キャンパスライフは死んだ

まず、この新型コロナウイルス感染症に対して最前線で我々を支えてくださっている医療従事者の方々へ厚い御礼とご無事を祈念致します。この文章ではあたかも「大学生を自由にしろ」という趣旨かのように文章展開がされますが、自粛が必要なことは明白であり、今後もオンライン授業の継続に関しては異論はありません。

さて

日々自宅でパソコンを眺め、大した出来でもないレポートを締め切りギリギリに提出する繰り返しの日々を、今大学生の多くが送っている。私は以前noteに「#大学生の日常も大事だというクソタグ」という文章をアップし、大学の対応や世間の反応について批判を展開した。さて、あれから数ヶ月が経った。未だこの感染症は収束の気配を見せず、なんなら急速に勢いを増している。それでもなお経済をどうにかして動かしていこうという取り組みがなされる中、ほとんどの大学生はまだオンラインでの授業が継続されており、大学によっては課外活動も禁止である。これは私が聞いた噂話で事実かどうかはわからないのだが、「他国で大学が再開したら明確に感染が拡大した」というデータがあるらしい。まあわからんでもない。しょうがないのかもしれない。いや待て、そのデータの是非を問いたいわけではない。とにかく私が言いたいのは「キャンパスライフは死んだ」ということだ。

改めて身の上を説明すると、私は予備校でアルバイトをしている私文大学生だ。ただの大学生でありながら、たかが数年生まれたのが遅かっただけで私とさして変わらない年齢の高校生に偉そうに「大学生になるにはだな、、」という指導をしている、嫌な職業である。しかし面白いことに、高校生は我々の話を食い入るように聞き、(少なくとも半数くらいの生徒は)素直に受け取って学習に励むのだ。この快感と責任感のバランスについてはのちに述べようと思うが、まず問題としたいこと、今回のこの「キャンパスライフは死んだ」というテーマで触れたい事象は「このコロナ禍で我々にも答えづらい相談が増えた」というものだ。

このくらいの時期(今は2020年12月頭である)になると増える相談として「併願校ってどうやって決めればいいですか」系が挙げられる。おそらく予備校で働いたことのある方、あるいはご自分で大学受験をされた方は「うんうん」と頷ける大学受験あるあるのお悩みであろう。勘の良い方ならもうお気づきかもしれないが、下にスクロールしようとする指をちょっと宥めて読んで欲しい。勘が冴えてない方はそのままお読みください。まず、併願校の決め方として最もオーソドックスなのは「挑戦校」「実力校」「安全校」を後者にかけて増やしていく”偏差値ピラミッド型”だ。例えば明治大学経営学部が第一志望なら、挑戦校として早稲田大学商学部を設定し、実力校としてその他MARCH経営学部を2校ほど、安全校として成成明学や日東駒専から3、4校選択するような形のことを言う。第一志望校は言わずもがなとして、大抵の場合「挑戦校」と「実力校」は割とすんなり決めることができる。選択肢がそう多くはないからである。生徒が持ってくる併願校に関する悩みのほとんどは、「安全校」に類するものだ。

安全校というのは、よく滑り止めと表現される「ここなら最低限行ってやってもいいかな」と生徒が思える大学になる。そして「行ってやってもいい」という生徒の個々人のプライドを反映した基準をどこに置くかが、安全校選択における最も重要な要素になる。さあ、本題だ。多くの生徒が置く基準、それが「キャンパスの立地、キャンパスの雰囲気、施設設備といったリアルでしか活用できない資源」なのだ。

私はこれまで予備校スタッフとして働いてきて、併願校をキャンパスに関連する理由で決めてきた生徒を多く見てきたし、そういったアドバイスをしてきた。例えばMARCH志望の生徒の併願校として「武蔵大学」と「成蹊大学」は人気が高いが、どちらかと言えば成蹊大学をお勧めしてきた。(駅から遠いけど)吉祥寺にあるからである。新桜台より良い(失礼)。そして実際第一志望叶わず併願校に入学した生徒たちも、立地が良いという事実は第一志望に落ちたコンプレックスを多少緩和してくれる要素になっていると感じる。しかしこのコロナ禍、大学はオンライン授業が中心で、その恩恵は受けられないのだ。

予想される反論として「大学は学業をするところなのだから、カリキュラムや教授の質で決めるべきだ」が挙げられる。一理ある。というか本来そうあるべきかもしれない。ただそんなことを安全校まで考慮できるほど多くの受験生には余裕がない。だが安全校にしか受からない可能性は多大にあり、ある程度「行く、行ってもいい」と思える理由が必要で、その多くが立地やキャンパス、施設だったのだ。さらに言えば「素晴らしい教授だとしてもオンライン授業が上手とは限らない」のである。これは現在起こっている事象だが、教授がオンラインに慣れていないので、授業の質が教授の良し悪しというよりはオンライン運用が上手いかどうかに左右される。そんなことは高校生には知る由もないのである。

大学は4年間である。新型コロナウイルスには未だ明確な治療法はなく、ワクチンも開発途上であり経済の先行きも見えない。4年間すべてオンラインの可能性だってあるのだ。こんな状況で一体どうやって安全校を決めれば良いのだろうか。第一志望でさえ決めることが難しい。「留学したい」という生徒も多くいるが、今は留学すらままならないのである。生徒に後悔のない大学選択をしてもらうために、今その基準を模索することが我々予備校スタッフの重要な責務になりつつある。

キャンパスライフは死んだ」。それは何も”今の”大学生に限った話ではない。来年、もしくはここ数年のうちに、あるいは未来永劫、これから大学生になろうとするものたちにとっても同様なのだ。繰り返しにはなるが、最前線で我々を支えてくださっている医療従事者の方々に感謝を申し上げて、そして一刻も早くキャンパスライフが蘇ることを願って、筆を置く。

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