毒親から逃げる話(もうちょっと社会よくならんか?という話でもある)

うちの妻は毒親育ちです。
特にヤバいのが母親。
金の管理ができない人で、そのくせ子だくさん。管理ができないのに(あるいはできないから)、お金を家族に渡さない。
光熱費の類がしょっちゅう止まり、高校を卒業するまで「お小遣い」という制度は存在しなかったそうです。もちろんお年玉も召し上げ。
大学に入って一人暮らしになってからは深夜に電話がかかってきて、「明日の朝までに電気代を支払わないと止まるけど家に金がない。お前が払え」と言ってATMまで行って払わされたとか(それに従う方も従う方だろうと思うが、それに従ってしまうのも毒親育ちゆえ…)。
大学の学費も、2年目から払われてなかったそうです。

さいきんインターネットで話題になり出した「お母さんヒス構文」は当然すべて履修済み、手も出る方だったということで、まぁよくいる毒親ですね。

そんな妻は私と出会った当時職を辞めて一時的に一人暮らししていたのですが(なんせ実家にいると兄弟の面倒を見させられて自分の生活どころではない)、そういう親なので「次の居場所が決まるまで支援する」と口では言いながら、あらゆる理由であらゆるものを搾り取ってくるわけです。

それでいよいよ生活が立ち行かなくなる、明日にでも家賃の取り立てがくるというところで、(猫ちゃんと住むために)広くて安い旧家に住んでいた私が「部屋余ってるけど、来る?」と言ったのが我々の関係の始まりです。


一緒になるにあたってまず必要だったのは、物理的にも社会的にも親とのつながりを切ること。

まず、携帯電話の解約。これは例え契約者が親になっていても、成人していれば特に問題なくできます。
バレないように妻の夜逃げが終わるギリギリまで契約をつないでおいたのですが、位置情報が共有されていることを妻が把握しておらず、肝が冷えました。(ここはこちらも甘かった)

なんでいまだに携帯の名義が親やねん?と思いますが、そのあたりの手綱を手放さないのが毒親です。

次いで行政処理。
住民票の不開示手続きと、社会保険の扶養の切断。
住民票の方は比較的簡単でしたが、窓口によっては理解のない職員もおり、必要なら私が出ていく構えを見せ……るあたりでだいたい、理解のある職員さんに交代していただけました。

これが「世の中なんとかならんか」というところのひとつなのですが……
妻の場合、私が「本当にヤバくなる」前に救出したため、例えば何百万・何千万円にもわたる負債であるとか、決定的な暴力とか、そういう被害を受けていなかったのですね。

それゆえに、(付け加えるなら、妻としてもまだ毒親の支配が抜けていない時期のため「自分自身が深刻な状態にある」ことの認識が甘く、)窓口で「その状況で申請する必要ありますか?」みたいなことをいう、他人への共感力のない職員に困らされたりしました。
こういう他人への想像力のない職員を平気でDV相談の窓口に置いておく自治体は、本当にどうかと思います。
今から思えばこの件は別に怒鳴り込んでもよかったなぁ。

最後に社会保険の扶養切断。ここはかなりリスクがあったところです。
実は扶養については「こちらが働き出したら自然と切れるから」と放置していたのですが、どうもそこから個人情報を辿ることが可能のようで(詳しくは調べていないのですが、役所で住民票不開示の更新をした際に伝えられました)、後になって手続きをしたところです。

そのため、既に引っ越し、携帯電話の解約等が済んでいる状況で、こちらの個人情報が洩れないように動く必要がありました。
社会保険の管理は行政ではなく会社が行っています。うちの場合は毒親の会社が家族経営的なところで、会社の経営者のコンプライアンス意識がないと、我々の情報が毒親に漏れる恐れがありました。
幸いにして社会保険等は社外の社労士さんがやってくださっており、直接連絡でき、事情を離した結果、親に個人情報を渡さずに手続きができました

毒親から逃げる際は、引っ越しを終える前に扶養を外すのを忘れずに。
ここがうまくいかない場合、それなりにお金を使ってでも弁護士などに依頼をかける必要があるかと思いますし、そこはうちも覚悟していました。


