坂本玲峰

坂本玲峰

最近の記事

  • 固定された記事

オンライン教育による学力低下の実態

2020年度から全国の大学教育がオンライン主体となった。このことは感染症対策の目的もあり、一概に全てを否定することはできないし、我々教員側も与えられた環境下で最善を尽くしてきたことも確かである。しかし2021年度も折り返し地点にきた現在、そろそろオンライン教育のメリット・デメリットについて冷静な検討を開始しなければならない時期が来たのではないかと感じている。 残念ながらこの問題に関する大学教員側の動きは鈍いようである。まずは現場の教員どうしで客観的なデータを蓄積していくとい

    • 水素原子のシュレーディンガー方程式の数値計算

      量子力学の勉強をしていると水素原子や水素分子イオン、シュタルク効果などといった項目が並びますが、計算も最終結果も重く、その上どこまで近似できているのかよく分からない近似計算を見せられたりと、今一つ実感が持てない人が多いと思います。そこで数値計算をして色々といじってみるのが有効なはずですが、そういった情報はあまり見つからないように感じます。 以前のアンダーソン局在の記事に引き続き、数値計算の専門家にとっては当たり前すぎてわざわざ教えてくれない話なのかもしれませんが、素人的には

      • AI社会について見えてきたこと

        最近ChatGPTが大きな話題を呼んでいる。とうとうAI社会の姿が現実的に見えてきたようで筆者も大変興味深く感じている。ただし実際に見ていると様々な問題があることも分かってくる。 1.平然と誤った回答を与える 2.AIを使った不正は巧妙なものとなる可能性がある 3.AIは中立ではない これらは解決できない問題として今後も残っていきそうに思われる。「AIによって〇〇の職業が失われる」といった宣伝文句とは別の、AI社会のリアルを見た感じだ。せっかくなので今現在感じていることを

        • 科学的方法の限界:カオス系とフラクタル構造

          合理主義的な考え方と、それに相対する考え方との論争は、人類の歴史と共に続いているような根深い問題である。現代においても様々な確執の背景にはこの問題が控えているように感じることも多い。筆者は数理物理学者であり、合理主義の極致ともいえる領域で暮らしている。そのような観点からこの問題について感じていることをまとめて見ようと思う。 数値計算の紹介合理主義的な手法の代表例といえば論理的・数学的方法であろう。こういった手法は強力であり、いったん数学的に証明された事実であれば未来永劫ゆら

        • 固定された記事

        オンライン教育による学力低下の実態

          アンダーソン局在

          量子力学の教科書で勉強していると、重要だが単純なポテンシャルに関する内容が多い。もちろん現実の系は複雑であるから、単純な系からは想像も付かない多彩な世界が広がっている。その典型的な例としてアンダーソン局在を考えてみる。これはランダムな媒質中の電子が局在し、特に電気伝導を示さないという現象である。複雑な量子系で初めて発生する現象であり、1958年にP. W. Andersonによって見いだされた物理学史上極めて有名な発見の一つである。低エネルギーの状態では局在がおこり、エネルギ

          アンダーソン局在

          サスキンド『量子力学』について

          著名な物理学者サスキンドによる教科書「スタンフォード物理学再入門 量子力学」は一流の学者による著書らしく大変興味深い内容です。ぜひ多くの方に読んで頂きたい本だと思いました。一方で残念ながら誤植と思われる点が散見されます。たまたま必要があって正誤表を作成しましたので、興味をお持ちの方にもシェアさせて頂く事にしました。私の勘違い、あるいは見落としなどがあればお知らせ頂ければ幸いです。

          サスキンド『量子力学』について

          オイラーの三体問題

          太陽の周りを一つの惑星が回っているとき、運動方程式の解が楕円などで与えられることはよく知られています。ここで考えたいのは、もし太陽が二つあったらどうなるだろうか?という問題です。一年に二回夏が来るくらいで大したことはないだろう、ですって? いえいえ、実際には目が回るほどもの凄い運動になってしまいます。そんな惑星に住んでいたらさぞかし大変だろうと思うのですが、解を眺めるだけならとても楽しい気分になれます。 歴史歴史に興味の無い方は、この項目は飛ばして下にあるアニメーションを眺

          オイラーの三体問題

          自己紹介

          私は数理物理学の研究者です。物理学の理論や模型の中でとりわけ良い性質を持つものを深く研究することで、全く新しい数理構造を見つけたりすることが中心です。 自然界は広大であり、その内で人間が理解することのできる領域はごくわずかな部分だけです。例えば物理学の基礎方程式で厳密な解を求められることは稀であり、近似的な解を求めることすら困難な場合がほとんどです。そう考えると、研究においては自然現象のどの一断面を調べたいのかを予め決めなければなりません。私の場合は量子力学の基礎方程式であ

          自己紹介