恐妻家日記~妻の風邪2~

妻の発熱は翌日には治まった。医者に処方された熱冷ましが覿面に効いた。まだ、授乳中でもあるのであまり強い薬ではなかったが奉天会戦のクロパトキンのように不思議とすんなり引いた。
しかし、妻の不調そのものはまだ引かぬらしく、続いて訴えたのは
「乳がいてぇ…」
この程、下の0歳の娘の食事を離乳食に切り替えつつある。授乳回数が徐々に減り、それがどうやら熱に結び付いたらしい。これを乳腺炎というらしく、子育てママには偶さかある病らしい。重症化すると乳を切開して膿を取り出さなければならいと聞いた。恐ろしい。
たしか昨晩も妻と話したのは、風邪の症状があまり見られないのだ。鼻も喉も違和感なし。熱ばかりが上がり寒気がする。そして翌朝、自己診断ではあるが「これは恐らく乳腺炎であろう」というのが結論であった。
先も述べたよう、これは重症化するとマジヤバイ。早いうちに医者にかかるのが尤もなところだ。早期に産婦人科へ行くよう私は進言した。
すると、まず妻は「様子を見る」と言った。もし悪化するようならば行くとも言った。
私は今日、夕方から仕事があるため、午後三時あたりから出勤したい。尚これは早めに見積もった時間である。最悪の場合、“本当にどうしようもない場合”、四時までなら妻の病気を楯に上司に説明がつくであろう。その旨を妻に伝えた。そこには、できれば早く病院に行って、薬なり治療なりをしてほしいという希望があった。
いずれにせよその方が私も安心できる。妻の体も楽になる。子も遠慮なく妻に甘えることができる。加えて私は悠々と仕事場にも向かうことができる。一石投じて二鳥どころか三鳥も四鳥も得られそうな妙案である。
や、これは妙案でも何でもない。早期発見・早期治療。これこそ病気の鉄則である。しかし、その理屈を妻は突っぱねて、何故か不思議なことに痛みの耐えるギリギリまで“様子を見る”のであった。