こうした手続きを経て一応見た目の縁は切れています。
一応警察署にも行って捜索願の不受理届を出そうとしましたが、そもそも成人している子どもの捜索は本人の同意なく行われることがないということで、届自体が不要(一応受理はできるけど意味はない)ということになりました。
インターネットだとこれが真っ先に書いてあったりしますから、本当にネットの情報はアテにならんですね。

ちなみに警察署も対応は非常に悪かったです。
正直、警察の対応には最初から期待していませんのでここはどうでもいいですね。


現在直近の問題はカウンセリング予約が取れないことです。
ここまで記載して、妻がまだフルタイムに復帰できていないのはわかってしまうかなと思います。わざわざ扶養を外してるし。。。。

私といる限りで妻は元気なのですが、自分の考えを抑圧される生育環境にあったことで、他人との距離感の取り方がうまくないところがあります。
陰キャということではなく、自分の話を人にするときの情報開示を必要以上にしすぎてしまったり、逆に自分の置かれている問題を説明するときに、コアとなる情報を把握できていなかったり……
あるいは普段の問答でも、普通の人ならなんでもないやり取りを「責められている」と感じたり、自分のことを心配して状況を聞いてくれる人を「怖い」と感じたり、他人と自分との間のフィールドがうまく作れない状況のようです。
調べた限りアダルト・チルドレンの性格傾向に非常に近いものがあり、どうも毒親育ち・虐待下の子どもはこのような境界不明瞭な精神状態に陥ることが多いようですね。

本人としてもこういった性向に気づき、一方でここまで生きてきたアイデンティティを揺るがされているので、自分との対話を確立するためにカウンセリングが必要な状態となっています。

しかしながら、行ける窓口がない。
なぜなら、現状少なくない精神科医が「アダルト・チルドレンはアルコール依存の親の下で育った子が定義で、それ以外には適用されない」と理解しているためです。
不可視領域を扱う精神科医としては不勉強極まりないように医学生である私からは映りますが、市井に降りると医師はそういう風になってしまうものなのでしょうか。情けない。

比較的大きな窓口に行って精神相談をすると、いつから精神疾患の情報更新をしていないんだ?というおじいちゃんが出てきて「あなたは精神病じゃないよ」ということを言う。
ちなみにうちの妻にカウンセリングが必要というのは私の判断ではなく、大学病院の精神科の先生のアドバイスです。たまたま私と仲のいい先生がいて声をかけてくださいました。
大学病院の先生だから正しいってこともないですが、まぁ同じ精神科医でもこうまで言うことが違いますかね?というお話。
(精神科疾患としては微妙だけどカウンセリング適用があるグレーゾーンの話は知っているのでツッコミ不要)

どうしてもの場合は私のコネをつかって大学病院に頼ろうと思っていますが、大学病院は本来初診の方が来る場所ではなく、本来使われるべき患者さんに迷惑がかかるため、今のところ避けています。

もちろん中には、そういった現代的な状況・疾患に理解がある精神科窓口もあります。
ただし、予約が取れない。
何か月も粘っていますが、なかなか初診予約が取れない状況です。
結果、まだ必要な医療支援を受けられていない、というのが今の妻の状況です。

行政窓口のときもそうでしたが、まだまだ世の中が古い意識、「見える問題がなければ動かない」、言い換えれば「決定的な問題が起きるまで困っている人を放置する」仕組みになっていると感じることが、妻の支援を通じて感じています。
特に成人の精神疾患・家庭環境に起因する社会的問題の解決手段が非常に少ないことを強く感じます。
また、妻の場合は成人しているために手続きが早く済んだところが多くありますが、毒親の抑圧を受けている未成年を救い出す手段は、親が決定的な刑法犯罪を犯すまで、現状この国にはありません。
やはり「困っている人を放置する」状況です。

もちろん親権の強さは社会における家庭の独立を担保する大切な仕組みなのはわかっています。
一方でそれが悪用され、逮捕されることがない罪や抑圧によって子どもを苦しめ、社会的機会を奪う親がいかに多いかは、私は妻を通じて、あるいは前職を通じてよく知っています。

なんとかならないかと思いますし、なんとかするために関われることがあれば、私がしようと思っています。

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