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下に合わせる形の「公正」で活力ある社会?

ちょっと何言ってるか分からない。

 ゴシップ誌の記事らしい見出しではあるが、「税制」と言う堅苦しくて大衆が興味を示さないであろう内容にも関わらず、ヤフコメやSNSで多くのレスポンス、それもできるだけ怒りを煽る方向で記せるのは流石で、記事そのものの評価は避けるものの、税制に興味を持たせる意味では有用だと思った次第である。

 上記記事にもあるように、個人事業主の税制優遇を一通り改悪して、今度はサラリーマンを狙い撃ちし、両者の分断を煽り、足の引っ張り合いでじわじわ増税する戦法は一理ある。

 最近ではインボイス制度が、個人事業主狙い撃ちな税制改悪との意見が、ネット上では多数派に映るものの、大衆目線だと、本来の取り扱いに厳格化されるだけで、いくら小規模事業者の懐が厳しいとはいえ、税制優遇ありきの経営は如何なものかと感じたことだろう。

 税抜方式の帳簿処理では、仮受消費税(収益)と仮払消費税(費用)の差分が、未払消費税(負債)となり、決算期末で確定させた額を、2ヶ月以内に納付するのが、ざっくりとした流れである。

 しかし、売上高が1,000万円以下などの、一定基準を満たした小規模事業者に関しては、納税義務が免除されている。つまりは売上で受け取った10%ないし8%の消費税分を納税しなくても良いのが、これまでの税法だった。

 インボイス制度は請求書に消費税を記載する=支払う旨を明示することを意味する。登録は任意であるものの、これを導入しなければ、免税事業者と取引する相手企業が、仮払消費税(費用)として処理できなくなるため、必然的に免税事業者と取引することで、事実上、消費税分のコストが上乗せされる。

 それ故に反対意見が多いものの、そもそも消費税導入時や、税率引き上げ時に反対するべきだったが、優遇措置があるからと強く反対しなかったツケが、今になってまわって来ただけのように映り、ここでのブーイングは見苦しいと思われているのが、恐らくサラリーマン側の温度感だろう。

 そして今回の給与所得控除や、退職所得控除の改悪も、インボイス制度の時と立場が入れ替わっただけで、構図は全く同じで、賃金労働者と個人事業主の溝は、埋まるどころか深まる一方だろう。

 そして現役世代が受け取れたであろうの退職金が、課税強化されそうになっているのを横目に、退職金と同じ賃金の後払いとも捉えられる、高齢者の公的年金等控除に関してはノータッチであるのが、いかにもシルバー民主主義である。

将来世代が将来に希望を持てる社会?

 そんな政府主導のパンピー同士の足の引っ張り合いで、一番下に合わせる形での公正な社会など、今よりも活気は削がれ、どうしようもなくよどんだ社会に前進するだけで、希望を持てるのは社会構造の最下層に位置する経済弱者だけだろう。

 将来像を煎じ詰めると、不労者が希望を持てる社会であり、いわゆる社会的に失うものがない無敵の人からすれば、全体が没落して周囲が自分と大差ない状況になった方が、社会に存在が認知される機会が増して、必要な支援が得られる確率が上がるからだ。

 弱者が支援を受けられるのは、相互扶助の理念を掲げる民主主義社会のあるべき姿とも捉えられるが、そのツケを払うのは納税者、つまりは勤勉に労働する現役世代に他ならない。

 結果として能力のある優秀な人ほど、国外に流出するのは自明の理であり、今後社会に出る将来世代、つまりは今の学生が20代〜30代のバリバリ働く年齢層が、見切りをつけて海外に行く背中を見て、日本に留まることに希望を持てるとは到底思えない。

真ん中はハズレ。上か下に突き抜ける。

 少なくとも今より中流が割りを食い、時間経過とともに没落していく、一億総中流社会に準えた一億総貧困社会での生存戦略としては、上下どちらでも構わないから突き抜ける覚悟を持つことだろう。

 誰もが認めざるを得ないような成功者になるために必要であろう、突出した何かを持ち合わせていない自覚があったり、起業などで一発当てる気もない人は、学校を卒業して目的もなく賃金労働者となるが、それが最も中途半端で一番良くないのは確かだろう。

 幸いにも日本は現時点では、典型的な弱者を切り捨て御免するほどの冷酷さを持ち合わせている訳ではないため、ブラック企業やブラック職場にしがみついて、心身を病むくらいなら、無理せずサクッと辞める経験をして、落ちるところまで落ちてみるのもひとつの手ではないだろうか。

 ストレス過多から20代半ばで体が壊れた経験者として、心身を病むと、それこそ社会復帰に年単位の期間を要する可能性がある訳で、失業のリスクよりも遥かに大きいように思う。

 私は新卒で入った企業を、転職先が見つかったからと、ものの数年で去っているが、一度会社を辞めた経験があると、失業したらこの世の終わり的な、新卒で1社しか経験していないサラリーマンが思いがちな先入観や幻想は砕け散る。

 そのため、興味がある人はやり直しがきく時期に経験しておくと、人生など案外どうにでもなるものだと腹落ちできるだろう。どん底に落ちたら、自分から更に掘り進めてみる位の、イタリアンジョークが飛ばせる陽気さが、今の日本社会には必要だとつくづく思う。


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