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食養生の話②〜自然栽培の野菜を買う理由〜

今日は今食べている野菜の話をしようと思うが、その前に、私の食養生の全体像をざっくりと説明しておこうと思う。

私はがんの再発がわかってから食生活を変えた。
精製した炭水化物を避け、米は玄米に、パンもなるべく全粒粉に、直接糖といわれる吸収の早い砂糖類は全てやめて、吸収が遅く血糖値が上がりづらいというアガペーシロップなどを少し使う程度にした。

加工食品ではなるべく添加物の入っていないものを選ぶ。醤油や味噌は天然醸造のものを使い、塩はたくさんミネラル分が含まれるといわれる天然塩、なるべく釜炊きもしていない天日塩や岩塩を使っている。

油も加熱で酸化しやすいサラダ油はやめて、加熱の場合はオリーブ油、サラダなどにかけるのはこのオリーブ油の他、亜麻仁油やえごま油を使う。亜麻仁油やえごま油はオメガ3系といわれる脂肪酸で、細胞膜の材料になるなど大切な脂肪酸だが、体内で合成することができないため、食物から摂る必要がある。青魚などにも含まれるが、魚を食べることが減っている昨今、亜麻仁油やえごま油が助けとなるのだ。

魚はホルモン剤などが投入された養殖のものはなるべく避けて天然のものを、肉は食べる頻度を減らし、これも飼育時にホルモン剤を使っていないものを取り寄せるようにした。
そして、野菜は「自然栽培」のものを取り寄せ、足りない分は有機栽培のものをスーパーで買い足す。

がんの再発から最初の2年ほどはこれらを徹底的に守って食事した。
外食もなるべく控え、友人と会う時も青山のクレヨンハウスなどでオーガニックランチをしたり、徹底的に体に良いと言われるものを食べていた。
その頃のエンゲル係数は半端なく、貧乏なくせに食べるものだけはセレブだと笑っていた。

しかし、時が経つにつれて、さらに経済的にも苦しくなり、根気も続かなくなり、上記の食生活は少しずつ崩れていった。このところ、なるべく上記に近い食生活に戻そうとはしているが、経済的にも精神的にもあまり無理はしないように、ゆるーく上記を意識し、「まごわやさしい(まめ、ごま、わかめ=海藻、やさい、さかな、しいたけ=キノコ類、いも)」を基本にした食生活をしている。

現在も続けているのは、お米は玄米を食べること、時々五穀を足す。砂糖類は使わない。醤油、味噌は天然醸造、塩は天日塩か岩塩、油はオリーブ油と亜麻仁油のみ、養殖の魚を避け、肉はたまにしか食べない。加工食品の添加物はある程度は意識しつつ、そこまで厳密には守っていない。ちくわや魚肉ソーセージ、インスタントの玄米ラーメンや蕎麦なども買っているが、なるべく加工食品は使わず、素材から自分で調理したものを食べるようにしている。

そしてもう一つ、野菜であるが、これはまだ「自然栽培」の野菜を取り寄せ続けている。足りないものに関しては、近所のスーパーの普通の野菜も買っている。

というわけで、今日は8年前からずっと取り寄せている自然栽培の野菜を紹介したいと思う。

まずは自然栽培というものについて説明する。
オーガニックと言われる野菜には有機栽培、自然栽培、自然農法、自然農などがある。ざっくりいうと、有機栽培は化学肥料や農薬を使わず(JASの規定で使って良いものもあり、その範囲ならOK)、堆肥など生物由来の肥料を使って栽培するもの。「自然」という言葉がつくものは農薬はもちろんのこと堆肥などの有機肥料も使わずに作られた野菜だ。

「自然農法」「自然農」「自然栽培」は、最近まで同じ意味だと思っていたが、それぞれ微妙な違いがあることを最近認識した。

「自然農法」というのは私の故郷愛媛県で福岡正信という人が提唱した農法で、これはまさに自然に全てを任せる農法。泥団子に野菜の種を混ぜ、土の上に置いたら、その後は完全放置する。土地は耕さない、雑草も刈らない、水もやらない。旱魃になるような天候の時は別だろうが、そうでなければ、乾いた土地に植えられ、肥料も与えられない作物は自分で一生懸命水を求めて根を伸ばし、栄養分を土壌から必死で吸い上げようと努力するので、美味しく栄養価の高い作物になるというのだ。ただ、収穫量は少ないので、なかなか一般的には広まらなかった。

