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変態のマッチレビュー

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私が見て印象に残った・気になった試合にフォーカスしたレビューを纏めております。
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記事一覧

DO YOU WANNA DANCE WITH ME?~2024.4.11『拳王vs清宮海斗』~

はじめに 2010年代後半から、プロレスリング・ノアの看板カードに定着したライバル関係がある。 それは、『拳王vs清宮海斗』だ。 2019年11月の両国国技館メイン、日本武道館でもタイトルマッチが複数回組まれるなど、近年はビッグマッチでの対戦が多い両者の一戦は、これまでに11回実現した。 戦績では7勝4敗で拳王が勝ち越しているものの、直近2試合はGHCヘビー級王座戦で清宮が連勝中。 過去にGHCヘビー級王座戦5回、GHCナショナル王座戦2回と度々タイトルと団体の舵を

約束~2024.3.30『中嶋勝彦vs安齊勇馬』~

はじめに「あの三冠戦は何なんだあ!!!あれをどう思う!?」 2024.3.30、東京都大田区。 プロレス観戦終わりに偶然遭遇した年長の知人に会うや否や、肩をゆすられて、いきなりこう言われた。 咄嗟に「これは一緒に飲みに行かないといけないな…!」と察した私は、知人に提案する形で、蒲田駅近くにある中華料理屋まで移動する事にした。 会場から店までの移動中に交わした知人との話は、この日の全日本プロレス大田区総合体育館大会で組まれたメインイベント・『中嶋勝彦vs安齊勇馬』で占め

squeeze~2024.2.28『拳王&大和田侑vs清宮海斗&大岩陵平』~

はじめに先日、私がプロレスを観戦しに行った時に、カメラで撮影した1枚がある。 SNSで観戦時の写真を投稿すべく選定していた時に、この写真を見つけた。 そして、写真を見た時に、ふと『スクイズ』という言葉が頭に浮かんできた。 スクイズという単語を調べてみると、このような意味が出てくる。 「スクイズ」という言葉が私の脳内に浮かんできたのは理由があった。 以前、タッグマッチなどでコーナーに控えている選手が、相手の首や関節を絞り上げているパートナーの選手に対して「スクイーズ!」

心臓が止まるまでは~2024.2.7『坂口征夫vsHARASHIMA』~

はじめに他人の引退試合というものは、ファンが当事者に接している面積が広ければ広いほど、未練と後悔の割合も自然と多くなっていくものかもしれない。 私は一介のファンでしかないけれど、いつしかそのような感覚で(些か勝手ながら)他人の引退試合を捉えるようになっていた。 怪我が原因で現役を続けられなくなった。 新たな道に進む。 大体そのような理由で引退していく選手を客席から見送る度に、「もっと試合を見ておけば良かった」、「将来楽しみだった」という感情ばかり溢れ出てくる。 私自

Still Changing~2024.1.21『Good Looking Guys vs 清宮軍』~

はじめに2024.1.2、東京・有明アリーナ メインイベントの『丸藤正道vs飯伏幸太』が終わり、どこか重苦しく淀んだ空気が場内に立ち込める中、リング上に現れたのはジェイク・リーと清宮海斗だった。 怒気を孕んだジェイクの声が場内に響き渡った瞬間、会場は大歓声に包まれる。 その歓声は「よくぞ指摘してくれた」という、観衆からのジェイクに対する敬意を感じ取れるものだった。 続く清宮もジェイクからバトンを受ける形でマイクを握ると、有明アリーナにはメイン前までのような歓声が戻っ

現実と残酷を受容する事について~2024.1.13『拳王vs潮崎豪』~

はじめに圧倒的な敗北感と、突き付けられた容赦ない現実。 2024.1.13に後楽園ホールで行われたプロレスリング・ノアのGHCヘビー級王座戦『拳王vs潮崎豪』を見た、私の率直な感想である。 私自身、この試合は潮崎の事を応援する立場で見ていたし、実際現地で喉が擦り切れるくらい潮崎に声援を送った。 私以外にも、潮崎の名前を叫ぶ観客の姿は少なくなかった。 しかし、会場の声援は、最後まで拳王支持のムードに傾いていた。 会場から自然発生したテンポの速い拳王コールは、私が叫んだ潮

既成着てる?個性着てる?~2023.12.31『中嶋勝彦vs宮原健斗』~

はじめに 2023.12.31全日本プロレス国立代々木競技場第2体育館大会 新型コロナウイルス禍以降も安定して後楽園ホールの動員が1,000人を超える数少ない団体・スターダムですら苦戦を強いられている印象の強い代々木第2体育館。 しかも大晦日という日程にもかかわらず、プロレス団体鬼門の地で観衆2,687人をマークした事実は全日人気の高さを窺わせるものがあった。 ただ、私はこの興行に対して一点、悲しく感じる箇所があった。 それは、この日のメインを締めた中嶋勝彦が、20

