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代わりのない人生


母の日の朝。
いつものお花屋さんが届けてくださった。
扉を開けて目に飛び込んできたアレンジメントは、オレンジ色が好きだった母にぴったりで思わず笑顔になった。

「闘病生活とか絶対したくないしな〜」
先日友人たちと食事に行ったときのこと。
今後の人生の話をみんなでしていたら、ある人がこう言った。

全くその通りだと思うし、ごく普通の意見だけど、笑いながら胸の奥がツキンと痛んだ。
自分でもそう思うのに、勝手な話だ。

誰だって好き好んで病気になんてなりたくない。
でも母は40過ぎで指定難病になった。
そこから24年、何度も命の危機に晒されながら長い闘病生活を送った。
どんなにつらくても、人生は誰にも代わってもらうことはできない。

「迷惑かけてごめんね」
わたしはお母さんの口から、何度もこの言葉を聴いた。

「そんなことないよ」「何言ってるの」「家族なんやし気にしなくていいよ」
いつもそう返していたけど、自分が精神的に不安定な時は「そんなことばっかり言わないで!」と怒ったりもした。

病気っていやだよね。しんどいし、つらいし、孤独になる。
元気な時と違って離れていく人もいるし、手のひらを返すように態度を変える大人も見てきた。
そんな周囲の様子を見るたびに、ぜったいに自分だけはお母さんを支えるって子どもながらに決心していた。

病気の家族を支えるのもつらいよね。
快復するならいいけど、治らなかったり進行したりする病気なら尚更。見てるのもかわいそうで、つらくて気が狂いそうになる。

でもね、すごいのよ。
お母さんは病気に一度も負けなかった。
どんなに大病になって、もう危ないって何回言われても、負けるもんかって闘っていた。

家族のために、精いっぱい。
そうやって生きるお母さんは、誰よりも強くて優しかった。
そんな人を放っておくわけないよ。

健康なわたしよりずっとみんなを愛していて、愛されていて、思いやりの深い人だった。
家族の誰よりも頼りになるのに、甘え上手で、無邪気な母の笑顔を思い出す。

いつもありがとう。いつまでも、尊敬しています。

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