「自然農」というのはもう少し人の手が入る。やはり土地は耕さないが、雑草などは抜いて、その場に伏せて置いておき、微生物が勝手に分解して土地の栄養となる。

「自然栽培」というのは「栽培」というくらいで、さらに人の手が入る。土地を耕す作業や草を刈って畑に撒いたり、水やりなどを行うことである程度の収量を確保する。無農薬無肥料の野菜栽培を仕事としてやっている人は多くがこの自然栽培だ。

私が取り寄せているのは最後の「自然栽培」。
食生活を変えようとしていた2014年の秋、いろいろ調べる中で、自然栽培というものがあるのを知った。

自然栽培野菜は農薬を使った慣行栽培の野菜よりビタミンやミネラルが多く栄養価が高い。以前、農薬を使った野菜というのは残留農薬があるから良くないと思っていたのだが、農薬をかけることが作物のストレスとなり、生きるために自らのもつミネラルやビタミンを消費してしまうため、栄養価も下がってしまうらしいのだ。

有機野菜ならどうかというと、農薬のストレスはないが、有機肥料を与えすぎるると、野菜が栄養過多、人間で言えばメタボになる場合があるという。野菜に肥料をたくさんやりすぎると、人間の体にはあまり良くない硝酸態窒素という成分を土壌からたくさん吸収してしまう場合があるそうなのだ。この硝酸態窒素、野菜には必要な成分。しかし、それを取りすぎたものは人間にとってはあまり良いものではない。
何事もほどほど。人間と一緒で、野菜も腹八分目くらいが最も健康になるらしい。

では、肥料をまったくやらない自然栽培の野菜は、どこから栄養をとるのかということだが、本来、植物は土壌にあるミネラルを取り込むことで十分だそうだ。その土壌にいる微生物が、枯れ草などを分解して、勝手にミネラルなどの養分を生み出してくれる。人は土中の微生物が分解しやすいワラや枯れ草などを土地に撒いてやればいいだけなのだ。そして、その微生物豊富な土壌で、農薬のストレスも受けず、食べ過ぎでメタボにもなっていない健康な野菜が育つ。

というわけで、そんな健康な自然栽培の野菜を探したのだが、店頭にはほぼ並んでいない。作っている農家も少なく、今はまだネット通販がほとんどだ。ネットでいろいろ調べ、私が取ることにしたのは山口県下松市で野菜を作っている「田中野菜」という農園だった。
東京での3年の会社員生活ののち、オーストラリア留学でオーガニック農業に出会い一念発起、東京から移住した田中さんとその奥さんの夫婦二人で営んでいる。

私は山口県という場所に縁はないし、他にも自然栽培の野菜の通販をやっているところはいくつかあったが、夫婦二人で都会から移住し、試行錯誤しながら自然栽培に取り組んでいるというのをホームページで見て、応援したいという気持ちもあり、田中野菜の野菜を取ることに決めた。

私がここの野菜を取り始めた2014年の秋。田中さん夫妻は農業を始めてまだ4年だったが、2011年に起こった東日本大震災の影響で、西日本の野菜を求める人も多く、注文は増えてきていた。当時は運良く、まだ募集枠が空いていたが、今は枠がいっぱいで、一旦募集を休止しているようだ。

私が取ることにしたのは1~2人家族向きの旬野菜セットS。毎週1回、5~7品の野菜が入って2160円+送料。最近は送料も高いので、月に5回送られてくる月は、15000円ほどの支払いとなる。野菜としてはかなり高価だが、その栄養価の高さと農家応援の意味でずっと取り続けている。

そんな田中野菜から送られてくる自然栽培の野菜は旬のものばかりだ。
旬がゆえ、一定期間、毎週同じものばかりが送られてきて飽きる時もあるが、それは自然の摂理。今の一年中なんでも選べる方がおかしいのだ。

農薬や肥料を使って生産調整できないため、野菜の出来は天候に大きく左右され、送られてきたボックスに溢れるほど入っていることもあれば、え、これっぽっちと思うこともある。野菜の形や大きさも揃っておらず、スーパーならば受け入れないだろうというサイズのものも多い。

そして、田中野菜の最も大きな特徴が「在来種」や「固定種」という昔からの種を繋いで作り続けられた品種のものが多いということだ。現在、慣行栽培で作られている野菜はほとんどが「F1種」といわれるもの。味がマイルドで、収量が安定し、形や大きさも一定に育つように品種改良されたものだ。しかし、この種は一代限り。F1の野菜から種をとっても、その種から次の世代は生まれない。よって、現在の慣行栽培の農家は毎年、種屋からF1の種を買って、栽培を続けている。かつてはどこの農家も「在来種」を栽培していたが、成長の速さや扱いやすさから、どんどんF1に乗り換えていった。

