見出し画像

映画『クルエラ』感想

予告編
 ↓


臨場感


 かっこいい……という陳腐な形容しかできないのが情けない笑。クールでオシャレでスタイリッシュで……“ヴィラン” ですと? たしかに僕が知っている『101匹わんちゃん』のクルエラはマジで嫌な奴でしたとも。しかしなんですか、本作のクルエラは? ヴィラン? いやいや、その所業は最早アンチヒーロー。ヴィランの暗い過去が詳らかになる本作は、ダークな雰囲気ばかりではなくコメディ要素なども盛り込まれ、重た過ぎないからとても観易かったです。

 冒頭シーンで流れた自己紹介風のモノローグは面白かったと思います。性格的にも近しいものを感じましたが、どこか『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』(感想文リンク)での冒頭シーンを彷彿とさせるお喋りが、一瞬でクルエラ/エステラ(エマ・ストーン)という人間の人物像を構築してくれる。単なる自己中とはまた違う、我田引水の雰囲気って言うのかな? だからこそ漂う “誰の助けも期待していない感”、そして、だからこその “私の力で勝ち取る” みたいな気概が溢れ出まくっている印象です。


 先に言っといた方が良かったかな? 本作は、ディズニーアニメーション映画『101匹わんちゃん』のヴィランであるクルエラ・ド・ビルの過去を描いた物語。とはいえ、『101匹わんちゃん』を知らなくても楽しめるシンプルな魅力がいっぱい詰まっています(あ、でもクルエラが車を運転する時の姿勢がアニメ版と同じだったのは面白かったかな笑)。まず序盤のテンポ感。立て続けのパン(若干速め?)は、作品のテンポがなんとなく足早になる印象があり、彼女がジャスパー(ジョエル・フライ)とホーレス(ポール・ウォルター・ハウザー)に出逢ってからの展開との相性が好い。やっぱり流れが退屈だとコソ泥感が途切れちゃうもんね。それに、目的のために着々と準備が進んでいくような雰囲気さえ漂い出す。

 あと映像的な面白さで言えば、空間が把握できるような工夫が常に施されていたのも素晴らしかったと思います。建物を俯瞰で捉え、そこから建物内へ、そして廊下や階段を通り他のフロアへ……という一連のカメラワークが、その直後のシーンが「今どういう所で行われているのか」を明確にしてくれます。ただの雑用ではなく、建物の下層階で雑用をしているという事実が、クルエラの不満感をより如実に示してくれます。

 このように彼女だけをピックアップしたようなシーン以外にも、複数の登場人物たちの位置関係が読み取れるようなシーンも見どころの一つ。たとえ建物の中で窓が映らない場所でのシーンだったとしても、「誰が今どこで何をしているのか」がわかる面白さがあります。延いてはそれがコソ泥シークエンスをより臨場的にしてくれる最高の仕掛けになる。ホーレスがブツを狙って隠密行動、ジャスパーが作戦のアシストや監視、そしてクルエラが現場を派手に暴れ回る(正直言うと、このクルエラの大立ち回りだけでも語りたいことだらけなのですが、とりあえず後回し)。各所で同時進行していながらも位置関係がわかりやすいから見入ってしまい、そしてアシストを終えて逃走ルートを確保した上で車で待機するジャスパーがソワソワしているから、観ているこっちまで焦ってしまう。作り手の思うツボです。



 あと個人的に……というか他にも好きな人は大勢いらっしゃるでしょうけど、彼女のトレードマークとも言える白と黒のヘアースタイルが、実写になったことで一気に素敵に見 えてくるから不思議。予告編やポスターなど、ビジュアルが解禁された時点では「シーアみたいだな」程度の印象しかなかったのが正直なところですが、まるで本作で描かれていた彼女の二面性を象徴しているようで、これまたかっこいい。

 そうそう、先述のクルエラの大立ち回りシーンの話。なんかもう敢えて悪目立ちしてる感じが「おっしゃイケ!」「度肝を抜いてやれ!」みたいな僕の期待にしっかりと応えてくれる……否、超えてくれる。会場で一人だけ真っ赤な衣装。しかもそれはバロネス(エマ・トンプソン)が過去にデザインしたものをクルエラのセンスで繕い直した服、つまりはバロネスを否定するような行為。しかもその服に着替える際にドレスコードである白と黒の衣装を燃やした彼女。これもまたある意味、ドレスコードを定めたバロネスを否定する行為。一発の啖呵を切るためだけに二重で喧嘩を売ってみせる彼女に脱帽……ってかもう骨抜きよね♡
 しかもそこで 流れるのがディープパープルの『Hush』って! 最高かよ。

 このシーン以外にも有名な曲がオシャレに用いられている本作は、エンディングで流れるテーマ曲までもがかっこいい。なんですか、あの色気たっぷりのエッジボイスは! 彼女の不敵な笑みとの相性バッチリです。その前のラストシーンで、お馴染みのあの旋律も聴けたし、懲悪の瞬間もめっちゃスカッとしたし、暗い過去編と思いきや後味スッキリの痛快な映画でした。


#映画 #映画感想 #映画レビュー #映画感想文 #コンテンツ会議 #ディズニー #101匹わんちゃん #ヴィラン #クルエラ

この記事が参加している募集

コンテンツ会議

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?