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私の撮った写真で、複数枚で構成したものや単品のものを上げていくつもりです。
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先月の下北沢

先月の下北沢



大学受験前、アメリカでオバマ大統領の就任直前に築40年・風呂なし安アパートに住み始めたのが下北沢との最初の接点です。
受験勉強に飽きて古本屋で啄木の『一握の砂・悲しき玩具』を買い、部屋の中なのに吐く息の白い東京の冬が、詩の雰囲気に妙にあっていたのを覚えています。

駅前のバラック屋根の通りにある八百屋や乾物屋の前を通り、いつまでも開かない踏切を待ち、通りひとつ越えるたびに違う色を見せる街での撮

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NO-W-HERE

NO-W-HERE



 私の住んでいた町から丘をふたつ越えたところにその場所はある。
海沿いの団地と工場の並ぶ空間は、確かに今そこにいるときでさへ、まるで「どこでもない」ような匿名性を感じさせる。
この場所に初めて来たとき、日々を過ごす中で次第に失われていくものがあるのではないかという焦燥感や、今日という日が昨日の明日であると同時に明日の昨日でもあるという多元的袋小路に陥っていく悩みが消え去るのを感じた。
他の場所

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パッセンジャー・ナルシス(2012/9、宮城)

パッセンジャー・ナルシス(2012/9、宮城)

昔作ったブックで、東日本大震災から1年半経った宮城県での写真です。

2011年のあの震災の後、自分に何ができるのだろうと考えましたが、少しの募金をするくらいで何もできないまま時が過ぎていきました。

当時は東京に住んでいて揺れを感じたものの、連日報道される被災地の映像と自分の立つ場所との間には、どこか隔絶とした感さへありました。

分からないのなら行ってみればいい。震災から1年半が経って、「被災

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