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真実には痛みを伴う。

優しい嘘はつきたくない派。

 大きくなったら〇〇線の運転士になるんだ!電車を運転していると、背後からそんな子どもの声が聞こえる時がある。時間に追われる作業であるため、平時の余裕がある時に限定されるが、会社が用意している電車カードを渡したり、制帽の貸してみたりする。

 しかし、人口減少や自動運転化の到来で、決して先行きが明るくない斜陽産業である。一介の鉄道員としては、将来性のかけらもない職業に対して、夢を与えてしまうことに対する無責任さに、罪悪感を感じてしまい内心複雑だ。

 そんな葛藤を持ち合わせながらも、親切心で子供に手を振り、優しい嘘を付いた時に限って、「何か以上があった際に対応が遅れるのではないか」と心無い苦情を貰うのが世知辛い現代の常で、そうなれば上役になぜ手を振ったのか詰められる。

 どうでもいいことに時間を取られて、やってらんねぇと内心思いながら、機械人形のように淡々と作業してみると、今度は「子どもが手を振ったのに返してくれなかった」と苦情を貰い、後からどうして手を振ってあげなかったのかと詰められ、正直者ほどバカを見るからタチが悪い。

 これでは完全なるダブルバインドだし、顧客満足度向上のいち手段でしかないはずの苦情削減が目的化して本質を見失っている。長いものに巻かれないのは私の十八番で、矛盾を指摘して理詰めで反撃しては、言い負かすきらいがある。

 そのため、仕事人間相手にブランコを立ち漕ぎしながら「まさに呉越同舟。私の好きな言葉です。どうです?私と一緒に(ry」なんて会話を交わすことは生涯ないだろう。

 この手の反骨精神も、スト全盛期の労働組合であれば重宝されたのかも知れないが、時代が変わり御用組合化している昨今では、一部の組合役員に今どき珍しいと絶滅危惧種のような扱いを受けるが、それはそれで擽ったい。

 そんなことを考えている自分自身を客観視すればするほど、なおさら子どもたちには夢を与えず、厳しい現実を突きつけて壁になる女王の教室方式が、本当の優しさのように感じる今日この頃である。

自分が可愛いが故に傷つくことを恐れる。

 そもそも、なぜ組織の中で群れようとしないかと言えば、給与所得以外の所得、具体的には金融資産所得があり、事実上、生殺与奪権は自分自身の元にあるからだ。

 今やっているような、決められたことを、決められた通りに実行するだけの、代わりなんていくらでもいる単純作業など、いつ辞めて社会から逸脱しても、どうにでもなるだろうと思いながら日々を過ごしている影響が大きく、内情を知らない人からは、根拠のない自信に見えるのか不思議がられる。

 経済的に豊かになる法則は、収入を増やすか、支出を減らすか、資産を増やすか、運用利回りを上げるか。この4つしかない。お金持ちになった人の多くは、4つうちの何かが突き抜けていたり、自己管理能力が高く、全てをバランス良く愚直なまでに、時間を掛けて財を成していることが多い。

 宝くじの高額当選者のように、一山当ててラクに巨万の富を築いた人もゼロではないものの、お金持ちの中では極少数だろうし、お金の扱い方を心得ていない場合が多く、財産が永続しない傾向にある。

 個人的な肌感覚としては、なるべくしたお金持ちになった前者のような人が圧倒多数だと思われるが、世間一般のお金持ち像は後者で、羨む人よりも妬む人の方が多いと思うのは、世論で富裕層への金融資産課税強化の流れを見れば想像に難くない。

 私に言わせれば、自分が可愛くて傷つきたくないから現実を直視せず、お金について意識したり深く考えることなく、これまで惰性で過ごしてきたからこそ、ひと財産築けていないのではないだろうか。

人間は瞬間瞬間に、いのちを捨てるために生きている。

 そうして、ないものを持っている人に嫉妬するのは個人の勝手だが、その感情は自分に引き寄せるための原動力に使うべきで、他人の足を引っ張るために利用すべきではない。

 せっかく高所得者となっても税金を55%納めては、行政からの各種給付が対象外となり、仕方なく給与所得を金融資産所得に移転したら、今度はやれ一億円の壁だ、金持ち優遇税制だ、などと批難され、所得税や相続税の増税で狙い撃ちされる側の身になって考えれば、日本に居住することが罰ゲーム化して、海外に移住しようとも考えることだろう。

 所得税の税収額の約半分は、上位4%の人によって納められている事実がある。裏を返せば、我々96%のパンピーが重税だなんだ愚痴をこぼしたところで、所得税全体の半分しか納めていない。

 だから、高額納税者の負担は相当なもので、この4%の人たちを虐め続けて、全員が海外に移住してしまえば、日本の所得税の税収は半減してしまう。

 所得税は主に公務員の人件費や、社会保障に充てられている。税収が減って公務員ザマァと思うのは勝手だが、警察や消防、教育の質が今より低下すれば、治安はより一層低下するだろうし、医療も3割負担では済まなくなるかも知れない。雇用保険や労災補償、生活保護と言ったセーフティーネットが削られて、北斗の拳のような世紀末感が漂うくらいなら、あらゆる組織は腐敗しているかも知れないが、腐っているなりに一応機能している、混沌とした現状を望む。

 個人的に、どうせ経済規模や政府がシュリンクして、治安が維持できなくなるのであれば、まだお金持ちが気前よく国にお金を落としてくれる、カジノ法案を通した方がマシなように思えるが、これは主流派の意向に逆らう。

 何が正解かなんて、後になってみないとわからないが、多数決を鵜呑みにするのではなく、分からないなりに自分の頭で考えることが、他人とは違った考え方や、ものの見方を養うことにつながる。

 それは時に真意に気付き、痛みを伴うこともあるが、その痛みを感じながら生きていくのが、人生そのものではないだろうか。人間は瞬間瞬間に、いのちを捨てるために生きている。岡本太郎に敬意を込めて。


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