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日曜劇場「VIVANT」から考える① 〜「考察祭」を前提としたドラマ

ずっと、日曜日にやってた「日曜日の夜ぐらいは」というドラマについて書きたくて、かなりの部分書いていたのだが、このところ体調があまり思わしくないのもあり、まとめきれないままアップできないでいたが、その前に勢いで書いときたいことを思いついたので、そちらを今回は書こうと思う。それもちゃんとまとめられるかは不安ではあるが、まあ書き始めてみる。

TBSが1話1億円と言われる巨額の予算を投じて、勝負に出たと言われる今期の日曜劇場 「VIVANTヴィヴァン」。皆さんは見られているだろうか?UーNEXTと組んで配信もすることで予算を確保したと言われているが、Netflixや Amazonプライムと組んでオリジナルドラマを配信したり、TBSもドラマは本格的に配信シフト。そして、その機会に乗じて、制作者はこれまでやれなかった規模の作品制作に意欲を燃やしてるようだ。

おもな出演者はみな主役級。1ヶ月のモンゴルロケに、カーチェイスがあったり、爆破があったり、アクションものとしても最近のドラマにない規模だ。日曜劇場で「半沢直樹」をはじめとしたヒット作を連発してきた福澤克雄監督の定年卒業制作になるらしく、これまでに見たことのないドラマを作ると意気込んでいるらしい。そんな前評判もあって見始めた。

しかし一方で、事前の広報というか、内容に関する事前情報がほとんどない。そもそもVIVANTというタイトル、何語でどういう意味だ?主要キャストと思われる役所広司、二宮和也、松坂桃李の役名と役柄さえ事前には何も発表されていない。謎だらけである。

そして、いつのまにかもう5話、物語は次回から後半戦だ。3話目くらいまでは謎ばかりが多すぎて、アクションシーンのハラハラと砂漠の風景だけが見続けるモチベーションとなっているようなところがあった。制作者が何を描きたいのかが理解できず、モヤモヤしたまま、もしかしたら単なるアクションエンタメだけで終わってしまうのではないかと、期待がしぼみかけていた。しかし、モヤモヤは5話で一気に雲散霧消した。それまでの謎の多くが回収されたのだ。スッキリ感は半端ない。そして、そこで分かったことを元に後半に物語が紡がれていく、その道筋がぼんやりと見え始めたのである。

そこで、VIVANTに対する世間の評判はどうなのだろうと思い、ググっってみたら、なんと、Youtubeには「VIVANT」に散りばめられた多くの謎を考察する考察VTRが大量にアップされていた。もしかしたら、前半戦が謎だらけだったのは、ネット上に考察が上がることを見越して、それと連動して人気を盛り上げようとする作戦だったのかもしれない。中にはドラマの制作班と契約して考察VTRをアップしている人もいるかも、、、。まあ、どっちにしろ、どの考察VTRも何度もドラマを見返して、設定や役者の細かい演技、セット美術などから緻密に謎を読み解こうとしており面白い。中には荒唐無稽な都市伝説や陰謀論に触手を伸ばすものまであった。しかし、5話で明かされた謎は半分以上が考察隊の予測を裏切るもので、さすがというほかなく、ドラマ本編への期待は大きくなっていった。

テレビの視聴率はまだまだだが、ネットでの考察は盛り上がり、Tverに公式アカウントから「考察隊への挑戦状」というVTRがアップされるほど。しかし、これも最初から計算の上だろう。聞けば、SNSの公式アカウントや、なんと、売ってる番組グッズにもドラマの謎を読み解くヒントが隠されているらしい。例えば、VIVANT饅頭というものがある。確かにドラマの中に饅頭は登場しているが、売ってる饅頭のどこに謎を解く鍵があるのか?考察隊はそういう謎解きにも挑戦してて、もうVIVANT制作班の思う壺だ。

TBSは「逃げ恥」の時も「逃げ恥ダンス」のショート動画で話題をさらったが、ネットの使い方では地上波各局の中では一つ頭抜けている。なんでもかんでも話題性と商売に結びつけようとしている。でも、この下世話さこそがテレビなんだろう。

当初、「これまで見たことのないドラマを作る」という監督の意気込みから、昨今の韓国映画をも凌ぐ、ハリウッドでも通用するようなドラマを目指すのかと思っていたが、福沢監督は生粋のテレビマンなのか、あくまで“テレビドラマとして”という前提は忘れていなかった。

とはいえ、作品としても評価されるものを作れればそれに越したことはない。私がこれまでの放送を見ながら妄想した今後の展開がいい形で成立したら、これまでの日本のドラマや映画にはなかったものになるはずで、それは韓国映画の「パラサイト」や「タクシー運転手」凌駕する、自国の現代史の闇をアクションエンタメでハラハラドキドキ魅せるスケールの大きい作品になるはずだ。

実は、私自身、VIVANTの演出の中に、そうした意図を感じさせるいくつかの“匂わせ”を感じていて、そこから勝手に壮大な妄想を膨らませ、それもドラマを見る際の一つの楽しみとなっていた。

たとえばBGM。音楽は千住明によるオリジナルのほか、映画「地獄の黙示録」でも使われたワーグナーの「ワルキューレの騎行」や浅田真央がバンクーバー五輪で使ったラフマニノフの「鐘」などのクラシックも使っている。映画音楽レベルのクオリティの高さなのだが、オリジナルの曲で、「あれ?これスターウォーズじゃね?」と思わせられる曲が何ヶ所かで使われていた。

覚えているところで言うと、5話で堺雅人の乃木憂助とキムラ緑子演ずる人物が茶店で話をする場面で使われていた曲。この曲はほかにも、乃木が窮地を逃れ、ほっとしているシーンでも使われている気がするのだが、ちゃんと確認はしていない。ここにも何らかの匂わせがあるのだろうか?

