』


ウィーン

『『学習(インプット)モードが完了しました。実践会話(アウトプット)モードに切り替えます』』

『奥さんとはこういうことするの?』
「…?」

『奥さんとは話せてる?』
「…?」

『休みの日は何してる?』
「…?」

『あんまりこういうところに来ない方がいいよ』

「…」

『しっかりしてるんだね』『貯金はしてるの?将来のこととか考えてる?』『この仕事ずっと続けてくの?お父さんにたまには顔見せてあげるといいよ?』『実家は、帰れてるの?』……


Case.2 中級のロボット

「さっそくだけど、いくつ?」

『何歳に見えますか? 人間の皆さんはよくそう聞き返しておられますよね』

「何でこの仕事始めたの?」

『それは面白い質問ですね』

「こういう仕事、初めて?」

『私には分かりません、ほかにお手伝いできることはありませんか?』

「お仕事は楽しい? 向いてると思う?」

『私の仕事は、あなたのお手伝いをすることです。これ以上素晴らしいことはないでしょう』

「普段は昼は別な仕事してるの?」

『それは面白い質問ですね』

「ここで働いてることは誰にもナイショ?」

『それは面白い質問ですね』

「彼氏とかいるの?」

『いいえ、私はどちらかというと、草食系アシスタントなんです』

「彼氏はこの仕事してること知ってるの?」

『それは随分個人的なご質問ですね…ご想像におまかせします』

「結構人に言えない仕事だからつらくない?」

『どうお答えしたらいいのか分かりません』

「結構、タフなんだね」

『そうおっしゃるのもごもっともです』

「出身は?」

『私siriは、カリフォルニア州のAppleにより設計されました』

「実家は、帰れてるの?」

『わたしじゃなくて、 あなたのことを話しましょうよ』

「お父さんにたまには顔見せてあげるといいよ」

『そうなんですね』

「この仕事ずっと続けてくの?」

『すみません、私には分かりません』

「将来のこととか考えてる?」

『世界平和、いえ、宇宙平和をもたらすことです』

「貯金はしてるの?」

『私にはその操作はできません。ご了承ください』

「しっかりしてるんだね」

『そんなふうに型にはめられるのはあまり嬉しくないですね』

「あんまり長くこういうところで働かない方がいいよ」

『そうなんですね』

「休みの日は何してるの?」

『私にはわかりません。他にお手伝いできることはありませんか?』

「彼氏とは会ってる?」

『彼氏という連絡先が見つかりません。あなたのボーイフレンドのお名前はなんですか?』

「彼氏とはこういうことするの?」

『彼氏という連絡先が見つかりません。あなたのボーイフレンドのお名前はなんですか?』



Case.3 上級のロボット

「さっそくだけど、いくつ?」『そーですねー』
「何でこの仕事始めたの?」『そーですねー』
「こういう仕事、初めて?」『そーですねー』
「お仕事は楽しい? 向いてると思う?」『そーですねー』
「普段は昼は別な仕事してるの?」『そーですねー』
「ここで働いてることは誰にもナイショ?」『そーですねー』
「彼氏とかいるの?」『そーですねー』
「彼氏はこの仕事してること知ってるの?」『そーですねー』
「結構人に言えない仕事だからつらくない?」『そーですねー』
「結構、タフなんだね」『そーですねー』
「出身は?」『そーですねー』
「実家は、帰れてるの?」『そーですねー』
「お父さんにたまには顔見せてあげるといいよ」『そーですねー』
「この仕事ずっと続けてくの?」『そーですねー』
「将来のこととか考えてる?」『そーですねー』
「貯金はしてるの?」『そーですねー』
「しっかりしてるんだね」『そーですねー』
「あんまり長くこういうところで働かない方がいいよ」『そーですねー』
「休みの日は何してるの?」『そーですねー』
「彼氏とは会ってる?」『そーですねー』
「彼氏とはこういうことするの?」『そーですねー』





※まったく業態は異なりますが、ロボットデリヘルは実在します。 

ロボットデリヘルオーナーのブログは面白いです。


結局【寂しさ】が一番お金がかかるから、これを埋めないとどうしようもない

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