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個別株に挑戦するなら長期目線で。


まずは5年以上持ち続けられるか。

 昨年まで10月上旬頃になると、一般NISA口座を開設している証券会社から、ロールオーバーに関する連絡が来ていたが今年はない。2024年からNISAが新しい制度に拡充され、恒久化に伴ってロールオーバーの概念そのものがなくなるからだ。

 いつもこの時期になると、地合いを鑑みながら売却して別の銘柄に変えてみるか、このまま継続保有するか考えさせられるものの、前者が圧倒多数であり、裏を返せば5年後の自分が保有し続けたいと思えるような銘柄を選定できなかった、実力不足感が否めない。

 とはいえ、2023年を過ぎることでNISAから特定口座に移管されるのは、2019年内に買い入れた銘柄と、コロナ禍を挟んでいる。更に2022年から今に至るまで、某国の軍事侵攻の影響により、サプライチェーンは分断して原材料価格の高騰。ブロック経済化。

 21世紀に入り、人類が克服できたものと思い込んでいた疫病と戦争。フランスの経済学者であるトマ・ピケティ氏が証明した、資本主義社会の掟ともいえるr>gが覆されてしまう恐れがあるほどのインパクトを持つ、この2つがまさかここ数年で同時並行で発生するとは考えもしなかった。

 疫病や戦争などの極端な変化によって、労働力が圧倒的に不足すると、資本だけあっても働き手が居ない以上、経済を回しようがなくなるのは、バブル期に万札でタクシーを捕まえていた光景からも窺える。

 そんな資本よりも労働力の方が貴重な状況だと、相対的に労働力の価値が高くなり、資本はインフレ負けすることがこれまでの歴史だったが、今回は資本家が労働者にひっくり返されなかったため、資本主義史上稀に見るレアケースだろう。

 その結果、現在世界中でインフレ地獄に悩まされている状況で日本も例外ではない。これだけの世界経済の激変を、5年前に予測できた人は居ない訳で、前提条件が変化する中で、変わらずに持ち続けられるような銘柄を選択することの難しさを痛感した5年間だった。

ディフェンシブ銘柄とて安泰ではない。

 2019年に11銘柄を120万円分買い込んだが、残っているのは4銘柄だけだ。既に売却済みの7銘柄のうち、爆益による利確が2銘柄。

 残りの5銘柄は買い注文時に思い描いたシナリオとは異なる展開になったため、8割方損切りする形で売り板に投げてしまったが、その後のチャートを見るに浅い傷で済んでよかったと思える結果になっている。

 一応、今年に入ってからの日本株の爆上げのおかげで、今のところ残った4銘柄の時価総額だけで、一般NISA年間投資枠の上限を軽く超えている。このままの相場感で推移してくれれば、非課税枠で運用して正解だったと思って年を越せるが、その時になるまで何が起こるか分からないため油断できない。

 損切りした5銘柄の共通点は、経営モデルからコロナ禍で挽回することが難しいと判断した銘柄。利確と現在も保有している6銘柄の共通点は、ディフェンシブ銘柄だったり、コロナ禍の影響を受けないか、むしろ追い風となる事業を展開しているようなグロース銘柄だ。

 疫病や戦争などの未来予測は困難なため、損切りありきで幅広い業種に張っておくか、上手くいかなかった投資の傾向から、消去法で残ったディフェンシブ偏重で手堅く張るのが、理にかなっているように思いがちだが、個人的には後者でどれだけウハウハだとしても、前者をでバランスを取るだろう。

 ディフェンシブ銘柄とて安泰ではない。絶対に潰れないと思われていた日本航空はリーマンショックの後にどうなっただろうか?高配当銘柄で人気だった東京電力の株価は、東日本大地震の後にどうなっただろうか?インバウンドで好調だった鉄道会社の株価は、コロナ禍でどうなっただろうか?

 いずれも日本の生活インフラを支えている企業で、人によっては、それがなくなった生活などあり得ないと感じるからこそ、どれほど景気が悪くても需要が消滅することはなく、安泰だと思い込んでしまう。

 しかし、世の中で否応にも起こる変化によって、前提条件が覆ってしまえば、安泰だと思っていた地位は簡単になくなってしまう。変化の激しい時代とは、そういった残酷さと表裏一体なのだ。

保有時と売却時での、思惑の変化を検証。

 5年前を振り返ると、投資家として必要な知識も経験も、まるで足りていない状況下で、個別株投資の銘柄を選定していたように思う。見方を変えると、コロナ禍以降の数年でそう思える程度に、知識や経験を養って来た自信の裏付けとも捉えられる。

 コロナ禍で外出できない状況を逆手に取り、高卒で社会に出た私が、通信制の大学で投資に必要な知識を、体系的に学ぼうと決意して、学士取得まであと1年のところまで来ている。学業の間合いに日商簿記とFP技能士の2級も取得した。

 投資とは畑違いな工業高校が最終学歴で、経済や金融の予備知識も経験も皆無。独学という名の独断と偏見で投資先を選んでいた頃とは、目の付け所も、経済動向や企業業績を捉える解像度も格段に進歩しており、一般NISAの期限を迎える5年の歳月で、自身の成長を実感する。

 「人は1年でできる事を過大評価しすぎる。そして10年でできる事を過小評価しすぎる。」これは名コーチ、アンソニー・ロビンスさんの格言であり、人は長期目線で物事を考えることが苦手な性質を持っていることを如実に表している。

 もし個別株に挑戦してみたものの、銘柄をガチャガチャイジっては、利益を取りこぼしているなら、保有時と売却時とで、思惑がどう変化したかに着目すると、自分はどういうパターンで判断を誤ったり、反対に良い判断ができるのかが検証できるようになる。

 検証するにも、短期売買だと収益率のバラつきの大きさ故に、あまり参考にならない。しかし、長期であればあるほど期待値に収束していく。

 博打ではなく、しっかり投資するためにも、5年、10年、15年と保有できる銘柄を、分からないなりに知恵を絞っては試して、時には失敗した経験から何かを学ぶ。これを愚直に繰り返すのが、一見遠回りに見えて、長期的には近道だと思う。

 再起不能にならない程度の手痛い失敗から学ぶことが、資産形成に最も重要な、痛い思いをしたくない心理が働く形により、身銭を投じる前に自分なりにリスクを洗い出し、それを抑える判断軸を養える、唯一と言っていい手段だからだ。


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