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映画『バッドマン 史上最低のスーパーヒーロー』感想 

予告編
 ↓ 


先日、映画『THE BATMAN -ザ・バットマン-』の感想文を投稿しました。
そして、今日投稿するのもバットマン……
と見せかけて、『バッドマン』!!!

コロナ禍にも関わらず劇場が笑いで包まれた、アメコミヒーロー作品のパロディがたくさん詰まった映画ですー。

アメコミ映画が好きならきっと楽しめるはず。


自信

 めちゃくちゃ笑いました。劇場でも今年一ウケていた映画なんじゃないかと思います。あらすじや予告ティザー、その他ポスターなどの広告、っていうかタイトルからして既に、本作が昨今流行りのヒーロー映画をもじりまくっていることがわかるはず。故に、客層もある程度絞られていたのかもしれませんが、ヒーロー映画のパロディシーンが訪れる度に、観客は大爆笑。コロナ禍になり、ただでさえ大人しくなっていた映画館ですが、大勢の見知らぬ他人と共に同じ一つのスクリーンを見つめるという、劇場体験における素敵な魅力を久しぶりに感じることができました。

今年初めの『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』の時も感激の拍手や歓声などはありましたが、それらとはまた違う。皆で声を上げて笑い、中には手を叩いて笑う者もいれば体をよじらせている人もいた。作品によってはハタ迷惑かもしれないけれど、本作にはそういった雰囲気がよく似合う。



 まぁ要するにパロディやオマージュだらけなわけでして。先述の『スパイダーマン』や『アベンジャーズ』などで話題のMCUや、『バットマン』『スーパーマン』などを擁するDCヒーロー映画、もちろん過去のものだけじゃなく近年のDCEU作品も。さらにFOX版のマーベル映画に、過去の『スパイダーマン』シリーズまで。

例えば『バットマン』のパロディ・オマージュシーン一つとっても、『ダークナイト』風のBGMが流れることもあれば、今年公開の『THE BATMAN-ザ・バットマン-』(感想文リンク)を彷彿とさせる瞬間まで描かれていた(後者の方に関しては、公開時期から察するに偶然だろうけど)。一つ一つ例を挙げていきたいところだけど、数があまりに多過ぎて切りがない。

それら一つ一つに観客が反応しているし、そういったパロディやオマージュシーンが悉く笑いに昇華されているのが本作。しかも本作で描かれるユーモアが、毒っ気や下ネタ、ほっこりするものに至るまで全て、マヌケなユーモアで統一されているのが面白い。こんなことを繰り返されては、名場面が来るたびにズッコケを予感してしまう。そんなくだらない笑いが連発するのに、物語が停滞することがないのも素晴らしい。言い方が難しいけど、何ていうか “本家より面白い” ドタバタコメディです笑。



 冒頭、主人公セドリック(フィリップ・ラショー)の「人には夢がある」という主旨のモノローグが流れる。彼が〈俳優〉という “自分以外の人間になりきる仕事” を選んだのは、どこか「ああなりたい」「こうなりたい」という変身願望を象徴していたのかもしれません。

父親からのプレッシャーに押し潰されそうなセドリックの姿は、〈なりたい自分〉や〈在りたい自分〉の理想像にまで押し潰されているようにも見えます。憧れていたスター俳優から受けた塩対応、親の理想とは異なる息子......etc.   先述のモノローグから始まったこの物語ですが、なりたかった、或いは憧れたものは、理想や空想上のイメージとは違うのだという残念な現実が描かれる。

やたらとパロディ・オマージュが多い本作ですが、先述した通り、それらが悉くマヌケなユーモアへと変貌していくシーンからは、以上のような事柄にも繋がる意味合いが生まれてくる気がしてなりません。
ヒーロー映画のワンシーンと似た瞬間が訪れることは、“もう少しでヒーロー(≒憧れや理想)に手が届くこと” を予感させ、そこからマヌケなユーモアへと肩透かしを食らうのは、“あくまで憧れや理想であって、現実はそんなに甘くないこと” を示してくれる。

マヌケぶりを際立たせ、かっこよく締まらないシーンの連続は、ただのコメディ要素としての価値だけじゃない。まるでヒーロー映画のようにかっこよくさせてしまっては、本作の裏テーマ(?)が霞んでしまう。単純にカッコよくしてしまったら、それこそ “ただのヒーロー映画” でしかなかった。そんな作られた綺麗なもの、或いはアイコンのような存在であるスーパーヒーローではなく、現実を生きていく中での “真のかっこよさ” を描いたのが本作なんじゃないかな。



 無知や思い込みが生み出す最強の無敵感は、この物語を大いに笑いで彩ってくれたけれど、そんな無敵感は、絶対的な自信とも言い換えられるはず。自分を卑下したり、自信を無くしている場合じゃない。「なれたらいいな」「なりたいな」といった弱い心持ちではなく、「なる」もしくは「なっている」という強い思い込み。そんな楽観的勘違いという名の自信が、セドリックという人間を生まれ変わらせ、自分を信じることの強さを示してくれた。照れ隠しのように笑いで茶を濁されるけれど、むしろその笑いのおかげで決して説教臭くならない。

......なんてね。裏テーマだなんだとそれらしいことを述べてはみましたが、ほとんどこじつけよ←。本作を楽しむのにそんな能書きはいらない。シンプルに超面白かったです。


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