親の世代の人が、昔の野菜はもっと味が濃かったと言っているのをよく聞くが、毎週送られてくる「在来種」の野菜はまさにそんな野生味に溢れた味の濃い野菜だ。葉物野菜はちゃんとエグみもあって味がはっきりしている。きゅうりなどは見るからに現在スーパーに並ぶものと品種が違うのがわかる。今のに比べて水分が多く太い。水分が多いので、シャキシャキ感は最近のきゅうりにかなわないし、日持ちも短い。オクラは沖縄の丸いオクラで、周りの毛はかなり剛毛。生命力が強そうだ。しかし、塩でしっかり洗わないと毛がちくちくすることもある。空芯菜などは結構茎が筋張っていて、歯に引っかかりやすい。人参は葉っぱがメインの時もあって、その食べ方に迷う。そんなだから、食べづらい野菜だと思う人も多いんじゃないだろうか。私自身、茎の硬い空芯菜はつい最後まで余らせてしまって、半分くらい冷蔵庫の中で枯らしてしまうこともあった。でも、こういう野生味溢れる野菜こそ、栄養分も多く、私たちの体には良いはずなのだ。ずっとこういう野菜を食べてきて、毛深いオクラにも慣れてきた。さつまいもなども最近の糖度ばかりが高い芋と違って、ほくほくとして甘すぎず、私にとっては嬉しい限り。

田中野菜が専門機関に依頼して小松菜の栄養成分を分析したところ、ビタミンCは平均値の約2倍、抗酸化力は3倍、健康に良くないと言われる硝酸態窒素量の指標となる硝酸イオンは36分の1だったそうだ。

また、ご存知の方も多いと思うが、F1の種は先ほども書いたように一代限りで、次世代を作れないため、循環型の持続可能な農業がやれない。もし、種屋が種を売ってくれなければ、農家は翌年からその作物を作れなくなってしまう。海外からの輸入の種など、もし輸出をストップされたら、日本は食糧危機に陥ってしまう。
自家採種できる「在来種」を栽培することは、日本の食糧安全保障上も大切なことなのだ。なのに、どんどん日本の農業からは「在来種」が消えている。

私が田中野菜を応援したいと思ったのは、こういう在来種の品種を栽培しようとしているからでもある。

効率化や生産量確保ばかりを考えて、本来の野菜の性質を無視した農業は、いつ人間にしっぺ返しをしてくるかわからない。それは魚の養殖や、畜産業でも同じことだ。よく問題視される遺伝子組み換えも、今は大丈夫でも、孫やその先の代にはどうなるかわからない。

病気をきっかけに食べるもののことを調べ、自分の健康のために役立てようとしたが、そこには病気を治す以前の、日本の農業の問題点が横たわっていた。オーガニックとかエコとか神経質にこだわりすぎるのもどうかと思うが、逆にそれを「意識高い系」などと揶揄して批判するのも、それは人の健康など考えず金儲け主義の農業を行うものの思う壺だ。

まだまだオーガニック食品は値段も高いし、誰もが常に利用できるものでもない。それに慣行栽培の野菜とて、ちゃんと体を支える栄養にはなってくれるし、否定されるものでもない。私はがんという特別な状況を抱えてしまったがゆえに、少しでも体に負担がなく、栄養価の高いものを食べようと思っているだけだ。
皆、それぞれが自分の状況に合わせて食べ物を選べばいいと思う。

けれど、今の世の中を見ていると、値段が安いことと便利を求める風潮から、まともな食べ物を作ることを放棄しているようにも見える。安ければ栄養価くらいちょっと少なくてもいいのか?出来合いのお弁当を昼まで保たせるために添加物をふりかけてもいいのか?

「ジャンク」というのはたまに楽して悪ぶれるから楽しいのであって、日常がすべてジャンクになってしまったら、それはただ体に悪いだけだ。

話が自然栽培の野菜から飛躍してしまったが、私は健康になるためだけでなく、こんな思いで自然栽培の野菜を取り寄せ続けている。

田中野菜のホームページはこちら。

現在は定期購入の追加募集はしていないようですが、農業の様子は伺えます。

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