責任~2024.1.2『丸藤正道vs飯伏幸太』~

はじめに2024.1.3、私は相原駅から徒歩十数分の場所で行われた『相原プロレス』を観戦した。 無料のイベントプロレスではあったものの、2試合はどちらも内容が素晴らしく、プロフェッショナルなレスラー・関係者の方々は日ごろの努力と鍛錬が凄い事を実感する機会になった。 プロレス観戦をし始めて2024年で9年目を迎える私だが、今更になって何故このような感想を抱いたのか? それは、前日に大会場で見たメインイベントの内容が、「プロフェッショナルとは何か?」という事を問うような、

一石を投じる 方舟 midnight sun~2023.12.10『潮崎豪&丸藤正道&拳王vs稲葉大樹&マサ北宮&征矢学』~

はじめに2023.12.10に行われたプロレスリング・ノア キラメッセぬまづ大会。 メインイベント終了後に拳王がぶつけた怒りは、有明アリーナに向けた強い決意表明となった…。 沼津大会の約1週間前に行われた、プロレスリング・ノア2023年最後のビッグマッチ・12.2横浜武道館大会。 この日のメインイベントは、既に2024.1.2の有明アリーナ大会で決定しているGHCヘビー級王座戦『拳王vs征矢学』の前哨戦。 拳王の師にあたる新崎人生と、征矢の師にあたる藤波辰爾が、かつての

ユー・メイ・ドリーム~2023.7.15『中嶋勝彦vs宮原健斗』~

はじめに試合が決した瞬間、私は思わず会場で快哉を叫んでしまった。 2023.7.15プロレスリング・ノア後楽園ホール大会で組まれた『中嶋勝彦vs宮原健斗』。 佐々木健介の愛弟子である2人は、健介オフィス退団後、宮原は全日本プロレス、中嶋はプロレスリング・ノアを主戦場に活躍。 その後、因縁がありながらも絡みの無かった両者が再び交わったのは、武藤敬司引退興行の行われた2023.2.21だった。 あれから約5ヶ月後に決まった、実に10年振りという両者のシングルマッチ。 しか

Spirit Inspiration~2022.10.30『清宮海斗vs藤田和之』~

はじめに清宮海斗という名の船は、未だ発展途上である。 鈴木軍が侵攻中だった2015年末、荒波の中で出港した一隻の船は、2017年の海外遠征、2018年のタッグリーグ制覇→タッグ王座戴冠→シングルリーグ優勝を経て、2018年12月に史上最年少でGHCヘビー級王座戴冠を果たした。 トップレスラーの座に向けて進路を取る清宮だったが、2020年1月の王座陥落以降、約2年以上にわたり荒波に揉まれ、苦難の時を過ごしてきた。 厳しい結果や苦難が襲う幾度もの嵐を乗り越えて、清宮に光が差

永遠と刹那のカフェ・オ・レ~2022.10.23『樋口和貞vs坂口征夫』~

はじめに2015.6.28、私は後楽園ホール大会にいた。 2015年春にプロレスにハマった当時の私は、色々な団体を見たいという好奇心に溢れていた。 新日本プロレス、全日本プロレス、プロレスリング・ノアを生観戦した後、私は【飯伏幸太が所属している】という理由だけで、DDTプロレスリングを見に行ったのである。 この日は『KO-Dトーナメント』の準決勝&決勝戦。 この準決勝で実現したカードの一つが、『樋口和貞vs坂口征夫』である。 煽りVで流れたBRAHMANの『THE V

"企画モノ"を超越した新人デビュー~2022.10.23『上谷沙弥&妃南vsフワちゃん&葉月』~

はじめに2022.9.11、プロレス界で話題となったニュースがある。 フワちゃんのプロレスデビュー。 後に、これはテレビ番組(『行列のできる相談所』)の企画であると明かされ、それに向けて4ヶ月半もの練習期間を積んだという。 前置きすると、私は、フワちゃんの事をあまり知らない。 普段テレビを見ない私でも、かろうじて名前は聞いたことがある人だけど、彼女がYoutuberだという事は今回のプロレスデビューで初めて知ったレベルだ。 今回のプロレスデビューに対し、「4ヶ月半の

若人の 活気と熱気に 満ちた磁場~2022.10.15『星野良&佐藤嗣崇&北村彰基vs馬場拓海&松永準也&太嘉文』~

はじめに「プロレスリングZERO1所属の若手選手は、過小評価されている」 何度か試合を生で見ている中で、私自身感じたことだ。 ZERO1の団体規模は決して大きくないし、過去には主力選手の退団でピンチを迎えた事もある。 田中将斗や、現在欠場中の大谷晋二郎の存在感に加え、2021年は外敵に管轄しているベルトが流出したこともあって、「若手が不甲斐ない」と言う意見も見かけたりした。 でも、果たしてそうなのだろうか…? 冒頭の私見に至った理由は、極めてシンプルだ。 今のZER