教育におけるマインドセットの重要性 その1

 マインドセット(mindset)は日本語で「心の在り方」などと訳される単語で、主に本人の過去の経験から形成される思考様式、心理状態のことを指します。何かの場面に遭遇したときや、事実に直面したとき、それをどのように解釈し、どのような心理状態になり、どのように行動するかはその人のマインドセットによって決まっています。この記事では、生徒が能力を伸ばすためはどのようなマインドセットが必要かについて大きく3つに分けて考えていきたいと思います。

1.教育におけるマインドセットとはどのようなものか。
2.生徒が「硬直マインドセット」になってしまうのはなぜか。
3.どのようなマインドセットの教育を行っていけばよいか。

今回は1.教育におけるマインドセットとはどのようなものか。について見ていきましょう。 

まず具体的な場面を想像してみましょう。

 公立高校進学を目指す中学3年生のAくんは、1学期の期末テストが返却されました。Aくんの住む都道府県では中学3年生の成績が、高校受験の点数に使われるため、今回のテストは志望校に合格するためにとても重要になります。Aくんは数学が苦手でしたが、担任の先生に「期末テストの数学で80点以上取らなければ志望校に合格するのは難しい」と言われ、必死に勉強しました。Aくんは問題集を何度も解きなおし、「これなら80点以上は取れる」というところまでやりきって、期末テストを受けました。
 
 しかし、結果は59点でした。普段なら間違えないようなところで計算ミスをいくつもしてしまい、解けるはずの問題を何問も落としていました。どの問題も試験前に自分で解けた問題ばかりで、分からなかった問題はほとんどありませんでした。

この場面で、Aくんはどのように考えたでしょうか。Aくんを自分に置き換えて考えてみてください。

 キャロル・S・ドゥエック著の「MINDSET」では、人間のマインドセットを大きく2種類に分類しています。
硬直マインドセット(fixed mindset)と
しなやかなマインドセット(growth mindset)です。
今回の場面で、Aくんが硬直マインドセットであった場合と、しなやかなマインドセットであった場合で、その後の考えや行動を見てみましょう。

 Aくんが硬直マインドセットだった場合
「こんなに勉強して、解いたことのある問題ばかりだったのにテストの点数が取れなかった。つまり僕には勉強する才能がないのだ。受験に向けて勉強しても、才能がないからどうせ点数にならないし意味がない。夏休み前の三者面談では志望校を変えるように言われるだろうし、もう何もやる気が起きない。」
Aくんはこのように考え、その後勉強しても意味がないと思い勉強に熱が入らなくなってしまいました。

 Aくんがしなやかなマインドセットだった場合
「点数は良くなかったけど、夏休みにしっかり勉強して、2学期のテストで巻き返せばまだ大丈夫だ。自分なりにはしっかり勉強したつもりだったけれど点数が良くなかったということは、勉強の仕方に問題があるかもしれない。あとで数学の先生や友達に相談して、どのように勉強すればよいのかアドバイスをもらおう。ここで勉強の仕方を見直して次は高得点を取れるように頑張ろう。」
Aくんはこのように考えて、数学の先生や点数の良かった友達に相談し、勉強の仕方を見直して、2学期に向けて勉強を始めました。


 このように、全く同じ状況でも、Aくんのマインドセットによって捉え方や心理状態、その後の行動が大きく違っています。Aくんは思うような点数を取れませんでしたが、その後A君がとるべき行動は、2学期のテストに向けて勉強し高得点を目指すことです。しかし硬直マインドセットの場合では、そのような思考、行動が難しくなっていまいました。このようなマインドセットでは、その後Aくんが成長し能力を高めていくために必要な行動をとることが困難になってしまいます

 硬直マインドセットのAくんはなぜ合理的な行動ができなかったのか、そしてどのようにすればマインドセットをしなやかにすることができるのかについては、次回考えていきましょう。

お読みいただきありがとうございました。

次回記事はこちら↓
2.生徒が「硬直マインドセット」になってしまうのはなぜか。

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