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世界の美しい瞬間 28

28 純度

人生にて初のことだが、youtubeを最近よく観てしまう。

きっかけは「おっさんずラブ」なるものを、見逃してしまったよサーチから始まった。

牧役の林さんは、わたしが観たものの中では、まっすぐで、一本気で、どこかに深い闇を持っていながら、男らしい役柄が多い方だなぁという印象。今回の牧も文字にしてみると似ている。
目のきらめきが強い方だと思う。

「風が強く吹いている」では、走のどこまでもまっすぐに走って行く様に目を奪われた。あれほど美しいランニングがあったろうかと思う。人の走り抜ける姿は美しいのだと、林さんの役柄を観て感じた。

そして、田中圭さんはあちこちでお見かけしたが、はるたん役を観て、田中さんはこんなに可愛かっただろうかとようやく気が付いた。ごめん。
今や、日本でおっさんずラブを観るあらゆる人が、はるたんにメロメロだ…すごいなあ。

もちろん、お二方とも若手ながら実力のある、今後もどんどん味のある俳優さんへと成長されるであろうと思う。

その、おっさんずラブのサーチの上に入る広告動画にポッと出た、一人の高校生に、心を奪われた。

高校生フォークソングGPなる動画だ。

高校生4人が出場し、ギターを弾きつつ自作の歌をうたう、という明快な番組だが、
4番目に出た彼は、学ランを着た「自転車に乗れないことが悩み」という、4月から高校生になったばかりの素朴な方だった。

ギターを弾き始め、その何度目かの声変わりの最中であろう声で、歌詞を口にする。

周りが、スタジオの空気が、彼の歌に、演奏に圧倒され、どんどん変わり行く光景を目の当たりにした。

難易度の高いギターコード、そのテクニックもさることながら、コード進行の流れが心の痒いところに、丁度良い位置で来て、快楽と同時に泣かせる。

そして、歌詞。

モヤモヤとした感情を、イメージを、言葉を選んで表現して伝えることの難しさを、note民の端くれとして、わたしの感じる限りは知っている。

平成生まれの彼が中1のときに作ったという歌詞が、何故か昭和生まれのわたしの心のむず痒いところを心地よく引っ掻く。

その一曲だけで、完全に彼の世界観に引っ張り込まれた。

他の曲も聴いた。
何度も。

「heaven」というタイトルに、
「ジャンプしてんだ ずっと 嫌いなものから」

「She will」というタイトルに、
「幸せよ わたしの腕を ちぎれるほど 引っ張って 連れてって 未来へ」
という言葉が乗る。

わたしの心に空いていた穴を、的確に、なのに絶妙なニュアンスで、歌にされてしまったみたいだ。

ああ、なんていうことなんだろう。

純度の高い何か光のカケラのようなものに、心が縫い止められた気分だ。

わたしは、もちろん上の世代の大人たちにも助けられて来たが、特に親元を離れてから、平成生まれの人たちに心を救われる。

下の世代の、たくさんの可能性に満ちた人々が、生まれてきてくれて、育てた親御さんにも、本当にありがたいのだ。

この時代の巡り合わせって、なんなんだろう。
下の世代は男女問わず、抱き締めたいほどかわいいが、かわいいだけでなく、わたしは目からウロコが何度も落ちたくらい、たくさん教わっていることがある。

その内の一人である、高校生フォークソング王者、
崎山蒼志さんに、ありがとう。

壊れそうで壊れない、弱くて強い。
脆そうで脆くない。

そんな曖昧なところを行き来する、10代という時間を、大切に、毎瞬、生ききって欲しい。

そして、どうか、
資本主義だけを振りかざす人々から、
彼を遠ざけて欲しい。

わたしも、10代ほど若くはないが、
この先、次世代へつなぐ何かを、ひとつでもしたいと強く意識し始めている。

昭和世代は、このままだと生き辛い世界へ、どんどんなって行くだろう。
古い価値観を捨て、脱皮するのは、自分でしかできない。

テレビの中ですら、日々新しい価値観が更新中だ。
高校一年生の歌と曲に圧倒され、男同士の恋愛も支持され、心ほだされている。

どうする?

常に、問われ続けている。

わたしたちの世代は、どうする?

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