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アイノの存在"誠品生活日本橋 映画「AALTO」公開、書籍「AALTO書簡集」刊行記念ライブトーク"

最近noteでフィンランド在住の人たちの記事を見ては、フィンランドへ行きたい熱が高まっている。自然や食事、お国柄もマリメッコも魅力的だが、行ってみたい一番の理由はやはりアアルトだ。
建築好きのみならず、家具や食器が好きな人たちまで幅広く知られ愛される「アルヴァ・アアルト」。

そのアアルトの生誕125年の今年に映画が制作され、13日から公開されている。この映画はアアルトと最初の妻であったアイノ・アアルトとの手紙のやりとりを基に2人の交流が描かれている。
そして同時期に2人の孫にあたるヘイッキ・アアルトがこれらの手紙を編集した「アイノとアルヴァアアルト書簡集」を出版した。
映画公開と書籍刊行記念に日本橋にある「誠品生活」でライブトークが行われた。

「誠品生活」は、台湾の台北市のロータリーから人文とアート関係の専門書店としてスタートし、読書を中心に「本とくらしの間」にある複合的なイノベーションに力を注いできた。現在では書店、ギャラリー、ホール、小売り、文化クリエイティブ・ブランドなどさまざまな文化的なコンテンツを基礎とした複合的な文化のトポスとなっている。
日本進出一号店として2019年日本橋に誕生した。「文学回廊」と呼ばれる長い回廊の両脇には書籍や台湾ブランドのセレクトショップや文具店が並ぶ。

その一角にこじんまりとしたイベントスペースがあり、今回北欧ジャーナリストの森百合子氏、東海大学文化社会学部北欧学科講師の柴山由理子氏、映画の宣伝を担当するVALERIA代表の小倉聖子氏らアアルトや北欧に縁のある3名によるライブトーク。
以前よりフィンランドやアアルトに対して各々のアプローチで研究したり携わってきた3名が書籍と映画を知ったことで、これまで知り得なかった彼らの関係性や、戦争や独立を経験し世界を志すその背景をより深く理解できたという。
トークの中でも建築分野の専門家によるアアルトの批評はこれまでよく耳にしたが、フィンランドの社会政策やライフスタイルを切り口としたアアルト評やその後にアアルトが与えた影響について聞く話が面白い。
そして今回映画と書籍を通じたトークの中で最も印象的だったのが、アアルトにとってのアイノの存在だ。公私共にパートナーとして歩み、55年の短い生涯を終えるまでの作品は必ず二人の署名がなされていた。私達が抱くアアルトのデザインの根幹はアイノによってもたらされた、ということがよくわかる。

誠品生活ライブトーク会場
誠品生活

アルヴァがアイノと共に過ごし、世に残した建築やプロダクトの数々。その代表作を見ていきたい。


1.美しい波紋 イッタラ アイノアアルト

イッタラ アイノアアルト

私の母も大好きで実家でよく使っているイッタラのアイノアアルトグラスシリーズ。
石を水に投げた時に水面に広がる波紋からインスピレーションを受けて作られたもの。スウェーデン語で波紋を意味する「ボルゲヴリックシリーズ」は、ブルー色が特に豊富でグレー系の色みも含めて、あらゆるシチュエーションに合うグラスだ。
2人のデザインの源は、フィンランドの雄大な自然によるものだという話しがあったが、正に湖面に白鳥の羽の羽ばたきによってできたような、そんな映像を想像できるプロダクトだ。

2.スタッキングも秀逸 スツール60

スツール60

1935年アイノはアルヴァらと共に家具メーカーのアルテック社を設立する。
彼らは多くの椅子を設計したが、シンプルで普遍的な極みと言えるのが「スツール60」だ。フィンランドで採れるバーチ材による3本のL字曲木脚と円形の座面。スタッキングが可能で、広く長くあらゆるシーンで使われる椅子だ。
アアルトでなくても作れたんじゃない?と疑うほどのシンプルさだが、この寸法感や脚、座面の厚みとフォルム、スタッキングしたときの佇まい、全てにおいてアアルト唯一のもので他は「似て非なるもの」となってしまう圧倒的な差ができてしまう。


3.自然に溶け込むヴィボルグ図書館の意匠

講堂ホール

彼らのプロダクトから建築に至るまで共通して言えることは、自然と調和していていつも優しい、ということ。
現在はロシア領でなかなか行くのが難しいヴィボルグ図書館。1927年にコンペで勝利しながらも長らく延期となり、その間にアアルトの作風も古典主義から機能主義へと転換し、1935年にその変化を象徴するかたちで完成した。
現代的なデザインのファザードや空間のレイアウトの中に、使いやすく有機的なフォルムの階段手摺や音響効果を高めるための波状にうねる木製の天井。
内と外や壁と天井の境目を曖昧にして、空間を包み込むようなデザイン。フィンランドでは人にとっての自然がとても密接だ、ということがよくわかるデザインだし、それらに日本人含む外人も深く共感する。








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