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わらしべ長者的に仕事をつくる

以前にNHKでやっていた番組で、スタンフォードのD-schoolの人が教えるデザインシンキングの授業が特集されているのを見た。

番組の中では、確か1本のクリップを”元手”にして、そのクリップを他の物と交換していくという仕立てになっていたと思う。

この中で参加者は、クリップという誰しもが手にするような簡易でありふれた物から、価値を転換させたり、意味づけを行ったりすることで、より価値の大きなものに代えたり、物そのものを増やしていくといったことを経験する。つまり「わらしべ長者的」で物語られているような物を、ビジネス的に解釈するとどうなるのか、ということなのかもしれないが、当時もとても興味深く観ていたことを思い出す。

「つながるカレー」(加藤 文俊 , 木村 健世 , 木村 亜維子 著)を読んで、この「わらしべ長者」的なことについて改めて考えるようになった。

本書では、「石のスープ」と呼ばれるポーランドに伝わる民話が紹介されているのだけれど、「石のスープ」とはつまり、ただの石っころの入ったスープを、ある村の人に持って行って「もう少し塩を足せば美味しくなるんですけど。」とか何とかいって、いろいろな具材を村の人に提供してもらいながら、最終的には美味しいスープが出来上がるという物語だ。

これも「わらしべ長者」の物語にとっても近いところがあると思うが、「つながるカレー」の著者達がすごいのは、まさにこの物語を「カレー」という形で各地域で実践されていることだ。

これは、別にお金儲けや生活のためにやっているわけでもなく、何かの社会実験としてやられているものでもない。本書のサブタイトルである

コミュニケーションを「味わう」場所をつくる

という通り、あくまで彼らなりに各地域の町の人達と”つながる”、コミュニケーションするための方法論なのだ。

本書は、この”つながるカレー”という行為の、楽しくも深い意味を読み取ることのできる記録となっている。

意味の読み取りは、あくまで読者がどう感じるか、どこまでその人がすくい取るのかにもよるが、逆にあまり説教がましいことが書かれていないところも共感が持てる。

”まちづくり”や人と関わるってこんなに楽しいことなんだ。そしてこうやっていけば、もしかしたら自分にでも何かできるような気がする。

そんな爽やかなことを感じさせてくれる一冊だ。


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