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驚きと発見を生み出すマニエリスム

「近代文化史入門」(高山 宏著 講談社学術文庫)を読んだ。

かたいタイトルなので、及び腰になってしまうが、個人的にはこのタイトルをもう少し変えた方がいいのではないかなと思う。

本書を通して基軸にあるのは、「マニエリスム」という概念だ。

「マニエリスム」とは何なのか。

本書の中ではこのように語られている。

合理的には絶対につながらない複数の観念を、非合理のレベルでつなぐ超絶技巧をマニエリスムといってもよい。

「マニエリスム」とは、一見すると繋がらなさそうに見えるものを繋ぎ、「驚き」や「発見」を生み出す方法と理解できる。

英文学及び文化史に造詣の深い著者は、シェイクスピアからニュートン、ホームズに至るまで、イギリスの文化史を辿りながら、独自の視点で異質なものを縦横無尽に繋いでいく。

その手捌きには眩暈を覚えそうだが、一方で心地良さも感じる。

そう、本書自体が「マニエリスム」の標本のようになっているのだ。

松岡正剛さんの本を読んだ時も同じような感覚があったが、高山氏のこの本では、さらにその感覚が高められるような気がした。

異質なものを繋いでいって、ある視点を紡ぎだしていくという行為は、学芸員や編集者など、情報をキュレーションすることを仕事にしている人にとっては朝飯前のことかもしれない。

本書を通じて流れているのは「見る」そして「観る」という視点だ。

中には覗き見るといった視点もあり、そして顕微鏡のように奥深く見るという視点もあり、その在り方は様々だが、「そんな見方もあったのか」と思わせる物語が満載だ。

本書を読めば、良質な博物館や美術館、文学館の中を歩いているような、贅沢な時間と感覚を味わえるだろう。





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