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最近の金融市場動向(2023年2月)

迷惑動画で時価総額168億円下落。

 今月、大手回転すしチェーンのスシローにて、ペロペロ騒動が一躍話題となり、運営会社であるFOOD&LIFE COMPANIES(3563)の時価総額が1日で168億円下落したことが話題となった。

 運営側が謝罪を拒否し、毅然とした対応をすると表明したことから、SNS界隈では168億円の賠償責任ガーと盛り上がった。当事者を擁護する意図はないが、時価総額下落分の168億円全額が賠償責任となるのは現実的ではない。

 そもそも、時価総額とは株価×発行株式数であり、FOOD&LIFE COMPANIES(3563)の発行株式数は116,001,900株(2022年9月30日時点)となっていることから、逆算すると株価が144.8円程度下落した格好で、googleファイナンスの株価が1/30は3,015円に対して、1/31は2,870円と145円下落していることからも、時価総額168億円の計算は間違っていない。

 しかし、株価が1日で145円下落したうちの、いくらまでが直接的な騒動による風評被害を含めた部分で、他の要因による下落ではないのかなどの変数が多過ぎることから、被害を証明することは困難で、騒動後に直接的に店舗が減収した金額の一定部分が、賠償責任としては妥当な線のように素人目では思う。

 それに株価というのは先行指数故に雰囲気で動きやすい。ペロペロ騒動がSNS上で拡散されたことにより、投資家が店舗全体で閑古鳥が鳴くだろうと判断した売りが重なり、1日で145円下落したが、その後の2/16には3,675円と事件前よりも株価が上がっているが、多くはその点に触れられておらず、本当にペロペロ騒動で145円下がったのか、証明しようがないと感じる。

投資家の辞書に想定外の文字はない。

 本件で一介の投資家として学ぶべきことは、想定され得るリスクを出来る限り洗い出した上で、その銘柄に投じているかの一言に尽きる。

 鉄道員という職業柄、主に駅員ではあるが、その地域に生息しているであろう、ありとあらゆる人間を観察、時に相手をする羽目になり、絶句しながら社会の洗礼を受ける。

 何も鉄道駅は朝夕に会社員や学生、日中にフリーランスや年金暮らしの年寄りだけ利用している訳ではない。株主優待で全線パスを持つ資本家。国鉄でもないのに、なぜか無賃で乗っても許されると思っている議員。同じく無賃で乗っても許されると思っているナマポ、ホームレス。暗くなった頃に突然姿を現す自○志願者。水商売。反社…。

 24時間営業ではないし、年中無休と言っても交代しながらではあるものの、年間の労働時間でもある2,000時間前後も、同じ駅で勤めていると、世間一般のサラリーマンとして生きていれば、絶対に交わることのないであろう、世の中の知らなくても良い何かを、目にしてしまうケースは数え切れないほど存在する。

 故に潜らなければならない修羅場の数も、何かを守るためには、切った張った勝負が必要になるケースも多い。構造的にコンビニ店員や牛丼屋も似たような感覚だと思う。

 この国は学歴至上主義社会故に、大卒と非大卒で住んでいる世界が分断している。学力偏差値50以下の、本来であれば大学を出る必要のない人間は基本的に非大卒。出てもFランク大学。就くのは中小企業で正規雇用だとしても低賃金なコミュニティに属する可能性が高い。

 一方で中学から受験対策をして、附属高校や進学校に進み、そのまま良い大学を出て、有名企業の正規雇用に就いてしまうと、基本的に偏差値50以下の人間と交わることがなく、世界は自分たちのような高学歴な人間ばかりである前提で物事を考えがちである。

 すると経営に携わる高学歴エリートほど、自分たちの教養レベルを顧客が当たり前に有している前提でサービス設計をするから、今回のペロペロ騒動のようなセルフサービスの盲点を見落とす。

 視野を広く持つためには、世の中には様々な人がいることを知ることが重要だろう。私がいくら優待が魅力的でも、飲食業界の銘柄を積極的に保有しようと思わないのは、いわゆる下層階級の行動パターンを知っている影響が大きいのかもしれない。

次期日銀総裁候補、植田氏。

 2/10頃、経済学者であり日銀審議委員の経験もある植田和男さんが、次期日銀総裁の候補として浮上したことから、為替相場は一時円高方向に振れたが、緩和路線が踏襲されるとの見方が広まったことから、再び円安方向に振れ始めている。

 2/24、所信聴取と公の場で、現行の金融緩和を継続する方針を示した他、個人的にはこれまで日銀が買い入れてきたETFの処分が「大きな問題」と述べたことから、公開市場操作(買いオペ)の出口戦略という名の尻拭いを、在任中に行う可能性が高いのではないかと読んでいる。

 リーマン・ブラザーズの経営破綻の煽りを受け、2009年に7,000円台を付けていた日経平均株価は、2013年の日銀総裁交代以降、異次元金融緩和や買いオペの影響もあり下支えされ、バブル期を彷彿とさせる高値水準で推移している。

 それにより主要株主が日銀と揶揄される銘柄が、日経225構成銘柄の中に多数存在し、それらがこれまで下支えされていた部分を処分、すなわち売りオペを考えなければならない時期になる可能性が高い。

 景気に過熱感が出ている際にはインフレの抑制効果が見込めるかも知れないが、ご存知の通り日本社会は失われた30年と、年数だけが増え続ける低空飛行での横ばい状態が続いている。

 それでいて少子高齢化と、賦課方式の社会保障は制度疲労を起こしている。年金はアテにするな、老後資金は自前で用意しろと、「貯蓄から投資へ」をスローガンに掲げて、2024年から金融資産運用の非課税制度であるNISAを大幅拡充する。

 その矢先に、日銀が保有するETFの処分問題に取り組むとなると、株式市場は冷水を浴びせられる可能性が高く、パンピーの投資熱を冷ましてしまっては元も子もない。

 尻拭い感が強いとはいえ、その辺りを上手く回避して処分できるかが、一介の投資家としての懸念材料ではあるが、いずれにせよ健全な市場に変化していくことを期待したい。



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