短歌

14
ノート

連作30首「錆びる」

第62回短歌研究新人賞応募作品「錆びる」です。

これは自戒 舗装されていない道をわざと選んで揺れる自転車

用のない団地の間を駆け抜ける誰も助からないスピードで

店内はビニールハウスのように人 人 人 古本買取の曲

昼間から足が痺れるまで立って救った世界を棚に戻せば

聖剣を抜くと銃刀法違反 殴られる前に殴ってはだめ

この胸に輝く高貴な金属は腐食しないはずなのにざらつく

金プラチナ高価買

もっとみる

私立恵比寿中学と短歌 令和に寄せて

本日5月1日から元号が「令和」に変わった。

「令和」は、現存する日本最古の和歌集である万葉集を典拠としている。歌人としてはこれにより短歌が盛り上がり、短歌に興味を持つ人が増えれば良いと思っているのだが、それとは別に気になっていることがある。

令和との繋がりで話題になっているアイドルグループ、私立恵比寿中学(エビ中)だ。僕はエビ中のファンなのだが、常々「エビ中と短歌、親和性が高いのでは?」と思っ

もっとみる

連作10首「春のサブスク」

初見ですとチャットに書けば何となく気温が上昇したような窓

欠落をアイデンティティにしないよう四つ葉のクローバーを見習う

カーテンを買う予定を忘れたままの七畳に差す朝の直撃

はじめてのライブハウスまでの道でストリートビューになかった花屋

散る 散ると満ちる桜の絨毯を青い鳥から教えてもらう

春風は記憶の外部ストレージまだ泣かずに生きていけている

桜の花びら一枚で感傷的になり放題の春のサブス

もっとみる

連作50首「希死念慮キック」

第64回角川短歌賞応募作品「希死念慮キック」です。

お会計ちょうどですね、で握り潰されたレシート見送っている

少しずつ取り戻せない損をするドリンクバーでお腹が痛い

ネカフェから出てしばらくは主人公だったのにもう背骨が歪む

錆びついた喉の操作がきかなくて弁当につくゼロ膳の箸

i don't know 帰巣本能 コンビニの前でフライドチキンを減らす

残された時間の渦で確実に起こさなければな

もっとみる

連作10首「特徴のない怪物」

リセマラってなんのことだよ特徴のない怪物として生きていく

ウルトラレア スーパーレア レア レアであることを誇りにしてはいけない

終わらないロード画面の端にいて永遠に転がされている脳

目を開くたびに下品な広告が視界を塞ぐ命 無料です

負けそうになると切断する癖のせいで仕事をバックれている

昨日死んだ誰かが生きたかった今日 無駄に過ごさせていただきます

一万日連続ログインおめでとう! 祝

もっとみる

連作50首「不可逆の卵」

第63回角川短歌賞応募作品「不可逆の卵」です。

年上の人を大人と呼んでいる 火災保険の更新はがき

交流が推奨される飲み会でオレンジジュースを動かしている

自らに掛かる重さを理解した人が駅前で潰れていた

確固たる事柄を遠ざけているガチャガチャ回して変な消しゴム

帰宅してからも帰りたいと思うしばらくただいまを言っていない

不可逆の半熟卵ぬるま湯で中途半端に固まっている

手遅れの一歩手前で

もっとみる

連作30首「感情がなくて悲しい」

第60回短歌研究新人賞応募作品「感情がなくて悲しい」です。

人生のスタートダッシュを間違えてそれから走るふりをしている

最下位になったら拍手されるのに馬鹿な道化は演じたくない

笑ったら笑ったことを笑われてどの申請も許可が下りない

ばりばりと雑言の滝を浴びているマイナスイオンは感じなかった

感情がなくて悲しい 感情がなくて本当に助かりました

へえこれが同情というやつですか一緒に死んでくれ

もっとみる

連作50首「デザートの蜃気楼」

第62回角川短歌賞応募作品「デザートの蜃気楼」です。

きみのいる世界を食べてしまいたいきみを最後の楽しみにして

こんがりと色づいた頬トーストのように飛び上がりたい週末

禁断の果実のパイが焼き上がるまでのアダムとイブのお喋り

動物の型を抜いたらオーブンで命を与える共同作業

ざくざくと噛みしめている幸せの音源となる黄色いざらめ

ピーナッツバターみたいなカーディガンきみの背中に塗りつけている

もっとみる

連作20首「プロトコル」

清潔なふりをしている灰色の空気を深く吸い込んでいる

教室の言語に対応していない僕のノートを埋める文字化け

騒がしいクラスメイトの視線から安全に取り外されている

ディスプレイだけが明るい「ようこそ」と迎えてくれる野戦病院

受け取った以下同文は特別ではないと思い知らせる装置

情熱を持った自分の「次回から表示しない」にチェックを入れる

満員の銀河鉄道いつまでも機械の体は手に入らな

もっとみる

自選短歌20首

僕だけがインターネットの亡霊で他のみんなは居酒屋にいる
 

「五時半に起こして」「 ウェブで“助けて”に関する情報が見つかりました」
 

花の名に詳しい母は無機質な僕の名前を思い出せない
 

お前はハリーポッターの絵が描いてある電車のロンの車両に乗れよ
 

友人が去った線路を眺めてはまだ運転を見合わせている
 

くノ一と一夜をともにしたはずが俺の隣に転がる丸太
 

後ろから蹴ってほ

もっとみる