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やっぱり、よく寝ることが一番!

発達性トラウマの生きづらさ

結構年月はかかったけど、
短い診察時間でも、継続してくださり、

複雑な愛着トラウマの生きづらさからも、
だんだん元気になってきている人も、いますよ。

非定型発達や愛着のトラブルで生きづらさを抱えた人が初診で来られると、主訴が「普通になりたい」と言われることが、けっこーあります。

ざっくり、翻訳すると、
「毎日が驚異的過ぎて、当たり前に笑ったり、ただ落ち込んだり、ふつーに感情を体験することが、周りの人間みたいにできん」、という感じのようです。内的な反応が圧倒的で、自分ではどうにもならない感じですね。

そして、回復してきた時も、調子をたずねると、
「ふつーです。」と、よく言う。
わかりにくいわっ、ちゅーの!(笑)

そんな方の、診察室でのいつもの、
インタビューの場面をシェアさせてもらいます。

よくなったのは、どうやって?

良くなっている人には、
「どうやってよくなったか」という
問いを投げかけてみます。

回復方法を、他の患者さんのためにも
教えてもらいたいという思いがあります。

Rこころの研究室では、みんなの経験知を集めて、
同じように悩む他の誰かに伝えていきたい。

でもそれ以上に、ご本人の回復にも、
プラスになるというのもあると思うのですね。

「喉元すぎれば熱さを忘れる」

で、回復プロセスに意識のフォーカスを向けることって、
忘れていることが、多いのです。

しんどかった時は、過ぎてしまえば、
誰でも、もう嫌なことは、思い出したくないものだと思います。

でも、苦労体験の中には、
自分なりの工夫や特性、助けを受ける力や、
対処能力が詰まっています。

社会認知と神経可塑性

脳みそは、体験から学習して、記憶を再構築して、
また、次に同じような状況に出会った時にも、
よりうまく対処できるように、
学習機能を備え持っているはずなのです。

具体的な生活の知恵もあれば、
世界認識をバージョンアップさせるような、
潜在的な認知を学習することもあるでしょう。

どうやってよくなったのって、
自分に意識を向けて、言葉にしようとしてもらうだけで、

あ、そうか、
あれだけの絶望から、ちゃんと抜けるもんなんだ、
結構などん底でも、大丈夫なんだ、

そうか、自分もよく踏ん張ったし、
他力を頼れたし、助けてくれた人もいた、

状況が好転したおかげだし、それには感謝しなきゃな、
世の中って、なんとかなるようになってるのかもね、
何事もない日常って、ありがたいものだーー。

そんな風に、言葉になるか、
ならないかは、わからないけれども、
それは問題じゃないです。

回復ベクトルに意識を向けることで、
脳の中で長く眠っていた、
平和で安心を感じる神経回路に、
かすかに電気信号を流すかもしれない、

よかった情報を脳に届けることで、
ミクログリアがシナプス形成を促進するサイトカインを出して、
適応的なネットワークを太くするかもしれない、、でしょ。

まぁ、そんな僕の妄想は、置いておいて、
診察室に、お話を戻しましょう。

「いっぱい寝ることですね」

この患者さんに、どうやって最近そんなに良くなったのか(ふつーの人間みたいに安定したのか)、教えてもらいました。

「どうやって、そんなに安定したんですか」

とお聞きすると、

「うーん、、いっぱい寝ることですねー(笑)」

との答え。

ズバリ、そうでしょう(笑)

薬物療法でも精神療法でも、なく、
自己探究でも、毒親からの回復でもなく。
認知療法でも、トラウマセラピーでもなく。

いっぱい寝ること、だと。
単純明快です。

自分には、たくさんの睡眠が、絶対必要なのだといいます。

REM睡眠による感情と記憶の処理

実は最近、僕もすごく睡眠の働きに注目していたところだったので、
ほんとに驚きました。

昼間に、どれだけよい本を読んだり、You Tubeで気づきを得たり、
セミナーで良い考えを勉強して、成長したつもりになっても、

寝ているうちに、脳の学習機能が情報を取捨選択している、

結局、必要なものしか残らないし、必要な速度でしか身につかない。
最近の情報飽和の中、そんな風に、思ったことありませんか?

しかも、睡眠が悪いと、感情調整も情報処理も落ちるし、
記憶も学習も、ストレスからの回復も低下して、

いくら対策をねっても、全く台無しになる。
むしろ悪あがきして、状況をよりこじらせていたり。

メンタル不調から回復するのに、
昼間の取り組みよりも、夜の睡眠の質を確保することのほうが、
優先度は圧倒的に高い、という、
ごく常識的な考えに戻ってきました。

どうにもならないときは、解決することよりも、
よく寝ることが一番であることが、多い。

「寝る子は育つ」
「下手の考え休むに似たり」
「果報は寝て待て」 

変えられない自分を知ると変わる

この患者さんは、繰り返されるどん底状態で、
自分の感情に抗えず、何度となく打ちのめされて来て、

自分の人格や行動がどうなるのかを痛いほど知っているだけに、
こんな風に、ことばを付け加えられました。

「睡眠がないと、狂気のフチにたつので(笑)」

この語彙力(笑)

患者さんの天才的な本当のコトバには、
いつもシビレます。
思わず、メモさせてもらったのでした。

そして、続けて、教えてくれましたよ。

極貧でも継続可能な(笑)、鶏胸肉を使った高蛋白メシ、
ダメ人間に陥ってもできる(笑)、炊飯器を使った簡単調理法、
プチ贅沢な入浴リラクゼーションタイムを持つこと、など、

ささやかなルーティーンを、日々地道にこなされていることを、
面白おかしく教えてくれたのでした。

こころの病もからだの病と同じく

睡眠、栄養、休息、どれも古くて新しい医学的知見と合致する、
見事な健康習慣を構築しておられることに、感心しました。

こころの病も、からだの病と同じく、「病気」であることを受け入れ、
何のせい、誰のせい、とか、自己分析や悪者探しの対策はやめて、

まずは当たり前の健康習慣に専念すること、
なにより、よく寝ること、だと、

実体験をもって、改めて教えていただいたのでした。



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