そう思って、ストーリーや登場人物を改めて見てみると、主人公乃木は幼い頃、砂漠の国で何者かに襲われ父母を亡くし(父は生存しているとわかる)、孤児だったとか、スターウォーズ4のルーク・スカイウォーカーに設定がなんとなく似ている。そう思ってみると、二階堂ふみはレイア姫に、野崎はハンソロに、その手下のドラムはチューバッカに見えてくる。ということは、このドラマは背景にスターウォーズで描かれたような父と息子の物語や、善と悪のせめぎ合い、フォースに匹敵する目に見えざる力の話が隠されているのだろうか?

しかし、もう前半戦が終わった時点でそれほどスターウォーズ色は感じないし、これが物語の主たるテーマとなるわけではなさそうだ。では、このドラマは何を描こうとするのか?

Youtube上の考察隊はさまざまな読みを披露しているが、それは設定における謎解きばかりで、実はこのドラマが何を描こうとしているかという本質に迫る考察は少ない。ほとんどないと言っていい。私が見た範囲では、確か今後のストーリーを予想しておられる方が1人いたように思う。その予想というか、こうだったら面白いのにというその方の想像は、確かに面白いが、かなり荒唐無稽なものでもあった。

その方曰く、VIVANTの総合演出であり、今回はオリジナル脚本も手がける福澤克雄氏は、「半沢直樹」など劇画チックな演出で知られるが、面白さのためには都市伝説のような話も取り入れかねない演出家であるらしく、世界的な映画祭で賞を取れる作品より、多くの人に面白く見てもらえる作品を作る生粋のテレビマンだとのこと。ということは、あくまでも最大公約数の視聴者を想定して、面白がってもらえる方向へ行くのだろうか。

私は当初、監督が「見たことのないドラマを」と抱負を語っていた時、アクションエンタメとシリアスな物語を両立するものになることを期待していた。ネタバレになりそうなので詳しくは書かないが、ドラマの設定に散りばめられた要素から考えると、この「VIVANT」は「タクシー運転手」的な自国の現代史の闇に迫るシリアスな作品になる可能性だって考えられると思っていた。しかし、ここに来て、ちょっと後半がどういうものになるか読めないでいる。残りたった5回のストーリーに、日本現代史の闇まで盛り込むことは難しいのではないかとも思うし、、、


3話までしか見てない方にとってはネタバレになるが、「半沢直樹」での「やられたらやり返す!倍返しだ!」の決め台詞にあたるような「VIVANT」乃木憂助の決め台詞は、「美しい我が国を汚すものは何人たりとも許さない」というものだろう。この言葉からわかるように、乃木という男は狂信的とも言える愛国者のようだ。制作者が乃木大将と憂国を思わせる乃木憂助などという名前をつけたことからもそれは明らか。だとすると、このドラマでは『日本人の愛国心の正体』というようなものが描かれてもいいだろうと思うし、実は、その辺の話は戦後日本の迷走を語る上で外せない話だとも思う。そんなことを考えていたら、そういえば、三島由紀夫が割腹自殺したのは、乃木憂助が生まれる何年前だったっけ?なんてことが浮かび、さらに、そういえば、TBSは3年前に「三島由紀夫vs東大全共闘」というドキュメント映画を公開していたなんてことも思い出した。それに、ドラマの中で乃木が所属していると4話で判明した組織は、都市伝説的にではあるが、現実にも存在すると言われており、その組織と三島由紀夫は思想を同じくしていたという話もある。なんだか興味深い話ではないか。

さらに、乃木の出身地が出雲であるとか、毎日、出雲大社と同じ大国主命を祀った神田明神にお参りしているとか、日本神話とか神道を思わせる設定がなされており(そのほかにも挙げればいくつかあるが、ここでは、なるべくネタバレも減らしたいので省く)、見るものにさまざまな展開を想像させる。

しかし、多くの考察隊の考察から考えると、また残りの尺から考えると、このドラマがフィクションの設定を利用しつつ、愛国心をめぐり日本神話や現代史の闇に切り込むディープな作品になるとも思えない。

果たして制作者はどういう作品にしようとしているのか?
私自身、このような文章を書きながら、何が言いたかったのかわからなくなってきている。でも、やはり、このドラマの要素や設定の中に、今の日本でこそ振り返り、ちゃんと考えるべき問題があるような気がしたから、このドラマの今後の展開に期待し、このドラマが何を描こうとしているかが気になってしまうのである。

考察隊が乱立し、色々このドラマを分析してはいるが、それはドラマの設定やシーンに隠された謎解きばかりで、このドラマが何を描こうとしているのかを考えようとする考察はほとんどない。さっきちょっと触れた、福澤監督は都市伝説方面に振ることもあるからなあと言われてた考察Youtuberの方が唯一、そこに触れていたくらいだ。

さて、6話以降、後半戦の「VIVANT」は何を描くのか、、、。
今期のドラマではやはり最も次回も見たいドラマの筆頭である。

ところで、「VIVANT」がこれまでに見たことのないドラマにしたいと宣言していたことで、同時に、日本の映像作品のこれまでの在り方や行末についても、ぐるぐる考えてしまった。ここに流れで書こうかとも思ったが、長くなりすぎるので、それは分けて、次回にアップしようと思う。もう少し、この話にお付き合い願いたい。

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